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2020年12月08日

ごみで季節を感じる!? ごみ研究家・マシンガンズ滝沢さんが、ごみ清掃員と芸人の仕事を両方楽しめる理由

ゴミ収集 マシンガンズ 滝沢秀一 インタビュー タウンワーク townwork私たちの生活とは切っても切れない関係にある「ごみ」。とても身近な存在でありながら、普段はなかなか意識することができません。そんな「ごみ」と日々向き合うごみ清掃業務に着目し、奥深い仕事の魅力について聞きました。

芸人として舞台に立ちながらごみ清掃員として働いているお笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さん。ツイッターでごみに関するツイートがバズったことがきっかけで、単行本『このゴミは収集できません』や、奥様の友紀さんが作画を担当した漫画『ゴミ清掃員の日常』などを発刊。現在の肩書は「芸人」と「ごみ清掃員」、そして「ごみ研究家」として、ごみや環境についてのトークイベントにも出演されています。

ゴミ収集 マシンガンズ 滝沢秀一 インタビュー タウンワーク townwork

 

朝5時起きで6回ごみ回収して、その後舞台へ

今でもごみ清掃の仕事を終えた後、舞台に上がるのが日常という滝沢さん。

――一見すると、とてもハードに感じますが、日頃はどんなスケジュールで過ごされてるんでしょう。

「会社が6時半出社なんで、朝5時起きで自転車で会社に行きます。着いたらまず朝礼があって、その後朝8時からごみの回収なので、清掃車に乗って現場に向かうんです」

――あの街中で見るごみ回収の車ですね。

「意外と知られてないんですが、清掃車ってあの中にごみいっぱい貯めたら終わりじゃないんです。実際は『回収して清掃工場に捨てて』を一日6回繰り返すんですよ。午前中4回、午後2回って感じですね」

――1日6回も!それだけごみが出されるってことですね。

「それで仕事終わりがだいたい午後4時くらい。その後、芸人として劇場に出る時は、一度家に帰ってシャワー浴びてから行きます。そんな生活をもう7年やってますね~」

ゴミ収集 マシンガンズ 滝沢秀一 インタビュー タウンワーク townwork

――もともと滝沢さんが清掃員をやろうと思ったきっかけはなんですか?

「ただ単に仕事がなかったんですよ(笑)。36歳の時に子供が生まれるのがわかったけど、芸人としての儲けも少ないし、貯金もない。その歳じゃ副業もなかなか見つからなくて、何でも良かったんです。それで元芸人の人に相談したら『ごみ清掃なら明日からできるよ』って言われてはじめてみたら、年齢も国籍も関係なし。本当にすぐはじめられたんです」

 

最初は「俺はお笑いで食べていきたいのに…」と思っていた

ゴミ収集 マシンガンズ 滝沢秀一 インタビュー タウンワーク townworkただ、好きではじめたお笑いと、やむなくはじめた清掃員では仕事の熱意も違って当然。お笑いをやりながら清掃の仕事をやることに抵抗はなかったのでしょうか。

「最初の3年くらいはつらかったですよ。やっぱり、心の中で『俺はお笑いで食べていきたい』って気持ちが残ってたんで、『なんでこんなことやってんだろう』って思いはありましたね。でも家族の生活も支えなきゃいけないし、正直イヤイヤやってました」

――芸人というのが好きでやってるだけに。

「でもある時、『ほんとに楽しんでやらないと、ただの時間の無駄だな』って思ったんです。以前、居酒屋で働いてたんですけど、そこは時給だったから『早く時間過ぎないかな』って気持ちで、ずっと時計見ながら仕事してたんですね。あれももっとお客さんの分析とかしてたら、居酒屋の仕事にも、芸にも何かつながってたかもしれない。今は、与えられた状況があるなら、それを真剣にやるのが一番良いなと思いますね」

――実際、本業にもつながるようになったわけですもんね。

「ごみ清掃の仕事をはじめて3年弱くらいのころ、仕事の話をちょっとツイッターに投稿したら有吉さん(タレントの有吉弘行さん)がRTしてくれて、それがめっちゃ反応良くて『ごみの話ならいくらでもできるぞ!』と思って投稿するようにしたんです。特技として、いつかトークできるようになればいいなと思ってましたけど、本まで出せるとは思いませんでした」

――働く前はごみ清掃員ってどんなイメージでした?

「いやあ、考えたこともなかったですね。ごみ分別とかも、ビン・カンくらいは分ける程度で、意識も薄かったと思います。働いてる人は毎日見かけてましたけど、具体的にどういう仕事とかは謎でしたね。それが今の仕事になって新しく知ることばっかりですよ」

――たとえばどんなことですか?

「たとえばビデオテープとかCDって、捨てる時は『プラスチックごみかな?』って思うじゃないですか。でも今は焼却技術が昔に比べて上がっていて、どちらも可燃ごみなんですよ。かと思ったら、カイロって中身が鉄だから不燃ごみだったりしてね。あとゴミ出しは1回につき『1家庭3袋まで』って規制があったり、知らないことばっかりで面白いですよ」

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ダイエット機器が捨てられるタイミングはだいたい同じ

一ヶ所に限らず、様々な地域のごみを回収している滝沢さん。捨てられているごみから社会や時代、さらに季節を感じることも多いのだとか。

「ごみを見てると流行の流れがよくわかりますよ。面白いのが、はやりのエクササイズマシーンって、捨てられる時期が同じなんですよね(笑)。仕事仲間と『最近すごく回収するんだよな~』って話になるんです。だいたい話題になって8ヶ月くらいですね。ちなみに捨てる時は粗大ごみでお願いします(笑)」

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「あと、季節によっても出るごみって変わってくるんですよ。夏はやっぱり飲み物の消費量が増えるんでペットボトルが多いですね。3月~4月は引っ越し関連のごみが増えます」

――季節感をごみで感じるんですね!

