【配偶者が個人事業主・自営業】主婦・主夫のパート年収は?社会保険・税金と合わせて解説

- 夫もしくは妻が個人事業主の場合は、社会保険の扶養制度はありません
- 130万円の壁ではなく、パート先の社会保険に加入する働き方をするかがポイントです
- 夫、妻ともに一定条件を満たせば、配偶者控除・配偶者特別控除を受けられます。
配偶者が国民健康保険・国民年金に加入している自営業の個人事業主の場合、パート主婦・主夫は社会保険の扶養に入ることはできませんが、税制上の配偶者控除(配偶者特別控除を含む)は、基準となる条件を満たせば受けることができます。
※便宜的に「夫が個人事業主の妻」と表現を統一します
個人事業主の妻の社会保険
社会保険の扶養は、夫などの配偶者が会社員や公務員などのケースに適用されます。そのため、妻は世帯主の夫の社会保険の扶養に入ることはできません。国民健康保険と国民年金に加入するか、収入や働き方が一定を超えると、妻自身の勤務先の社会保険に加入することになります。
年収130万円の壁は関係しない
社会保険の扶養とは、夫など配偶者が会社員や公務員の場合、その妻の年収が130万円未満などの被扶養者要件を満たすと、妻が夫の会社や組織の社会保険の扶養に入れるという制度です。
夫が国民健康保険・国民年金に加入している場合は、これらの制度には扶養という考え方がないため、130万円の壁は関係しません。そのため、妻は、自身で国民年金や国民健康保険料を支払うか、パート先の社会保険に加入することになります。
一定の基準を満たすとパート先の社会保険に加入する
下記に示す「勤務先の社会保険の適用要件」の全てを満たすと、妻自身が会社の社会保険に加入することになります。
2026年9月までは月額8.8万円の賃金要件、いわゆる106万円の壁がありましたが、2026年10月に撤廃されました。現在は、年収106万円以上かどうかではなく、「週の所定労働時間が20時間以上」などの条件によって社会保険の加入対象になるかを判断します。
勤務先の企業規模に関する要件は残っており、2026年10月時点では、原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業が対象です。この企業規模要件は、2027年10月以降、段階的に縮小されます。
また、厚生年金保険の被保険者数が50人以下の会社で働いている場合でも、社会保険に入るケースがあります。週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が、勤務先で働く正社員の「4分の3以上」であれば、会社の規模に関係なく、会社の社会保険に加入することになります。
1.所定労働時間が週20時間以上
2.雇用期間が2か月を超える見込みがある
3.勤務先が厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業である、または50人以下の企業で労使合意に基づく任意特定適用事業所の申し出をしている
4.学生ではない(夜間・定時制など、加入対象となる場合もある)
個人事業主の妻の税金・夫の税金
税金については、妻自身のパート収入にかかる税金と収入額に応じた夫の税金控除の制度があります。こちらは世帯主が個人事業主でも適用され、配偶者控除・配偶者特別控除と呼ばれています。
妻の住民税(所得割)は119万円超、所得税は178万円超が目安
妻の収入が給与のみで、ほかに所得がない場合、課税される給与収入の目安は次のとおりです。
| 住民税の所得割 | 2026年分の給与収入が119万円を超えると、翌2027年度に課税 |
| 所得税等 | 2026年分の給与収入が178万円を超えると課税 |
ただし、生命保険料控除や社会保険料控除などを受ける場合は、これらの金額を超えても課税されないことがあります。
住民税には所得割と均等割があり、所得割は課税所得に対して原則10%、均等割は標準年額4,000円です。このほか、森林環境税1,000円があわせて徴収されます。所得税は、各種控除を除いた後の課税所得によって税率が異なり、課税所得195万円未満では5%となります。
妻の年収169万円以下なら配偶者(特別)控除は最大38万円
自営業の妻でも、収入がパートの給与のみの場合、年収136万円以下なら配偶者控除、136万円超~169万円以下なら配偶者特別控除の対象です。夫の合計所得金額が900万円以下であれば、いずれも控除額は38万円です。妻の年収が169万円を超えると控除額は段階的に減り、207万円を超えると対象外になります。
夫の合計所得金額が900万円超~950万円以下の場合、控除額は最大26万円、950万円超~1,000万円以下の場合は最大13万円となり、1,000万円を超えると対象外です。また、妻が青色事業専従者として給与を受けている場合や、白色事業専従者である場合、配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。
例えば、控除額38万円の全額に所得税率20%が適用される場合、所得税は7.6万円軽減されます。復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含めると、軽減額は約7.76万円です。
| 妻のパート年収 (給与収入) |
控除対象制度 | 控除額(所得税) | ||
|---|---|---|---|---|
| 夫の合計所得金額 900万円以下 |
夫の合計所得金額 900万円超〜 950万円以下 |
夫の合計所得金額 950万円超〜 1,000万円以下 |
||
| 136万円以下 | 配偶者控除 (満額) |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 136万円超〜 169万円以下 |
配偶者特別控除 (満額) |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 169万円超〜 207万円以下 |
配偶者特別控除 (逓減) |
段階的に減少 | ||
| 207万円超 | 控除なし | 0円 | 0円 | 0円 |
※夫の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。
※妻が青色事業専従者として給与を受けている場合や、白色事業専従者である場合も対象外です。
パート先の社会保険に加入できるなら加入するのがお得
パート先の社会保険加入義務がある場合でも、夫の配偶者特別控除が満額(38万円)となる169万円以下の範囲で稼いだ方が得な可能性もあります。社会保険料は会社と折半するため、国民健康保険と国民年金を自己負担するよりも年間の支払額が安くなる可能性があるからです。
また、社会保険と国民健康保険では手当にも違いがあり、国民健康保険では、出産手当金や傷病手当金は原則として支給されません。会社の健康保険の方が手厚くなる傾向にあります。会社の社会保険に入れない場合は、自身の税負担が始まる年収の目安や、夫の配偶者(特別)控除、国民健康保険料・国民年金保険料への影響を踏まえ、世帯全体の手取りで働き方を検討してみるのもいいでしょう。
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
記事公開日:2023年10月13日
更新日:2024年8月27日、2024年10月1日、2025年10月2日、2026年9月18日
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。