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2018年11月06日

マルチクリエイター・じんさんインタビュー「アルバイトや就職を経験していなかったら、僕は作曲家にはなれなかったと思う」【クリエイターの原点 vol.1】

インターネットをきっかけに、動画や歌の配信、ゲームや楽曲制作などマルチな才能を発揮して今を走り抜けるデジタルクリエイターたち。そんな著名人たちの学生時代・駆け出し時代の貴重な経験や今に活かせていることを中心に『クリエイターの原点』として読者にお届けしていきます。記念すべき第1回目はじんさんです!

2011年、自ら作詞作曲を手掛けたボカロ曲を動画サイトに投稿し始め、その後、歌詞の世界観とストーリーをリンクさせた「カゲロウプロジェクト」を始動。現在は、作詞家・作曲家・小説家など、多岐にわたって活躍するマルチクリエイター・じんさん。そんな彼が今の制作スタイルを確立した経緯や学生時代の話、今仕事をする上で大事にしていることなど、幅広く語ってもらいました。11月7日には、3rdアルバム『メカクシティリロード』もリリース!

高校時代の夢は、“ロックバンドとして音楽で食っていきたい”

(C)2018 KAGEROU PROJECT / 1st PLACE EDWORD RECORDS

――11月7日に、待望の3rdアルバム『メカクシティリロード』がリリースされます。こちらは、どういった作品になっているのでしょうか?

僕は19歳の頃(2011年)から、動画サイト上でボーカロイドを使ったオリジナル楽曲を発表しているのですが、その投稿を皮切りに、カゲロウプロジェクトというプロジェクトを立ち上げまして。楽曲に関連した小説を書かせていただいたり、漫画原作を担当させていただいたり、いろいろなメディアを通して、1つのストーリーを内包した作品を発表してきました。今回のアルバムは、そういったカゲロウプロジェクトの世界を“音楽”という枠で表現した最新作になります。

――ということは、現在は小説や漫画も並行して展開していますが、音楽が軸になっているんですね。そもそも、じんさんが最初に音楽に興味を持ったのは、いつ頃だったんですか?

最初は中学時代ですね。僕、中2の時、不登校だったんですよ。いじめられたとかではなかったんですけど、自分の居場所を見つけられなくて。その時期にTHE BACK HORNの『ヘッドフォンチルドレン』というアルバムを聴いて、“これは僕のことを歌ってくれてる!”ってすごく感動して、そこからロックを聴くようになりました。で、ギターを弾くようになって、高校生になってバンドを始めて……。その頃には“ロックバンドとして音楽で食っていきたい”って思っていましたね。

――作曲もその頃から?

いえ、高校を卒業した後も、地元・北海道の音楽系の専門学校に通いながら、趣味でずっとロックバンドをやっていたんですけど、その間は作曲をしたことがなかったんです。学校では、レコーディングエンジニアになるための勉強をしていたので。でも、専門学校を卒業する19歳の時にバンドが解散し、音楽をやる手段がなくなって、そこで初めて作曲に興味を持ちました。

――じんさんが初めて動画サイトに楽曲を投稿したのも、19歳でしたね。

そうです。初めは、真面目に働きたくない一心で、何かの雑誌の付録になっていたCubase(音楽制作ソフト)の体験版を使ってクソみたいな曲を作っては、作曲家を募集している会社に送りつけていましたね。でも、見事に全部落ちまして……(笑)。

ちょうどその頃、知り合いの人に「(1人で作曲するなら)ボーカロイドがいいんじゃない?」と勧められて。僕はその時パソコンを持っていなかったんですけど、その人にいろいろ教わったり、勉強をしたりしながら、なんとか作ったのが1作目の『人造エネミー』でした。

バンドで人気が出なかったからこそ、自分の曲をたくさんの人に聴いてもらいたかった

――“ロックバンドとして音楽で食っていきたい”と思っていたじんさんが、ボーカロイドに惹かれた理由はなんだったんですか?

ボーカロイドの魅力は、誰かに頼んで歌ってもらわなくても、理想とする高音を出せること。僕は男なので、自分じゃ女性キーは歌えないですからね。だから、すぐにのめり込んでいきました。でも、当時はまたロックバンドを組むつもりだったので、長く続ける気はなくて。なので、“ボカロじゃないと絶対自分がやらないことをやろう!”と思いついたのが、“ストーリーのある音楽を作る”ということでした。

――なるほど、そこで今のスタイルが確立したんですね。

はい。もし自分で歌うとなると、たとえば、自分がファンタジーの歌を作ったとしても、お客さんからしたら僕自身の話みたいに聴こえてしまうと思うんです。でも、僕はそういうことをやりたいんじゃなくて、完全に別に主人公がいて、そのキャラクターのことを歌にしたかった。それにはボカロがうってつけだなと思いました。

あと、作曲を始める前から本を読むのがすごく好きで、自分の中にも物語のもととなるアイディアはあったんですよ。ただ、小説を書くってなかなかハードルが高いじゃないですか。今はweb小説が盛んになってきましたけど、パソコンも持っていなかった当時の僕からすると、小説を書いて出版社に応募してそれが採用されて本になるっていう、ものすごく選ばれた人じゃないとできないことだった。でも、物語を書きたい欲はずっとあったんでしょうね。だからこそ、今のようなスタイルになったんだと思います。

――1作目の『人造エネミー』を作った時は、その先のストーリー展開も見えていたんですか?

