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2022年07月05日

カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」ビール売り子バイト編

カレー沢 バイト タウンワークマガジン townwork「推し」や「推し活」という言葉が一般化し、何かを猛烈に応援し、時に情緒がハチャメチャになる現象もオタクだけのものではなくなってきた。

そう言いたいところだが「一般化している」と思って言ったことが全く周知されておらず、一般の方に「なんかよくわからないけどキモいことを言っているな?」という顔をされることもしばしばなので油断がならない。
ついいつものノリで「そこのラー油とってクレメンス」とか言ってはならないのである。

そういう意味ではまだ「推し」は通じる方だ。

「推し」と言ったら対象はアイドル、または二次元のアイドルなどを想像されがちだが「推し」というのは人間、もはや生物に限ったものではなく新幹線が好きならそれはもう「新幹線推し」なのである。
また対象が何であれ推し活というのはディープにやろうと思えばいくらでも深いところまでいける。
「パンダ推し」と言ったら一見ライトに聞こえるが、実情はパンダが群生している姿を見るために軽トラの荷台に乗せられ中国の山道を爆走していたりするのだ。

「推しに会いにいく」というのは深みへの第一歩である。
私の場合は推しが二次元なため、会いに行こうと思ったら「トラックと相撲して異世界転生ワンチャン」に賭けるしかないのだが、もし失敗しても実在の人物の中で最推しである土方歳三に会えるチャンスがゼロではないのでやってみる価値はある。

それに対し、推しが実在かつ存命、さらにコンサートなどリアルイベントをやるタイプであれば比較的安全かつ合法で会いにいくことができる。

そういった会いに行ける推しはアイドルなどだけではない「スポーツ選手」も観戦という形で会いに行ける推しである。

推しが二次元にいる我々はどちらかというと「推しのことで飯が喉を通らない」という状態になることの方が多いのだが、スポーツ観戦をする人の中には「推しの活躍を見ながら飲むビールが最高」という人もいるだろう。

そんなスポーツ観戦の楽しみの一つである飲食を提供する仕事が今回紹介するバイトである。

野球スタジアムなどでビールを販売する「ビール売り子」が今回のテーマだ。

 
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野球スタジアムには売店とは別に、観客席内を移動しながら飲み物や軽食を売る「売り子」が存在する。
その中でもビールを担当しているのが「ビール売り子」である。

だが、いきなりビール売り子を任せられることは稀で、パックドリンクやサワーの販売から始めることが多いそうだ。

ではビール売り子は他の売り子より難しいのかというと、難易以前にビール売り子には「重い」というシンプルすぎる特徴がある。

売り子が背負うビールタンクは10キロを超えるものもあり、それを背負って観客席内を移動することになる。
よってまずビールタンクを背負えることが前提のバイトとなり「背負えるけど立ち上がれない」というのもダメだ。

それにも関わらずビール売り子は人気のアルバイトだという。

バイトついでに筋肉をつけようとするマッチョ志望が多いというわけではない。
ビール売り子は「歩合制」を採用している場合が多く、基本給に加え売ったビールの数に応じて歩合がプラスされる。

よって調子が良い時は3時間で1万円稼げたというビール売り子もいるようだ、3時間で1万というのはかなり破格のバイト代だ。

しかし、いつもそれだけ稼げるというわけではない。
優勝が決まるような熱い試合であれば観客数も多くその分ビールも売れる、逆に完全な消化試合という己の人生みたいな日もあり、そんな日は客入りも少なく当然ビールも売れない。
またビールというのは気候に左右される飲み物である。
夏の熱い時期なら何としてでも飲みたいが、開幕間もない春や終了間近の秋、そして雨の日などはビールより梅昆布茶を飲みたいという客の方が多いだろう。

よって、雨続きや冷夏の場合、思ったより稼げないという可能性はある。
ただ基本給が安いわけではないので、仮に1杯も売れなかったとしても、普通の小売アルバイト程度のバイト代は保証される。

しかしビールの売れ行きは「気候」という完全な運任せではなく、個人の能力や努力にも左右されるそうだ。

天候を操る能力を身につければ良いという意味ではない、もしそれができたらビール売り子以上に稼げる仕事ができるはずだ。
スタジアムにくる客というのは常連も多く、売り子を続けていれば顔見知りになることもある。
つまり客に気に入られればそれだけ売り上げも伸びるということだ。

実際3時間1万を叩き出すようなビール売り子はいち早く客の顔を覚えたり常連に声かけしたりと営業努力をしているそうだ。
もちろん野球の話題を振られることもあるだろう「野球って手でボール持っても反則にならないんすね」程度の知識では話にならないので野球の勉強をしている売り子もいるはずだ。

このように「ビールを背負って売る」という単純な仕事のように見えて、営業職でありながら接客業でもあるという奥の深いアルバイトであり、ビール売り子の経験が社会人になって役に立ったという意見も多いそうだ。

確かにビールを購入するという時点で客は全員二十歳以上である。
やる気次第で短時間で稼げ、大人たちと渡り合う処世術が身につくという意味で人気なのも何となくわかる。

もしそんなカリスマビール売り子とシフトがカチ合ったら客を全部取られてしまうのではと思うかもしれないが、ビール売り子にはあらかじめ販売エリアが割り当てられている

「絶対にあの売り子から買いたい」という野球に対して以上に強火のビール売り子推し客がいない限りは他の売り子にシマを荒らされるということはない。

このようにメリットの多いビール売り子であるが、それでも「重い」という強すぎる事実は変えられないため、短時間でもかなり疲れるという意見は多い。

またわざわざスタジアムに応援に来るということは、客はかなり気合の入った野球ファンである可能性も高い。
わざわざ来たのに、推しチームが2回表で39点差をつけらたり、9回裏時点で推し投手の出番なしとなれば、若干イラついてしまうこともあるだろう。

そんなちょっと冷静さを欠いている客の怒りの矛先が向くことがある、というのもビール売り子のデメリットだそうだ。

思えば私は生でスポーツ観戦をしたことがない。
スポーツ自体にあまり興味がないというのもあるが「何にそんなに熱くなっているのかさっぱりわからないが、とにかく何かに熱くなっているオタク」の姿というのは見ているだけで元気が出るものである。

おそらく野球スタジアムにはそういう人たちもたくさんいるはずだ。
そういう人たちに生で囲まれて酒を飲みながら見る野球は例え興味がなくても面白いような気がする。

そして「どのビール売り子が人気か」を観察するという楽しみもできた。

 
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カレー沢薫
1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神”と崇められる人気作家。
Twitter: @rosia29
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