「あと食品の廃棄も季節によって変わりますね。年末だったらクリスマスケーキとか、あとお盆明けだと野菜が多いんですよね。遠出から帰ってきて、冷蔵庫に入ってたものがしなびてるから捨てちゃったんじゃないかと思うんですけどね」

――そういった、いろんな「もったいない」と出合う場でもあるんですね…。

「秋の新米の時期に、お米を大量に捨ててる人がいたのはびっくりしました。たしかに新米は美味いかもしれないけど、古い米を捨てるって発想はぼくにはないから驚きました。そういうのを見てると、自分も無駄な買い物しなくなりました。ごみを出さない生活に自然と変わっていきましたね」

 

ボクサーや外国人と混じって40代のおじさんが働く現場

ゴミ収集 マシンガンズ 滝沢秀一 インタビュー タウンワーク townworkやってみることで新たな発見がいくつもあり、自身の生活も変わっていったごみ清掃という仕事。しかし、すぐにでも働けるとはいえ、30代半ばからのスタートでは体力的にも大変だったそう。

「最初のころはキツかったですよ。清掃員ってぼくみたいなダブルワークの人がけっこう多くて、俳優の人とか、あと多いのがボクサー。ボクシングってスポンサーがつくまでは本当に収入が厳しいから、世界チャンピオンになった人でもともと清掃員やってた人がいますし、日本チャンピオンでまだこの仕事をやってる人もいます」

――確かに、体力のあるボクサーの方には向いていそうですね!

「もう、パワーも走るスピードも違いますから、一緒に清掃車乗るのはめちゃくちゃ過酷です!それにボクサーもすごいけど、外国人も体力ある人はすごい。40歳のおっさんが一緒にやるのはキツイです(笑)。でもそれは本当極端な例で、70歳の新人とか入ってきますけど、そんな人にはペットボトル工場や粗大ごみ中継所とか、その方なりに働く場所があるんですよ」

――最初はハードだったとおっしゃいましたが、徐々に慣れてくるんですか?

「そうなんですよ。ごみ袋を清掃車に入れるにしても、正面から持って入れると無駄に力が入って疲れるんです。振りまわすみたいに遠心力を使った方が力使わない、とか学んでいくんですよ。先輩たちの無駄のない動きを見ると『かっこいいな~』と惚れ惚れしますね(笑)」

――今は清掃の仕事を辞めたいと思わないんですか。

「芸人としてもネタの宝庫なので、辞める気はないです。それにふたつの仕事をやってると、気持ちが楽っていうのもあるんですよね。お笑いですべっても『明日回収で頑張ればいいや!』って思えるし、ごみ清掃で嫌なことあったら『この経験を舞台でしゃべればいいや』って(笑)。気持ちを切り替えられるのがダブルワークの良いところですね」

 

“生きる”を考えだした今だからこの仕事が楽しい

最後に、就職や転職を考えている人に向けて「好きじゃない仕事をどう好きにしていくか」について、滝沢さんにうかがいました。

「仕事の悩みって、8割~9割は人間関係じゃないですか?やってる仕事自体がほんとに嫌だって人はそんなにいないと思うんですよ。居酒屋に入って『料理するのが嫌だ』とか『ビール運ぶのが嫌だ』ってあらためて思う人はいないじゃないですか(笑)。それよりもお客さんが嫌だとか、店長さんが嫌だってところからねじれていくと思うんですよね」

――好きな仕事でも人間関係がつらいと続かないですよね。

「そうそう。その点、自分は恵まれてました。ごみ清掃の人ってみんな優しいし、朝早い仕事だからメチャクチャな性格の人じゃ続かないんですよ。マジメじゃないと続かない。離職率は低いらしいですけど、まだまだ人手は足りてないです」

――ごみから知ることや同僚から学ぶこと、どれもが滝沢さん本人と芸人としての糧になっている気がしますね。

「どんな仕事に就くにしろ、積極的に楽しみを見つけていくのが一番ですね。ぼくなんか『人のためになる』というのが励みになりました。40過ぎた頃から“生きる”ってことを考えるようになるんですよ。そこまで死も遠くなかったりするし、妻や子供もいて、いろんなことを考えるようになったタイミングで就いたごみ清掃の仕事は、いろんな人に会っていろんな社会を見れて、すごい勉強になって楽しいですよ」

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プロフィール
マシンガンズ 滝沢秀一

1976年9月14日東京都生まれ。太田プロダクション所属。1998年に西堀亮とお笑いコンビ・マシンガンズを結成。2012年から芸人と並行してごみ清掃員の仕事をはじめる。2018年に清掃員としての日々を綴ったエッセイ集『このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景』(白夜書房)が話題に。その後『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)、『ゴミ清掃員の日常』(講談社)を発刊、ごみや環境にまつわるトークイベントにも多く出演中。Twitter:@takizawa0914

撮影協力:太田プロ
(文/大坪ケムタ、撮影/白井絢香、編集/鈴木一禾)

※文中のごみに関する情報は地域により異なる場合があります。

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