荒牧慶彦さん(舞台『刀剣乱舞』山姥切国広(やまんばぎり・くにひろ)役インタビュー) 【この役の為に僕がしたこと vol.5】
舞台『刀剣乱舞』(以下、刀ステ)最新作「慈伝 日日の葉よ散るらむ」で山姥切国広に扮する荒牧慶彦さん。会場替わり刀剣男士を含む、総勢22振りが一堂に会した豪華キービジュアルも話題の作品に荒牧さんはどんな思いで挑むのか、そして、山姥切国広が自身にとってどんな存在なのかを伺いました。
「ジョ伝」での経験を糧に、まーしーに頼りながらやっていきたい
――最新作は荒牧さん演じる山姥切国広と、和田雅成さん演じるへし切長谷部が中心となり、18振り+会場替わり刀剣男士4振りが顔を揃える豪華な内容になっていますが、そのあたりへの思いを聞かせてください。
「ジョ伝 三つら星刀語り」の時の経験もありますし、まーしー (和田雅成)もいるから大丈夫だろうと。すべてを一人で抱え込まず、まーしーにも頼りながらやっていきたいと思っています。
――長く演じているだけに貫録も十分ですね。今作について和田さんと何か話したことはありましたか?
「楽しみだねぇ」とか「よろしくね」程度です。あとは2人で「劇場版 名探偵コナン 紺青の拳」のレイトショーを公開初日に観にいきました。コナンの劇場版は毎回2人で観ています(笑)。
常にマントを着て、山姥切国広になりきっていました
――荒牧さんが初めて山姥切国広を演じたのが2016年。出演が決まった当時の心境を覚えていますか?
よ~く覚えています。キャストが発表された時の世間のざわつきといったら、それはもう大変なものでした。実績のあるキャストを揃えていて、その中に僕もいられることが嬉しかった。それだけ期待されていた作品でしたし、何より「刀ステ」本丸の近侍である山姥切国広という役柄をいただけて、しっかり演じなきゃと気合が入りました。
――プレッシャーはかなりのものだったと思います。役作りはどんなことから始めましたか?
山姥切国広といえば、マントがトレードマークなんですが、マントの裾が刀に絡まったり、他の人に接触したりと扱いがとても難しいんです。ですから、まずは慣れることが大事だと考え、常にマントを着ていました。
――扱いには相当苦戦したようですね。
刀を振れば振るほどマントに絡まるし、「全然動けないじゃん」となって。マントの制御の仕方が分かってきた頃には楽しくなって、よりステージで映える動きなども研究しました。
――その苦労があって、華麗なマントさばきが完成したんですね。それ以前から殺陣の経験はあったんですか?
もともと剣舞が特技だったので、「刀剣乱舞」の世界観に僕自身は合うんじゃないかと考えていました。
――それ以外の役作りについてはスムーズにつかめましたか?
「刀剣乱舞」に関する情報を集めたり、ゲームをプレイしたりと、いろいろ研究しました。今でこそ「刀剣乱舞」という作品の認知度は一般的になっていますが、当時はアニメもまだ製作されていませんでしたし、情報も少なくて参考にできるものといえばゲームの“ボイス”だけ。このキャラクターならこう動くだろうというのを想像して、世界を広げていくのが「刀ステ」の醍醐味ではあるのですが、「刀ステ」本丸の山姥切国広を作り上げていくのには苦労しました。
山姥切が背負っているコンプレックスだけは忘れないようにしたい
――約3年間演じてきて改めて感じた山姥切国広の魅力というのは?
山姥切国広というのは、霊剣「山姥切」を模して造られたとされる打刀で、オリジナルでないことがコンプレックスなんです。まわりから「キレイ」と言われることがイヤで、マントをかぶってみすぼらしい格好をしている、ちょっとこじらせ気味なキャラです。キリッとしている部分もあれば、少しヌケてる部分もありますが、出陣で本気になった時には荒々しい言葉遣いになったり、そういうたくましさも魅力なんじゃないかと思います。
――では、演じるうえで大切にしていることは?
山姥切国広が背負っているバックボーンを大事にしています。自分がオリジナルではない、“写し”であることだけは忘れないようにしつつ、荒々しかったり、カッコよかったり、美しさも意識して演じています。
山姥切国広は僕にとって相棒のような存在
――そんな山姥切国広と荒牧さんの共通点はありますか?
うーん……、似ている部分はあまりないのかもしれません。しいて挙げるとするなら、若干ヌケてるところ。でも、ヌケてるというのはオフィシャルの情報ではなく、あくまでも僕なりの解釈です。
――憧れる部分は?
単純にビジュアルの美しさには憧れます。先ほど、共通点はあまりないと言いましたが、ないからこそ演じていて楽しいんだと思います。自分じゃないものを演じられる楽しさっていうのかな。
――逆に、自分とはまったく違う部分というのは?
やはり背負っているものですね。山姥切国広のようなコンプレックスや、ネガティブな思考というのは僕の中にはありません。
――「刀剣乱舞」、そして、山姥切国広というキャラクターは荒牧さんにとってどんな存在ですか?
僕の心に深く突き刺さっている作品であり、「相棒」といえる存在です。荒牧慶彦という名前を世の中に知らしめてくれたのは、間違いなく舞台『刀剣乱舞』ですし、僕の中で大きな部分を占めています。
――山姥切国広という役柄がプライベートに影響したことなどはありますか?
あまりにもマントに慣れてしまったので、他の作品の稽古でパーカを着ていると、自然とフードをかぶっちゃうんですよ。これ(フード)がないと落ち着かないんです(笑)。
ファンの皆さんが大切にしている世界観を崩さないことを意識している
――マントが体の一部になってるんでしょうね(笑)。荒牧さんは舞台『刀剣乱舞』をはじめ、2.5次元作品で活躍されていますが、そんな作品に出演する時に大事にしていることを聞かせてください。
ファンの皆さんが大切にしている世界観を崩さないということです。そこを尊重し、僕ら演じる側も愛情をもって、世界観やキャラクターを作り上げていくことが大事だと考えています。
――原作へのリスペクトですね。演じるにあたっては原作に忠実に再現しますか? それとも“荒牧さん色”をどこかにミックスしようと……。
もちろん原作を忠実に再現することは必ずやらなければいけないことなんですが、舞台では実際の人間が演じるという意味をしっかりもたせたいし、それが2.5次元舞台の魅力だと思っているので、自分自身のカラーをどこかしらに盛り込んでいけたらというのは考えています。
――そんな荒牧さんの原動力になっているものは?
応援してくださる方の存在ですね。これまで所属していた事務所を退社し、4月からフリーで活動しているんですが、今こうして順調に仕事ができているのはファンの皆さんあってこそなんですよね。僕がTwitterで動画をアップしたり、「こういう作品に出演します」とお知らせした時に、自分のことのように喜んでくださる皆さんには本当に感謝しています。これから先も温かく見守って、応援していただければと思います。
荒牧慶彦(あらまき・よしひこ)
1990年2月5日、東京都生まれ。2012年、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン」甲斐裕次郎役で俳優デビュー。2017年、舞台「初恋モンスター」で単独初主演をはたし、ゲーム「戦刻ナイトブラッド」では声優に挑戦。主な出演作に『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』シリーズ(朔間凛月役)、「MANKAI STAGE『A3!』」シリーズ(月岡紬役)など。
◆荒牧慶彦Twiter:@ara_mackey
◆OFFICIALTwitter:@aramakiofficial
編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 メイク:小倉優美(LaRME) スタイリスト:宇都宮春男 取材・文:荒垣信子
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。