声優インタビュー:阿部敦【先輩のオフレコ!】3
プロとして社会で活躍する「先輩」たちの成長の秘密に迫る『先輩のオフレコ!』。声優・阿部敦さんのインタビュー最終回の今回は、阿部さんが実はやってみたい!と思っているアルバイトを体験してもらいながらお話しを伺います。阿部さんは、アルバイト中にかけられた一言からご自身の性格について何か気づきがあったでそうですよ。一体どんな性格でしょう…?
人と接するっていいなと思えた深夜バイト
―夢とアルバイトを両立するためのバイト選びは、どのようにおこなっていましたか?
基本的には時給で選んでましたね(笑)
あとは養成所に通いながらバイトをしていたので、あまり無理のないものを選んでいました。
養成所時代からたまに声優の仕事があって、突然、入ることも多かったので面接のときから「もしかしたら、急に声優の仕事が入ることもあるんですけど大丈夫ですか?」って聞いて問題ないところで働いていましたね。
深夜勤務は声優の仕事と絶対にかぶらないので、すごくやりやすかったです。
―いろいろなアルバイトを経験していますが、印象に残っているものはありますか?
牛丼チェーンでの深夜勤務ですね。
時給も高いし深夜もおもしろいかなぐらいの気持ちで働きはじめたんですけど、実際におもしろかったです(笑)
工場地帯の国道沿いだったんで、長距離トラックの運転手さんがよく来ていました。他にも、いろんな常連さんがいたので「あの人、普段はどんなことしているのかな?」って、想像しながら働いていました。人間観察ですね。
―アルバイトでのやりがいはどこで感じていましたか?
気持ちの良いお客さんに会えた時です。
人によっては一度も目が合わないまま、お会計が終わっちゃう人もいるんですよ。でも、目を見て「ありがとう」って言ってくれるお客さんに会えた時はうれしかったですね。
深夜勤務をしていた頃は、これでコーヒーでも買いなよって110円くれる人もいたんです。なんか、人と接するっていいなと思いました。
―バイトをする中で、印象に残っている言葉ってありますか?
牛丼チェーンの面接時に「接客は、それなりにできる方だと思います」って話をしたんです。
そこから2、3日くらい勤めた後、バイトの先輩から「自分で接客できるって言う人は、大体できないんだけど君はできる方だね」って言われたんです。それが意外でした。
その時は「ありがとうございます!」って答えたんですけど、へえ、そういうものなんだなあって思いました(笑)
役者をやっていた時から、自分はわりと器用なほうだと思っていたんです。
インプットしてアウトプットするのが普通の人より早いのかなって。
それがアルバイトでも活かされていて、接客業にも役立っていたのかもしれませんね。
わりと自由な性格だって言われます…。
―接客業の経験が多いようですが、もともと社交的な性格だったのでしょうか?
人と接すること自体は苦じゃないですね。でも、すごくインドアだと思います。
アニメ、漫画、ゲームが好きなので、どうしてもインドアなっちゃうんですよね。
でも、インドアのわりに、好奇心の旺盛さだったり、フットワークの軽さだったりはあるんですよ。わりと自由な性格だって言われます。
今回も取材の話をいただいて「すぐに受けます!」って返事をしたんですよ。
声優関係の雑誌インタビューは多いんですけど、タウンワークさんのような声優と関係ないインタビューってはじめてなんです。
きっと、インタビューを依頼しても「しばらく考えます」って人や、「内容を見てから考えてもいいですか?」って人も多いと思うんです。でも、僕は基本的にもらった仕事は、「はい、やります!」みたいな感じで、すぐに返事をしちゃうんですよ。
知らないものや、やったことのないものは、機会があるなら挑戦したいといつも思っています。そういうところが自由だと思われているのかもしれませんね。
今日もやってみたいバイトとしてカフェ店員を希望したんですけど、実はコーヒーもここ数年で飲むようになったんです。
もともと僕は全然コーヒーを飲まなかったんですけど、機会があれば新しいことをしてみたいと思っていたので、3、4年前くらいに初めてスターバックスに行ってコーヒーを飲んでみたんです。そしたら、すごくおいしくて、そこからカフェでコーヒーを購入するようになりました。
最近は、スタジオにもよくエスプレッソマシンが置いてあるんですよ。それを見て、家庭用のエスプレッソマシンも購入したんです。
コーヒーいいなって思いから、カフェ店員もいいなと思いましたね。
―コーヒーは、カフェで飲まれるんですか? それともテイクアウトですか?
