大学教授になるには? 仕事内容・なる方法・魅力・年収・将来性を解説
大学生活を送る中で専攻する学問を究めたくなり、「将来は大学教授になりたい」と考えている人もいるでしょう。とはいえ、簡単に大学教授になれるわけではなく、多くの場合、大学院へと進学し、各課程を終了後、助手や講師、准教授などを経験する必要があり、それぞれの課程はともに難易度が高いことで知られます。
この記事では、大学教授を目指す人に向けて、大学教授になる方法や主な仕事内容、待遇、将来性などをご紹介します。
【目次】
大学教授の仕事内容、必要な資質と魅力
まず、大学教授の仕事内容や必要とされる資質、魅力についてお伝えします。大学教授を職業の選択肢に入れた人は、基礎知識として理解しておきましょう。
大学教授の主な仕事
大学教授の仕事は、大きく2つに分けることができます。
1つは、学生への教育や論文指導です。講義や演習を通して専門知識を伝え、ゼミなどで卒業論文の作成方法やまとめ方などを指導します。大学教授が受け持つ授業は、90分から100分程度を1コマとして週に2~3コマから6~7コマ、平均で5コマ程度です。
もう1つの仕事は、自身の専門分野に関する研究です。研究成果を論文にまとめ、所属学会や学会誌などで定期的に発表します。どの学会に所属するかは教授が選ぶことができ、一般的には複数の学会に所属します。
そのほか、専門家として、テレビ・新聞・Webサイト・雑誌などのマスメディアに登場して専門分野の解説をしたり情報を発信したりするほか、講演活動を行ったりすることもあります。また、入試など大学運営に関する業務に携わることも一般的です。
大学教授になるために必要な資質
大学教授の本分は、専門分野を研究することです。そのため、学問や研究テーマに対して深い探究心を持つことが必要不可欠です。また、研究内容や成果は論文として発表する必要があります。論文は1本書けば終わりではなく、定期的に書き続けなければならないため、執筆に対する飽くなき情熱や忍耐力も求められます。
併せて、次のような資質が必要です。
・コツコツと取り組む力
時には数十年に及ぶ研究生活の末にようやく成果が出るものもあり、長期的に持続してコツコツと取り組む力がないと成し遂げられません。仮説を立てて検証し、得られた成果を論文にまとめるという工程を繰り返して自分の研究実績を作るとともに、学会からの評価を得ることが大学教授には求められます。
・独自の研究テーマを持つこと
研究内容には、希少性や重要性があることが望まれます。多くの人が取り組んでいたり先駆者が高い実績を残している研究テーマを選ぶと、教授のポストをなかなか得られない可能性があります。
・コミュニケーション能力があること
学生の指導のほか、学会や教授同士のミーティングなどに参加する必要があるため、コミュニケーション能力は必須の資質の一つです。一定の研究成果を上げていても、コミュニケーション能力が著しく欠落していると、学生からも大学からも評価されにくく、教授への昇任を期待している人なら悪影響を与える恐れがあります。
大学教授の魅力
一番の魅力は、自分の知的好奇心を満たす研究に仕事として没頭できることです。大学や企業から支払われる研究費で、研究内容を存分に深められるのは大学教授ならではでしょう。研究成果は社会に対する貢献につながりますし、教育者という立場で次世代に活躍する若者たちの育成に関われることもやりがいと言えます。
社会的ステータスの高さも魅力でしょう。学問を究めるという知的な仕事内容から、尊敬の対象となりやすい職業です。また、教授というポストを活かして講演やテレビ出演、本の出版などの副業を行えば、高い知名度の獲得とそれに伴う収入増を期待できます。
大学教授になるための一般的なルート
次に、大学教授になる方法をご紹介します。大学教授への道は複数ありますが、ここでは一般的なルートを取り上げます。
STEP1:「博士号」を取得する
大学教授になるためには、まず大学を卒業して「学士」を取得し、その後は大学院に進むところから始まります。大学院の課程分類は運営母体によって異なりますが、期間は計5年としているところが一般的で、そのうち2年間で「修士号」を、さらに3年間の研究を経て執筆した博士論文が合格すると「博士号」を取得できます。
STEP2:就職活動をする
