退職の流れと手続き~社会保険(健康保険・年金)、失業給付、住民税など、やることリストまとめ~
退職の手続きには、退職前の社内手続きと退職後の公的な手続きがあります。公的な手続きには社会保険(国民年金、国民健康保険)、税金(住民税)、失業給付の申請などがあります。退職までの大まかな流れと退職前後の手続きについて解説します。
【目次】
退職までの流れ
円満に退職するためにも事前準備はしっかりと。会社に退職の意思表示をしてから最終出社日まで、いつ、どんな手続きが必要か、おおまかな流れを知っておきましょう。ここで紹介するのは退職までの一般的な手順です。会社によって、退職をいつまでに伝えるかなどルールが異なるので、まずは就業規則の確認から始めましょう。
2~1ヶ月前/退職の意思表示・退職日の相談・決定
↓
1ヶ月前~/退職届の提出・仕事の引き継ぎ
↓
2週間前~/取引先への挨拶まわり
↓
最終出社日/社内挨拶・備品返却など
※有給消化がある人はここから有給休暇
退職日
2~1ヶ月前:退職の意思表示・退職日の決定
無期雇用契約であれば、退職の2週間前までに退職の意思を告げれば法律上は問題ないとされています。しかし、業務の引き継ぎなどを考慮すると少なくとも1カ月前には申し出たいところ。できればもう少し余裕を持って伝えられるとベターです。できれば繁忙期や大型プロジェクト進行中は避けたほうが、比較的スムーズに退職の交渉ができるでしょう。
退職の相談は直属の上司にアポイントをとります。退職の意思をはっきりと告げることは大切ですが、一方的な申し出にならないように配慮が必要です。退職日は引き継ぎ期間を考慮して、お互いが納得できる日を相談して決めましょう。
1ヶ月前~:退職届の提出・仕事の引き継ぎ
退職日が確定したら、就業規則に従って退職届を提出しましょう。このとき、直属の上司に手渡しで提出するのがポイントです。受理されたら、できるだけ早く仕事の引き継ぎに取り掛かります。誰が担当することになっても滞りなく業務が進められるように、詳細な資料を作成しておくのがおすすめです。退職日までに余裕を持って完了できるスケジュールを立てて、実行しましょう。
2週間前~:取引先への挨拶まわり
取引先への挨拶は、会社の意向も踏まえて行うのがよいです。後任者が決まっている場合は同行してもらい引継ぎの挨拶をします。その際、後任者を立てるようにすると取引先も安心しますし、その後の仕事も進めやすいでしょう。退職後のことまで配慮できると好印象です。
最終出社日:社内挨拶・備品返却など
最終出社日は、お世話になった方々に最後の挨拶回りを。夕方頃、落ち着いた時間帯を見計らって行うのがよいでしょう。必ずしも必要ではないけれど、お菓子を持っていくと喜ばれますし、声をかけるきっかけにもなります。たまたま離席中だった人にも、机にちょっとしたお菓子を置いておけば感謝の気持ちが伝わりやすくなるでしょう。また、会社から貸し出されたものを返却したり、必要な書類を受け取ったりと、しなければならないことも多いので、抜け漏れのないようにしましょう。
退職前の手続き
会社内の手続きは退職日までに行います。会社へ返却するもの、会社から受け取るものの2つがあります。
返却は、今まで使用していた会社の備品・所有物、社章や名刺などです。会社から受け取るものには、その後の公的な手続きに必要なものが多いので、確実に受け取って保管することが大切です。会社によって内容や返却受け取り方法が異なる場合があるので、以下のチェックリストを参考に確認しましょう。
会社へ返却するもの
□ 健康保険被保険者証
扶養家族がいる場合はあわせて同時に返却
□ 社員証、社章
会社に所属する身分証にあたるものはすべて返却
□ 名刺
自分の名刺はもちろん、仕事で得た名刺も原則返却
□ 通勤定期代
会社の費用で購入している場合は原則として退職日までに精算し返却
(払い戻し金額を会社に伝え、最後の給与で調整してくれる場合もある)
□ 制服
貸与を受けていた場合は、クリーニングして返却するのがマナー
□ 備品、書類
PCなどの備品のほか、業務上の資料や書類、作成物も原則としてすべて返却が必要
会社から受け取るもの
□ 離職票1と2
退職日の翌日から10日以内にハローワークで手続き後、会社から自宅に送付される。手元に届くまで2~3週間程度はかかる。失業給付の申請に必要。転職先が決まっている場合は不要
□ 雇用保険被保険者証
会社に預けていた場合。退職後の失業給付を受ける際や再就職先の雇用保険に加入する際に必要となる(雇用保険被保険者番号を伝えるだけでも可)
□ 源泉徴収票
退職後1カ月以内に会社から交付される。転職が決まっている場合は、転職先の会社に年末調整時に原本提出が必要。年内に就職しなかった場合は、所得税の確定申告時に使用する
□ 年金手帳
会社に預けていた場合。国民年金の加入の際に必要。転職が決まっている場合は、転職先の会社に提出する(基礎年金番号を伝えるだけでも可)
退職後の手続き
退職後の手続きは、すぐに新しい会社に就業する人と、そうでない人とで、手続きが異なります。
退職後すぐ就業する場合 (翌日から)