最初にすべて計算して、それに基づいて作っていったわけではないので、1作目を作る段階では、絶対にこの話をやろう!っていう感じではなかったですね。でも、“友達”というテーマや、“1人じゃいろんなものに負けてしまう人達が集まって、弱さを認め合う”というようなことを描こうっていうのは考えていて。じゃあ、そこに出てくるキャラクターはこういう人がいいんじゃないかなぁとか、毎回サブタイトルに“目を●●する”っていうのをつけたら、並べた時に面白いんじゃないかなぁというふうに、徐々に広げていきました。

――投稿を機に有名になりたいという気持ちはありました?

とくにはなかったです。だって僕、ロックバンドをやっていた時は、ひどい時、二人くらいしかお客さんいなかったですからね。その一人は母ちゃん、みたいな(笑)。

――それはメンタルが鍛えられそうです(笑)。

あははは。母ちゃんを前にして、何を言ってるのかも、どこで盛り上がればいいのかもわからないようなアングラミュージックをやっていましたね。でも、バンドが解散した時にこのままじゃダメだ、誰に向けてやってるのかわからない!と思って(笑)。歌モノというか、メロディーの良い曲を作ろうと思うようになりました。

そういうバックボーンがあったので、人気者になりたいとはとくに思わなかったけど、たくさんの人に聴いてもらいたいっていう気持ちはすごくありましたね。

社会に出て働いたことで、自分のやりたいことがわかった

――ボカロPを始めたばかりの頃を振り返って、これはやってよかったなと思うことはありますか?

有名になることに直接繋がるかはわからないですけど、Twitterで自分の曲タイトルを検索して、その話をしてくれている人全員に「ありがとうございます」って言って回っていましたね。フォローされていない人にもやっていたから、今考えるとやべえヤツだなって思うんですけど(笑)。そうやって自分の曲を聴いてくれている人のお話を聞くことで、すごく勉強になりました。

しかも、僕が「ありがとうございます」って声をかけた中にしづさんという方がいて。その時はしづさんがイラストレーターだと知らなかったんですけど、それを機に仲良くなって……今回の『メカクシティリロード』のジャケットも、しづさんに書いていただいています。自分から動いた結果、そういう出会いも生まれたので、それはやってよかったなと思いますね。

――ちなみに、学生時代、真面目に働きたくないと言っていたじんさんは、バイト経験や就職経験はあるんですか?

バイトは、飲食店とコンビニでやったことがあって。専門学校の2年生からは、インターンとして、東京にある音響の会社で働いていました。そこでは、外でイベントや講演会がある時にスピーカーを運んだり、TV番組の収録の時に「マイク失礼しまーす」ってやったりしていましたね。

正直、そういった経験が今に活きているか?っていうと、そうでもないんですけど(笑)。働いてみなければ“僕のやりたいことはこれじゃない!”って思えなかっただろうし、“仕事を辞めたい!”っていう気持ちがバネとなって“本気で音楽をやろう!”って思えたので、働いてみてよかったなとは思います。

――そう言われると、働くのが嫌になっちゃいそうなんですけど……(笑)。

あははは。でも、アルバイトをしてお金を稼ぐ大変さを学ぶ、音響会社に勤めて現実を知るっていう順番を踏まなかったら、僕は作曲家にはなれなかったと思うんですよね。“この仕事は違う!”ってハッキリ言うことも、なかなか難しいと思うので。そう考えると、一見ネガティブに聞こえるかもしれませんけど、どれも貴重な経験だったと思います。

自分にとって“本当に好きなもの”や“正解と思えるもの”に触れることが大事

――では、そんなじんさんから、じんさんのようなマルチクリエイターに憧れる学生にアドバイスをするとしたらなんでしょうか?

今、音楽もストーリーも作らせていただいている立場からすると、今のうちに本を読んだり、音楽を聴いたりして、思いっきり感動しておくことを勧めたいですね。僕は昔から、音楽を聴いて泣いたりしていたんですけど、それを恥ずかしがらなかったんですよ。で、それって、周りの流行ではなく、“本当に好きなもの”や“正解と思えるもの”に触れていたからだと思うんですよね。

実際今も、音楽を聴いて素直に感動していた“中2の自分”が、僕が作品作りをする際の指針になっていますし、堂々と「これは良いものだから、あなた(リスナー)はお金を払ってよかったって思うと思うんです」って言える作品を作っていきたいというのが、僕の信念になっています。

――自信を持って届けた作品を喜んでもらえたら、とびきり嬉しいでしょうしね。

そうですね。以前、サイン会をした時に不登校だっていう人が来てくれて、「でも、この曲を聴いてすごく救われた。自分のことを歌ってくれているように思った」って言われたことがあったんですよ。その時は、“いつの間にか自分も、そういうことができるようになったんだなぁ”って、“自分の人生、この道で正しかったんだ”って思いました。自分も昔、同じことを感じていたので。そういう言葉は、僕が作品作りをする上でのモチベーションになっています。

■Profile
じん

1990年10月20日生まれ 北海道利尻島出身。2011年より動画サイトへ投稿を開始し、それを皮切りに歌詞の世界観がストーリーとリンクした楽曲群「カゲロウプロジェクト」をスタート。現在は作詞家、作曲家、小説家として活動するほか、ミュージシャンとしても活躍の幅を広げている。自身が執筆した小説「カゲロウデイズ」シリーズの刊行や別視点からの物語を描いた同作のコミックス版を連載し、シリーズの関連書籍は累計900万部。音楽パッケージの累計は70万枚を突破。アニメ版となる「メカクシティアクターズ」は、世界同時配信されるなど、さまざまなメディアを巻き込みながら絶大な支持を集めている。

じん OFFICIAL SITE
EDWORD RECORDS
・OFFICIAL Twitter:@jin_jin_suruyo

(C)UNIVERSAL MUSIC LLC / Worded Notes, Inc.

「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:斉藤碧

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