持ち帰り専門ですね。スタバでMacBookを広げてお仕事されている方もいらっしゃるじゃないですか?
ああいうのに憧れたりするんですけど、仕事柄なかなかできないですよね…、まだ、発表前の台本をカフェで読むわけにはいかないですから。
あとは人が入れ代わり立ち代わりするので、わりと落ち着かないなというのもあり、基本的にはテイクアウトしています。
なので、カフェの近くにある神社など、落ち着いた場所でゆっくりコーヒーを飲みながらiPadをいじるのが好きですね。
社会の中で働くことが、どういうことかわかった
―カフェの店員さんもそうですが、これまでの接客業の経験から自分の中で変わったことはありますか?
店員さんへの態度が変わりました。やさしくなりましたよ。
忙しく働いている店員さんを見ると、「今、大変なんだろうな」、「もうちょっと待とうかな」ってなりますね。
「お待たせしてすみません」って言われても、「いいよいいよ。大丈夫だよ。今、お昼時だし、お客さんもピークだもんね」みたいな感じになりました。
少しでも接客業を経験した人なら、店員さんの気持ちがわかるんじゃないかなと思います。
―最後に、今これを読んでいる10代、20代の読者の方に一言メッセージをお願いします。
「その経験は力になるよ!」って伝えたいですね。
例えば、接客業をしているといろんな人がいるし、いろんな対応もあるので、いろいろと勉強になります。
僕の場合は、バイトをやっていた頃は大変だなあって思っていたことも多かったんですけど、その経験があったからこそ、社会の中で働くことがどういうことかわかりました。
きっと、バイトを経験したことによって形作られた今の自分ってものがあるはずなので、そう考えていくと、バイトでの経験全てが声優としての生活に活きていると思います。
やっぱり声優としても、経験ってすごく必要だと思うんですよ。
お芝居って技術だけじゃまかなえないものがあるんです。
例えばセリフ一つでも、ものすごくキャリアを重ねた人の一言と、新人の一言って重みが全然違うんですよね。
それって何が違うのかを考えると、もちろん技術もあると思うんですけど、今までの経験や人生の積み重ねだと思うんですよ。
新人の頃の若さとフレッシュさは、年齢や経験を重ねるごとに失われていくんですけど、代わりに得ていくものはある。その辺も経験でカバーしていける役者になりたいですね。
経験って、自分の人生を豊かにさせると思うんです。せっかく好きな仕事をやれているので、楽しく仕事をしつつ、いろんな経験をしつつ、お芝居も深めていけたらいいなって思います。
次回のゲストは野島健児さん。お楽しみに!
阿部敦 Abe Atsushi
1981年3月25日、栃木県生まれ。2010年第4回声優アワード新人男優賞受賞。
主な出演アニメ作品は『とある魔術の禁書目録』(上条当麻/主役)、『バクマン。』
(真城最高/主役)、『亡念のザムド』(竹原アキユキ/主役)など。
2017年10月には劇場版『弱虫ペダル RE:GENERATION』(泉田塔一郎)が公開予定。
現在は山中いのじん役を務める『BORUTO NARUTO NEXT GENERATIONS』が放送中。
撮影:杉江拓哉 ヘアメイク:mayumi 取材:舟崎泉美
撮影地: CAFE&KITCHEN CULTiCO(http://www.cultico.com/)