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2019年12月18日

俳優・佐々木喜英さんインタビュー 「2年間のリハビリを経たことで新たな道を開拓。これからの自分にワクワクしている」

 大人気RPG『ペルソナ』シリーズ『ペルソナ5』を舞台化した「PERSONA5 the Stage」に出演する佐々木喜英さん。2年前に大ケガを負い、長いリハビリ期間を経て本格復帰した今、どんな思いで作品に臨んでいるのか。療養期間のことや今後についてインタビューしました。

 

高校生探偵・明智を早く演じたい。久しぶりに披露する歌にも期待してください

佐々木喜英さん
――舞台『血界戦線』の公演を終えたばかりで、休む間もなく「PERSONA5 the Stage」の稽古に合流されたんですよね。

舞台『血界戦線』では推定年齢150歳以上のラスボスを演じましたが、「PERSONA5 the Stage」では高校生役なので、かなり若返りました(笑)。僕が演じる明智吾郎は世間で評判になっている高校生探偵で、王子様のようなキャラクター。1年半以上ぶりに歌も披露する予定です。

――それは期待が高まります! 明智の印象について聞かせてください。

原作であるゲームをプレイした時にまず感じたのは、一作品内でここまで変わるキャラクターなんだということでした。みんなから愛される高校生探偵と思いきや、後半では彼の奥底に秘められた部分が出てくる。僕自身、振り幅の大きな役は大好きなので、今すぐにでも舞台に立ちたいぐらいです。

――意欲たっぷりですね。振り幅の大きな役が好きということですが、作品によって佐々木さんの見せる顔がまったく違うので、どれが本当の顔なのか分からなくなってしまいます。

俳優は作品によってカメレオンのように姿を変えなくてはならないので、キャラクター作りは毎回こだわりますね。僕は原作がある作品に出演することが多く、毎回同じだとつまらないですし、「今回はこういう見せ方をするんだ」と新鮮な驚きを与えられたらと思って臨んでいます。

――原作がある作品だとどこまで原作に寄せるのか、その加減も難しいと思います。

演出家さんしだいですね。「(アニメに)声を似せて」という方もいますし、「モノマネから入らないでくれ」という方もいるので、演出家さんがどういう世界観をつくろうとしているかを探ることから始めます。個人的にはアニメに似せたいという思いはあります。どこかしら似ていたほうが原作を知っているお客様には入りやすいでしょうし、僕自身も役に入りやすい。与えられたキャラクターは毎回、徹底的に研究します。

 

療養中は舞台に立ちたい気持ちと、立って大丈夫なのかという不安が交錯していた

佐々木喜英さん
――そんな苦労があってキャラが完成するんですね。今回、佐々木さんが演じる明智のアルカナ(タロットカード)は「正義」ですが、佐々木さんにとっての正義はどんなことですか?

僕の正義というか、モットーにしているのは「Show must go on」ということです。2年前、公演中にケガをしてしまって、入院、手術、リハビリを余儀なくされたんですが、本番中、何が起こったとしても絶対に芝居を止めてはいけない、ショーを続けなくてはならないと身をもって実感しました。

――よく耳にする言葉ですが、実際にアクシデントを体験した佐々木さんだからこその発言だと思います。リハビリ期間はどんなふうに過ごしていたんでしょう?

最初は足に体重をかけることもできなかったので、ただ寝ることしかできずにスマホゲームなどをやって時間を費やしていました。でも、そのうちにこんなことをやってちゃダメだと、今後につながる何かを始めたいと思い、少し歩けるようになった頃からピアノを習い始めたんです。ピアノは小学生の時に習ってたんですけど、ブランクがあったのでもう一度ちゃんとやろうと。そして、弾き語りができるようになり、せっかくだから動画をYouTubeで公開してみようと投稿し始めました。投稿数はまだ少ないんですけど、仕事が落ち着いたらどんどん投稿していこうと考えています。

――それまで舞台で演技をして歌ってアクションをして、と動きっぱなしだった佐々木さんにとって、ベッドで過ごす日々はかなりの葛藤を抱えていたのではないでしょうか。

正直、しんどかったです。退院後はリハビリに通ってひたすら同じメニューをこなして……という2年間でした。早く舞台に立ちたい気持ちと、立って大丈夫かなという気持ちが半々で、そんな時に始めたTwitterでファンの皆さんから温かい言葉をいただいたり、歩けるようになったら役者仲間と食事に行き、なかには似たような経験をした人もいたので助言をもらったり、いろんな方から助けてもらって復帰することができました。

 

フリーで奮闘中。新しい道を切り拓くことは自己プロデュースでもある

佐々木喜英さん
――そんな期間の心の支えになったものは何だったんですか?