博士号の取得後は、就職活動を行います。求人は、大学の公式サイトに掲載された採用情報や、専門の求人サイトに掲載された大学教員の募集などで情報を得ることができます。さまざまな職階が募集されていますが、博士号を得てすぐに応募できるのは助手・助教というケースがほとんどです。
STEP3:助手から講師、准教授を経て、大学教授になる
大学教員として採用されたら、キャリアのスタートです。といっても、すぐに大学教授になれるわけではなく、多くの場合、まずは助手・助教から職階を始めます。地道に研究を続けて優れた成果を出せれば、研究室を主宰する教授の推薦を受けられ、ランクアップできるという仕組みです。大学によって多少の違いはありますが、一般的には「助手・助教→講師→准教授→教授」という順でランクアップします。
社会人から大学教授を目指すには
大学教授になるためには、博士号を取得していることが前提です。しかし、中には博士号を持っていなくても、社会人から大学教授になるルートがあります。
高い専門知識を持っていること
条件の一つは、高度な専門知識を持っていることです。例えば、化粧品メーカーの研究室に所属して特定ジャンルの研究に携わり、高度な知識や技術を身に付けているケースが該当します。社会人から大学教授になる道には、教授募集の公募や、大学側からのスカウト、知り合いからの推薦などがあります。
大学教授にふさわしい経歴があること
助手から始まるキャリアを飛ばして教授として迎えられるわけですから、相応の経歴があることも必須条件です。例えば、働きながら得た高度な資格や肩書き、研究成果での受賞歴や、出版経験などがあることが該当します。
また、社会的に活躍が認知されているジャーナリストや、世界的に優秀な成績を残したスポーツ選手、アカデミックな賞を受賞した文化人などが、「客員教授」として大学に招かれることもあります。正規の大学職員ではありませんが、教授の肩書きで教えたり活動したりすることが可能です。
大学教授の年収と将来性
職業として大学教授を目指す以上、年収や将来性についても気になるところでしょう。ここでは、具体的な待遇と将来性をお伝えします。
年収
厚生労働省が発表した「平成28年賃金構造基本統計調査」によると、大学教授、准教授、講師の年収は次の通りです。
月額給与:65万7100円 年間賞与等:280万5900円
平均年収:1069万1100円
月額給与:53万1600円 年間賞与等:210万3900円
平均年収:848万3100円
月額給与:45万1600円 年間賞与等:141万8700円
平均年収:683万7900円
上記の金額は平均値であり、一つの目安です。実際の給与体系は大学によって異なり、オープンキャンパスや入試など研究以外の仕事をした実績も含まれています。
【引用】
「平成28年賃金構造基本統計調査」
大学教授の将来性
大学教授の将来性は、決して明るいとは言えません。ニュースなどでも伝えられているように、少子化により定員が割れて存続が危ぶまれている大学も存在します。
また、大学教授という職の特性も関係します。退官などの事情でポストに空きが出ないと求人が出ないため、もともと競争率の高い狭き門です。文部科学省によると、博士号を取得しても働き口が見つからず、研究員として研究室に残りながら道を探す「ポスドク」(「ポストドクター」の略。博士研究員)も2015年度で1万5910人に上ります。
一方、産学連携による新たなビジネスの創出という流れが活性化していることも確かです。大学と企業の協同研究による新商品の開発など、大学教授が活躍する場所がキャンパスを飛び越えてビジネスの現場へ拡大する傾向にあると言えます。
【引用】
「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」(文部科学省)
「学問を究める」という情熱と勇気、覚悟が必要
同級生が次々と就職を決めていく中で、自分は大学院に進学して大学教授を目指すわけですから、「どうしてもこの学問を究めたい」という情熱と勇気、覚悟が必要になります。その上でなお、大学教授になることを志すなら、大学在学中に究めたい研究テーマにおいて教授が目を見張るような高い成績を上げておきましょう。大学院に進学してから真剣に勉強するのではなく、大学生のうちから並々ならぬ知的好奇心と深い探究心を発揮して、学問に徹底的に取り組む姿勢が大切です。