動物カフェの仕事体験|ヤギのいるカフェの仕事をリサーチしてきた!(@渋谷)
動物のいるカフェ、ユニークなテーマを掲げるバーや居酒屋……。東京には振り切った特徴を持つ、個性豊かな飲食店が数多く存在する。
そこのスタッフさんは果たしてどんな思いで、いかなる働き方をしているのだろうか。ちょっと大変そうだけど、きっと普通の職場では得られない楽しさや喜びがあるはずだ。
これは、そんな少し変わったコンセプトを持つ飲食店の、少し変わったお仕事について調査するコーナー。今回は渋谷の「桜丘カフェ」。“ヤギのいるカフェ”として有名なお店である。
写真集を出すほど人気者。「しぶヤギ」のいるカフェ
桜丘カフェは渋谷駅から徒歩4分。坂の上の静かな路地に建っている。この店には少し変わったマスコットがいる。しぶヤギ(渋谷のヤギ)の「さくら(♀)」と「ショコラ(♀)」だ。店頭の小屋で飼われ、道行く人々に癒やしを与えているという。

ヤギカフェこと桜丘カフェ

一見、普通のオシャレカフェだが

店頭にヤギがいるのだ
さっそく訪れてみると、テラス席の横に建てられた小屋の中に「さくら」がいた。眠いのか、一カ所にじっと腰を据えたまま動かない。気苦労の絶えない中間管理職みたいな、どこか哀愁を誘うたたずまいにも思える。でも、かわいい。
ややお疲れ気味のようなので、ひとまずふれあいを自重し、店内に入ってみよう。

アンティーク家具と間接照明を多用したオシャレな雰囲気
ヤギカフェのお仕事ってどんなのですか?
店内は広く、2人~4人掛けのテーブル席がゆったりと配されている。とても静かで心地よい雰囲気だ。いたって普通のオシャレなカフェである。そう、ヤギがいること以外は。
さっそくだが、お店についていろいろ聞いてみたいと思う。カフェなのに何故ヤギを飼っているのか? ヤギのお世話はバイトの仕事なのか? 八木さんというスタッフはいるのか? 八木とヤギでややこしくならないか? いろいろ気になる。

お話をうかがったのは桜丘カフェを運営するLD&Kの山田宏樹さん
お話を聞いたのは、桜丘カフェを担当する山田さん。一見こわもてだが、おだやかな紳士である。不躾(ぶしつけ)な突撃取材にも関わらず、やさしく答えてくれた。

でもこうして対峙すると、筆者(写真右)が怒られているみたいに見えるのはなぜだろう

「表でろや!」(と、いわれているわけではありません)
―― さっそくですが、なぜヤギがいるんでしょう?
山田さん「このへんはオフィス街で、仕事の打ち合わせや休憩に来店してくださるお客さんも多い。そんな人たちの癒やしになればと、オープンしてから半年後にヤギを飼い始めました。テラス席の横にスペースがあったので、そこを小屋にすればヤギくらいだったら飼えるかなと。2頭とも生後数か月でうちにやってきて、今は5歳になります。人間の年齢でいうと40歳くらいですね」
―― 世話って大変なんじゃないですか?
山田さん「意外とそうでもないんですよ。小屋を小まめに掃除してあげることと、決まった時間に餌をやるくらいですね。きちんと掃除してあげれば、それほど匂いも出ないですし。小屋の中にずっといると運動不足になるので散歩くらいはさせていますが、基本的にはあまり手のかからない動物ですね。ワンルームマンションで、ペットとしてヤギを飼っている人もいるくらいですから」
―― スタッフはみんな動物好き、ヤギ好きなんですか?
山田さん「そうですね。それに、ヤギ目当てで入ってくるアルバイトもたまにいますよ。『ヤギさんと働きたくて応募しました』って。農大に通っていた人で、ヤギの研究をしたいから働かせてくれっていうのもいましたね」
―― ちなみに、ヤギの世話を含めたアルバイトの仕事の流れを教えてください。
山田さん「昼のシフトの場合は11時にヤギ小屋の掃除と餌やり。そこからランチタイムのホールかキッチンに入って、17時くらいにもう一回餌やりと掃除をして夜のスタッフと交代っていう感じですね。ヤギの世話担当は基本的にみんなで回すようにしていて、専属のヤギ係というのは特にいません」

さくらとショコラのおかけで、すっかりヤギに詳しくなったという山田さん
なるほど、山田さんのおかげで様々な疑問は解消された。ちなみに、八木さんというスタッフはいなかった。