退職日の翌日から新しい会社で働く場合は、転職先の会社に必要書類を提出すればOKです。役所への手続きは会社が行ってくれるため、自ら対応する必要はありません。具体的な提出書類は、下記のリストを参考にし、転職先からの求めに応じてご準備ください。
□ 雇用保険被保険者証
□ 健康保険資格喪失証明書
□ 年金手帳
□ マイナンバーカード
□ 源泉徴収票
□ 健康保険被扶養者異動届(扶養家族がいる場合のみ)
入社まで期間が空く場合
退職すると、健康保険や厚生年金保険の被保険者資格をいったん喪失することになるため、転職先が決まっていない人や、次の職場への入社までに期間が空く人は、自分自身で社会保険や税金などの変更・加入手続きを行うものもあります。主な手続きは、以下の4つです。
・健康保険加入の手続き
・国民年金加入の手続き
・住民税の手続き
特に失業給付や健康保険加入の手続きをしないままの状態が続くと、失業給付を受け取れなくなったり、万が一病気になったりした場合、保険適用を受けられず、高額な医療費を支払う可能性があります。忘れずに手続きしておきましょう。
雇用保険の手続き
「失業給付」と呼ばれる雇用保険制度に基づいた手当は、手続きをしないと受け取ることができません。次の就職先が決まっていない場合は、できるだけ早めに失業給付の手続きを行いましょう。
●期限
離職票が交付され次第すぐに
●場所
居住地管轄のハローワーク
●必要なもの
・雇用保険被保険者離職票1、2
・写真2枚(最近のもの、縦3cm×横2.5cmの正面上半身のもの)
・本人名義の普通預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関あり。ゆうちょ銀行は可能)
・印鑑
・個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか1種類)
・身元(実在)確認書類
((1)のうちいずれか1種類((1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))
(1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
失業給付を受け取れる条件は、「失業状態にあること」「退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上あること」「ハローワークに求職の申し込みをしていること」の3点。退職理由が会社都合と自己都合では給付額や給付までの期間が異なり、自己都合の場合は、申請してから給付まで最短で3カ月と7日かかります。失業給付の受給期間は退職日から最長1年なので、離職票が交付されたら早めに手続きを済ませましょう。
1.ハローワークで求職の申し込みと離職票の提出
2.7日間の待期期間
3.失業給付受給説明会と失業認定日に出頭
4.3カ月の給付制限期間を経て初給付
5.以降は4週間に一度の失業認定日に出頭、その後約1週間程度で給付
年金の手続き
転職先が決まっていない場合は、厚生年金から国民年金に自分で手続きをして切り替えるか、配偶者の被扶養者になれる場合には、厚生年金に加入している配偶者の勤務先に手続きをしてもらう必要があります。
<国民年金に加入する場合(国民年金第1号被保険者)>
● 期限
退職日の翌日から14日以内
● 場所
住民登録している役所の国民年金担当窓口
● 必要なもの例
・年金手帳
・退職日が確認できる書類(資格喪失証明書、退職証明書など)
・身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・印鑑
次の転職先が決まっていない人や個人で事業を起こす人は、国民年金への切り替えを行いましょう。手続きを行わないと保険料の納付ができなくなり、年金未納期間が発生してしまうケースがあります。その場合、受給できる年金額が減額されたり、それまでの保険料をまとめて請求されることがあるので注意しましょう。
<配偶者の被扶養配偶者になる場合(国民年金第3号被保険者)>
● 期限
退職後、できるだけ早く
● 場所
配偶者の勤務先
● 必要なもの例
・国民年金第3号被保険者関係届
・世帯全員の住民票(被保険者と別姓の場合)
・源泉徴収票のコピー
・退職証明書または雇用保険被保険者離職票のコピー
・失業給付や年金を受給している場合は、受領金額のわかるもののコピー
*上記は例示ですので、手続きの際に、必要書類は会社にご確認ください。
配偶者の被扶養配偶者になる場合は、「配偶者が第2号被保険者(会社員や公務員)であること」「退職者の今後の年収が130万未満(60歳以上や一定の障害者は180万円未満)であること」、この2点の条件を満たす必要があります。加入手続きは配偶者の会社に依頼します。
<公的年金の被保険者区分(対象者)>
・第1号被保険者:
国民年金のみの被保険者。20歳以上60歳未満で、日本国内に在住(外国国籍の方も含む)する、自営業、農業等従事者、学生、フリーター、無職の方など(ただし、第2号被保険者及び第3号被保険者以外の方)
・第2号被保険者:
