カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」海の家バイト編
現在、暦の上ではすっかり夏なはずなのだが、かれこれ半月はまともに外出しておらず、ババシャツをアウターとして着こなしている自分にはいまいちピンとこない。
こういうタイプが夏を感じ出すのはソシャゲが水着キャラを発表しはじめてからである。
ソシャゲのシステムには賛否あるが、家から出ない奴でも季節を見失わなくなった、という意味ではやはり発明と言える。
そんなわけで、私は今年の夏も画面内の海や山を画面から出てこない男たちとエンジョイ予定である。
だが中には連休中、画面どころか、家の外にまで出て立体感のある海や山を楽しむ予定の人もいるだろう。
何故我々がそういった大自然を楽しめるかというと、我々が快適に過ごせるよう、連休中に働いている人たちがいるからである。
そういう人がいない、リアル大自然に無策で挑んだら、思い出ではなくトラウマを持ち帰ることになり、最終的に「命が持ち帰れて良かったね」という話になってしまう。
連休中というのは、どこも混みやすく、何よりみんな休みたがるため、働きたい人はシフトに入りやすく、短期間で稼ぐチャンスと言える。
しかし、私のような中年の夏なら、2,3度潰れても大した影響はないし、何が起っても9月上旬には忘れてしまうのだが、まだ若い学生などが貴重な夏休みをバイトだけで終えるというのは抵抗があると思う。
稼ぎたいが、夏も抱きしめたい、そんなわがままとも言える希望を叶えるかもしれないのが今回紹介する「海の家」のアルバイトだ。
世間が長期休暇中に海の家で働くバイトは短期間で稼げるバイトの1つとして有名であり「○○するぐらいならひと夏海に行った方が稼げるよ」というイメージもあるだろう。
しかし、実際は海の家のバイトは通いが多く、住み込みは少ないらしい。
ちなみに○○の答えは特にない、各々好きな危険な言葉を入れてほしい。
海の家のアルバイトが何をするか、基本的には海の家で販売される飲食物の調理や提供、後片付け、掃除などだが、他にも荷物預かりや、コインシャワーの提供、海水浴に使うグッズの貸し出し、など場所によって多岐に渡る。
ただ短期バイトが多いため、仕事自体はすぐ覚えられると思われる。
しかし、海の家バイトというのは基本的に7、8月だけの繁忙期に募集されるもののため、勤務時間中は相当忙しいと思われる。
周囲の仕事を増やさないためにも、水分補給など体調管理には気をつけないといけない。
ただ、相手は何せ大自然なため「雨」ということもあり得る。
そうなれば海に来るのは、もう仲間(ファミリー)さえいれば何でもいいパリピや、この日を逃がしたら来れない家族(ファミリー)連れなど、少数精鋭になってくるので、仕事もかなり落ち着くだろう。
しかし、逆に悪天候続きは海の家バイトの魅力半減という意見もある。
海の家バイトの魅力は海で働けるということであり、余力さえあれば自由時間は海を満喫できる。
まかない付きであれば、食費無料で海を楽しめ、住み込みなら宿泊費も安いか、無料だ。さらにバイト代ももらえるため、むしろそっちを目当てに応募してくる者もいるらしく、求人もその点を推しているものが多い。
1日の流れとしては、早朝から開店準備をし、日中店内業務をして夕方閉店、後片付けをして、そこから自由時間という感じだそうだ。
そこから夜の海に繰り出す、というのは相当なゴリラでないと危険と思われるが、当然休日もあるので海はその時でも満喫できる。
だが逆に、海の家バイトだからと言って「海を満喫しなければいけない」というわけではない、仕事が終わったあと、ここからが本番とはしゃぐ同僚を尻目に「自分はそういうのではないので」と、直帰をかますというストイックな働き方もありだ。
また、若者が多いというイメージもあるかもしれないが、時間と海を愛する心、時として強い精神力などがあれば、誰でも応募可能である。
海の家バイトは様々なところから人が集まるため「素敵な出会いがあるかも」と書かれている求人すらある。
しかし、時給は確約されていても「思い出」や「出会い」に関しては保証されているものではなく完全出来高制であり、場合によっては「トラウマ」という求人に掲載されていないボーナスをいただける場合もあるので、その点に関しては「何かいいことあればいいな」という合コンレベルの期待値で臨んだ方がいい。
もちろん、思い出と出会いに本気になりすぎて仕事がおろそかになってもいけない。
私は海の家バイトの経験はないのだが、10代のころ、地元で万博のような催しがあり、同級生たちは夏の間こぞってそこで短期バイトをしており、おそらくそこで思い出とか出会いとか、いろいろあったと思われる。
一方そのころ、私はその万博会場にあったBBQ場で「1人BBQ」をしていた。
海の家バイトをしたからと言って必ず良いことが起るわけではないが、何もしなければ「無」である。
良い思い出もトラウマもあるだけマシなので、夏を虚無にしたくない人は思い切って応募してみてはどうだろうか。
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