本題とは関係ないが、せっかくなので山田さんおすすめの「渋谷キーマカレー」(サラダ・ドリンク付のランチセット1000円)も食してみた

「ンメェ~~~」
ハンサムバイトに話を聞く
では、お店のバイトさんはどんな気持ちで働いているのだろうか。もしかしたら、本当はイヤイヤ世話をしているのかもしれない。
厨房を覗いてみると、なんだかやたら男前がいる。彼に話を聞いてみよう。

男前がいる!
ただの男前ではない。“やたら”男前なのだ。ハンサムすぎて、おっさんの僕でも緊張する。とくに顔の小ささが尋常じゃない。背も高く、等身がえらいことになっている。聞けば、彼はここで働きながら俳優業をしているという。なるほど、どうりで。
彼以外にも、基本的にスタッフさんはみんなシュっとしている。きっと渋谷のカフェなんつったら、かっこいい役者かオシャレなモデルしか働かせてもらえないんだろうな(※筆者の妄想であり、そういう事実はありません)。
さっそくハンサムに話を聞いてみよう。
―― ヤギ、好きですか?
ハンサム「もちろんです。動物は全般好きなんですけど家では飼っていないので、ここで2頭とふれあって癒やされています。しかもヤギってけっこう珍しいじゃないですか。だから、この機会に思う存分たわむれておきたいなと」
―― そうはいっても世話はめんどくさいでしょう?
ハンサム「そんなことないですよ。僕はまだ働き始めたばかりなんですけど、みんな率先して世話をしていて、押しつけあったりすることもないですね。僕もこの前、早くふれあいたくて朝の7時30分にはここに来ちゃいました。オープンまでずっと、ショコラたちとたわむれていましたね」
どうやら、おっさんの心配は杞憂のようである。
みなさん安心してください、ここのヤギはちゃんと幸せですよ。

僕も生まれ変わったら、カフェでバイトできるようなオシャレ人生を送りたいもんです
ヤギのお世話を体験させてもらう
さて、せっかくなので、最後に少しだけヤギさんのお世話を体験させていただくことにした。

失礼します

さくらパイセンの視線を感じながら小屋を掃除

指導役は山田さん。やっぱり怒られてるみたいだな
ヤギはきれい好きとのことなので、小屋の掃除は念入りに。お店の看板ヤギに気持ちよく過ごしてもらうための環境づくりも、アルバイトの重要なミッションなのだ。
それにしても、見知らぬ人間が策の中に入っても、さくらはピクリとも動かない。よっぽど人に慣れているのか、単に僕が舐められているのか。前者であると信じたい。
さて、小屋はきれいになった。次は餌の干し草をあげてみよう。

ルールルルルルルルル

プイッ!
お腹いっぱいだったのか、さくらはつれない塩対応。これが握手会だったら、かなりしょっぱい気持ちになるところだ。
山田さんによると、さくらは強気でわがままな性格。ふだんはショコラの餌まで食べちゃう食いしん坊だというが、ショコラがいなくなると寂しくてメエメエ鳴いてしまう。そんな、お姫様気質なところがあるらしい。個人的にそういう女性は嫌いじゃない。奔放な彼女をもつと苦労するが、そんな女性に振り回されたいという願望が全くないといったら嘘になる。

餌は食べてくれなかったが、触らせてはくれた。ふわふわで気持ちいい

「さわんなや」
さて、そんなわけで今回は噂のヤギカフェのお仕事にふれてみた。
最初は正直、調理や接客に加えて動物の世話までしないといけないなんて大変だなと思っていた。だが実際は、ヤギがいることにより、お客さんだけでなくスタッフの心も癒やされるようで、その存在がプラスに働いていた。
愛くるしいさくらとショコラの姿を見ていると、どんなに厳しいシフトも乗り越えられそうである。

桜丘カフェ
住所:東京都渋谷区桜丘町23-3
営業時間:モーニング 8:30~11:30(L.O11:00)
ランチタイム 11:30~15:00 ※平日のみ
アイドルタイム 15:00~17:30
ディナータイム 17:30~23:00
ミッドナイトタイム 23:00~28:00(日・連休最終日 ~24:00)
http://www.udagawacafe.com/sakuragaoka/

取材終了後。通りがかったお姉さんに神対応を見せるさくら
取材・文:榎並紀行(やじろべえ)