女優・松田るかさんインタビュー 「どれだけ技術があっても、人望がなければ仕事にはつながらない」
ドラマや映画など話題作への出演が続く松田るかさん。最新作「映画 としまえん」では、遊園地・としまえんにまつわる都市伝説に翻弄されるグループの中の妹的存在・亜美を演じています。ホラー作品撮影の舞台裏や、沖縄から上京し、仕事をしていく中で感じた思いなどをお伺いしてきました。
人間関係もある種、ホラーなんじゃないかなと思う
――ドキドキしながら作品を観させていただきましたが、撮影で一番印象に残っているのはどんなことですか?
夜のとしまえんの怖さです。撮影は閉園後だったので、私たちは支度のため、夕方ぐらいからとしまえんに入っていたんですが、ついさっきまでたくさんの人が園内にいたのに、その数時間後には人がまったくいないという状況がとても不思議でした。
――都内といっても、としまえんは自然の中にありますから独特の空気が漂っていますよね。そして、松田さんは今回、亜美という女の子を演じました。
亜美は甘えたがりというか妹気質で、私が持ち合わせていない要素満載の女の子なんです。偶然、私の友だちにも「アミ」という子がいるんですけど、そのアミがまさに甘えん坊なので、その友だちのアミをずっと観察していました(笑)。
――お手本が近くに存在していたんですね。劇中の亜美ちゃんたちのやりとりを見ながら、女の子あるあるだなと感じました。
亜美たちは“アンバランスなバランス感”でつながっているグループなんです。指で軽く触れただけで、バラっと崩れちゃうようなギリギリの友情。めっちゃリアルですよね。高校生の頃って、こういうことがよくあるじゃないですか。「あの子が嫌いなんだよね」って別の子に打ち明けながらも、一緒に行動し続ける。「じゃあ、友だち辞めなよ」って私なら言っちゃうと思うんですけど、これって女子あるあるなのか、高校生あるあるなのか。この作品を観た女子はすごく共感できると思います。
――徐々に露呈していく本音がとてもリアルでした。では、作品の見どころを聞かせてください。
この作品はホラー映画ですが、人間関係もある種、ホラーなんじゃないかなと思うんです。としまえんにまつわる呪いの恐怖と、人間関係に潜む恐怖、その二つを楽しんでいただきたいです。
5年頑張って何もなかったら、沖縄へ帰ろうと思っていた
――ここからは松田さんの芸能活動におけるルーツを聞かせてください。地元の沖縄でスカウトされ、タレント活動を開始したそうですが、それまで芸能界への興味は?
なかったです。スカウトをされた頃は塾にも行ってないし、習い事もしてなくて。母から「何もやることがないんだからやりなよ」と勧められ、「じゃあ、やる」と土日だけダンスレッスンへ通い、芸能活動を始めました。
――そして、高校卒業を機に上京したと。
高校生になって進路を考えた時に、このまま地元の大学へ行くよりも、東京へ出ちゃったほうが面白いんじゃないかと上京を決めました。
――戸惑いや不安などはありませんでしたか?
不安というよりも“このままでは、もったいない”という思いのほうが強かったです。女優やタレントって誰もがなれるものではないけれど、スカウトされたっていうことは可能性があるんじゃないかなって。ただ、5年頑張って何もなかったら沖縄へ帰ろうと自分の中で決めていました。
他人に干渉しない東京の街が心地よくて、頑張ることができた
――そして、今年が上京してから5年目にあたるそうですが。
とても濃密な5年間で、自分が想像していたよりも、いろいろなことが早く進みました。正直なところ、もっとくすぶるんじゃないかと考えていたんです。
――早く感じたということは、それだけ充実していたんでしょうね。
そうだと思います。ホームシックにもなりませんでしたから。
――まったく?
なかったですね。沖縄の食べものがちょっと恋しくなったぐらい。東京って味付けがなんでも醤油じゃないですか(笑)。
――確かにそうですね(笑)。東京の何が松田さんと合っていたんでしょう。
東京の人って他人にほとんど興味をもちませんよね。それを心地よく感じたんです。沖縄にいた頃は「るか、あの仕事したんでしょ?」とか「お宅のお子さん、あれに出てたでしょ」といろんなところで言われ、「よそのうちはよそのうち」と口にしながらも、常に監視されているような状況を窮屈に感じていました。でも、いざ上京したら皆が無関心だから、誰も興味をもってくれない街で、自分に興味をもってもらうことの面白さにどんどんハマっていきました。
――人間関係の距離感がちょうどよかったんですね。
例えば、ひとりで飲みに行った時、東京では隣り合わせた女性とすぐに打ち解けられるんです。相手は私のことを知らないし、私も相手のことを知らない。もう二度とその人とは会うこともないだろうっていう、その場限りの関係だからこそ深い話ができたりもするんです。
夢に目が眩んでいるから、心が折れたことはなかった
――なんのしがらみもない相手だからこそ本音で会話ができると。時に、心が折れそうになることは……。
ないですね。この世界で成功する人は、ほんの一握りなんでしょうけど、私は自分の夢に完全に目を眩まされているので、心が折れそうになることはありませんでした。
――頼もしい! 夢に目を眩まされたのは沖縄にいた頃から? それとも東京に出てきてから?
上京する時は半分ぐらい不安もありましたよ。最初の頃は、オーディションを受けても失敗続きで。でも、100回受けて99回落ちたとしても、合格した1回が嬉しいから続けようと思えるんです。例えるならギャンブルと一緒……ってわかりますか(笑)?
――わかります(笑)。その1が嬉しいから、また次にチャレンジしようと思えるんですよね。東京での生活によって変化したことはありましたか?
この5年間で明るくなりました。もともと引っ込み思案で、上京した当時は人と目を合わせて会話もできないぐらいだったんですけど、「こんなことをしていても無駄だ」といろんなことを経験していく中で気付いたんです。人から指摘されるのではなく、自分で実感することができたので、変わることができたんだと思います。
“普通”を表現できる役者になりたいです
――都会で生活していると変わらざるを得ませんよね。では、今後のビジョンを聞かせてください。
人間が日常に抱えるなにげないものを表現できる役者になりたいです。最近は原作モノが多く映像化されていて、お芝居で迷った時にマンガを読んだり、アニメを観たり、ヒントになるものがあるじゃないですか。でも、オリジナル作品は自分自身の経験や観察力がカギになってくると思いますし、私も20代半ばにさしかかり、ここから先は小手先だけのものじゃダメだと思うので、人間の深い部分や“普通”を表現できる役者になりたいです。
――より大人の女性になった松田さんの今後に期待しています。最後に、松田さんと同世代の皆さんへ夢に近づくためのアドバイスをお願いします。
「人と仲良くしろ!」ですね。自分にどれだけ技術があっても、人望がなければお仕事にはつながらないし、どんな仕事だって“人”対“人”ですから。周囲から好かれる人になることが成功への近道なんじゃないかと思います。
松田るか(まつだ・るか)
1995年10月30日、沖縄県生まれ。小学生の時に地元の沖縄でスカウトされ、タレント活動を開始。これまでの主な出演作に「仮面ライダーエグゼイド」(テレビ朝日系)、「賭ケグルイ」シリーズ、「BACK STREET GIRLS-ゴクドルズ―」シリーズなど。声優としても活動しているほか、「東京暇人」(日本テレビ)のМCも務めている。1st写真集「RUKA/LUCA」がムービーウォーカーより発売中。
◆OFFICIAL SITE:https://grick.jp/artist/ruka.php
◆OFFICIAL Twitter:@imrukaM
◆OFFICIAL Instagram:@imrukam
編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子
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