所属していた事務所を今年3月に辞め、フリーとなってからTwitterを始めたんですが、やはりTwitterを通じてファンの皆さんと交流ができるようになったことは大きかったですね。それまでブログしかやっていなかったので、こんなにも早く情報が広まり、こんなにも早く言葉が届くんだと驚きました。

――応援してくださる方の直接の声が励みになったと。環境の変化も大きな出来事となりましたね。

フリーになった以上、これも勉強の場だからやってみようと。今までマネジャーさんにやってもらっていたことを自分でやるようになったんですけど、ビジネスメールの返信もわからなくて、1から勉強しているところです。不安もありますが、新しい道を切り拓くことは自己プロデュースしているように思いますし、それもある意味、表現のひとつなのかなと思っています。

 

大事にしているのは“クオリティ”。少しの空き時間でも必ず練習します

佐々木喜英さん

――それは楽しみです。療養期間を経たことで、見えたものもあったのではないですか?

もともとダンスや殺陣が好きで、僕の武器でもあると思っていたんですが、それを封じられたことで、今の自分には何ができるんだろうと。さっきお話したピアノもそうですし、アニメを見ながら「声優さんのセリフまわしはスゴい」って改めて声の芝居を研究したりしていたので、今後の僕のパフォーマンスや得意ジャンルにも変化が出てくると思います。

――日々、生活している中で心が折れそうになってしまうこともあるかと思うのですが、佐々木さんはそんな時、どんなふうに乗り越えてきましたか?

いっぱいいっぱいになってる時って視野が狭くなってしまうと思うんですけど、そういう時こそ自分を客観的に見てあげることで、他の選択肢が見えてくるんじゃないかなと。僕もケガという予想外のハプニングに見舞われましたが、ブランクを経たことによって再開したピアノや、声のお芝居、仕事への向き合い方などまた新たなものを得たと思っています。

――物事を一歩ひいた視点で見ることも大事だと。では、お仕事をするうえで大切にしていることは?

“クオリティ”です。来ていただいたお客様の期待に少しでも応えられるよう、そして、より質の高いものをお届けできるよう、空き時間があると練習しています。先月出演した舞台『血界戦線』でも僕の出番は後半のほうだったので、少しでもアクションや殺陣のクオリティを上げるために一幕中ずっと楽屋で練習をしていました。

 

「演じること」は生活の一部。今後の自分がどう出来上がっていくのか楽しみ

佐々木喜英さん」「
――そんな佐々木さんにとって「舞台」とは? そして、「演じること」とは何でしょう。

初めて演技に触れたのが中学生の頃で、気がつけば人生の半分以上、舞台に携わっているので、“生活の一部”というか“なくてはならないもの”です。

――最後に、目標に向かって頑張っているけど、なかなかうまくいかないという若い世代へアドバイスをお願いします。

夢に向かって突き進んでいく中で、すべてがうまくいくことなんてほぼないと思うんです。何かハプニングが起きてしまった時、それを乗り越えられるかどうかが大事で、そんな時こそ自分を客観的にみて、他にどんな選択肢があるのか、自分は今何をするべきなのかと視野を広くもつことで、そこを抜け出す何かが見えてくるのではないでしょうか。

――佐々木さんも何かが見えたから乗り越えることができたと?

僕の場合は「見えた」というより、遠くに見える光、それが何なのかまだ分からないけれど、新しいものに向かって進んでいってるという感じです。俳優・佐々木喜英がどんなふうに出来上がっていくのか、自分でもワクワクしています。

 

■プロフィール
佐々木喜英(ささき・よしひで)

1987年10月4日、東京都生まれ。これまでの主な出演作にミュージカル『テニスの王子様』シリーズ(白石蔵ノ介役)、朗読劇『私の頭の中の消しゴム』シリーズ、「タンブリング vol.3」、ミュージカル『黒執事』シリーズ(ドルイット子爵役)、超歌劇『幕末Rock』シリーズ(沖田総司役)、ミュージカル『薄桜鬼』、舞台『刀剣乱舞』(宗三左文字役)、舞台『K』シリーズ(御芍神紫役)など。

◆OFFICIAL Twitter:@yoshihidesasaki

編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子

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