厚生年金保険の被保険者。厚生年金保険の適用を受けていれば自動的に国民年金にも加入。(65歳以上で老齢年金を受ける人を除く)
・第3号被保険者:
第2号被保険者の扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者
健康保険の手続き
退職すると健康保険の被保険者資格を失いますが、全ての国民が何等かの公的医療保険に加入する義務があります。また、何も手続きをしないと、就職していない期間はどの健康保険に加入してるのか不明な状態になり、医療費全額が自己負担になる可能性がありますので気を付けましょう。退職後の健康保険は「国民健康保険」「任意継続制度」「家族の扶養に入る」といった3つの中から選択できます。いずれも現役世代は医療費の一部負担金は3割それぞれ手続きの方法や場所、提出書類が異なるので注意しましょう。
<国民健康保険に加入する場合>
● 期限
退職日の翌日から14日以内
● 場所
住民登録している役所の健康保険窓口
● 必要なもの例
・健康保険資格喪失証明書
・各市町村で定められた届出書
・身分証明書(パスポート、運転免許証、マイナンバーカード、など)
・印鑑
国民健康保険は、各市区町村が運営する健康保険制度のこと。保険料は住んでいる自治体により異なります。基本的には、前年度の所得や世帯の資産、家族の人数などをベースに算出され、納付方法も自治体ごとにことなるので、確認しましょう。
<これまでの健康保険を任意継続する場合>
● 期限
退職日の翌日から20日以内
● 場所
退職時に加入していた健康保険組合事務所、または全国健康保険協会(それまで加入していた健康保険によって異なる)※郵送でも受付可
● 必要なもの例
・健康保険任意継続被保険者資格取得申出書
・印鑑
・保険料(1カ月分、退職日によっては2カ月分)
*上記は例示ですので、手続きの際に、健康保険組合又は協会けんぽにご確認ください。
退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上あれば、最大2年間、それまで加入していた健康保険を引き続き利用できます。退職後の保険料は全額自己負担となり、保険料を納付し忘れると任意継続の資格を失ってしまうので気をつけましょう。また、一度任意継続を始めたら、原則2年間の間に国民健康保険に切り替えたり、家族の扶養に入ることができません。
<家族の健康保険の扶養に入る場合>
● 期限
退職後、できるだけ早く
● 場所
家族の勤務先
● 必要なもの例
・健康保険 被扶養者異動届
・世帯全員の住民票(被保険者と別姓の場合)
・源泉徴収票
・退職証明書または雇用保険被保険者離職票のコピー
・失業給付金や年金を受給している場合は、受領金額のわかるもののコピー
*ご家族の状況や健保組合によっては、上記以外の添付書類が必要なこともありますので、事前にご確認ください。
家族が加入する健康保険の被扶養者になることもできます。扶養に入るための主な条件は「被保険者により生計を維持されている三親等以内の親族(一部同居要件有)であること」「退職者の今後の年収が130万未満(60歳以上や一定の障害者は180万円未満)であること」などがあげられます。健康保険によっては、失業給付を受けていると要件から外れてしまい、扶養に入れない場合もありますので、早めに家族に加入要件を確認してもらうのがよいでしょう。
住民税の手続き
住民税の納付方法は、毎月の給与から天引きされる「特別徴収」と自分で納付する「普通徴収」の2つがあります。住民税は前年の1月から12月までの1年間の所得に対して課せられる税金で、納税は翌年の6月から翌々年の5月までと決まっています。そのため、退職時期によって、手続きや支払い方法が異なります。
<退職後1カ月以内に就職する場合>
転職先で継続して特別徴収してもらうことが可能です。継続に関しては、退職する企業に「給与所得者異動届出書」の作成を依頼して、それを転職先に提出してください。ただし、1カ月以上間が空いてしまう場合には、一旦、普通徴収に切り替える、もしくは退職する企業に数カ月分の住民税をまとめて天引きしてもらう依頼をしましょう。
再就職後に転職先の企業で改めて特別徴収への切り替え手続きをしてもよいでしょう。その場合は、前の会社に特に依頼をしなければ退職時に自動的に普通徴収への切り替え手続きが取られますので、送られてきた納付書で住民税を支払いましょう。
<退職月が1月~5月の場合>
原則として退職月から5月までの住民税が一括徴収され、最終月の給与や退職金から天引きされます。徴収される住民税が、退職月の給与もしくは退職金との合計額よりが多くなってしまう場合は、全額または一部(1か月分のみなど)を、退職する会社に依頼し、自分で支払う普通徴収に変更することもできます。
<退職月が6月~12月の場合>
退職月分の住民税は天引きされますが、残りの分は自分で納付しなければなりません。納付方法は一括か分割かを選択でき、納付通知書は役所から送られてきます。希望すれば退職する月から翌年5月支払い分の住民税を、退職月の給与や退職金から一括で支払うことも可能です。