根岸愛(PASSPO☆)インタビュー「弱みも強みに変えられるのがアイドル」【アイドルシゴト Vol.15】
毎週火曜日に公開している「アイドルシゴト」。この企画は、アイドルたちが普段考えているシゴトのやりがいやシゴト観についてインタビューする連載です。
今回はアメリカンガールズロックグループPASSPO☆のリーダー、根岸愛さんにお話を伺います。
もともとはアイドルになろうとは思っていなかった
――アイドルになったキッカケは?
今の事務所に入ったのは、高校に入ってから東京に遊びに行ったときにスカウトされたのがキッカケです。芸能は中3のときからやりたいと思っていて、いろんな事務所に履歴書を送ったりしたんですけど全然受からなくて。
事務所に入ったばかりの頃は女優さんに憧れていて、アイドルになろうとは思っていませんでした。でも、できることは全部やりたいなと思っていたときに、事務所の中で新人を集めてアイドルユニットを作るっていうお話をいただいて参加することになりました。当時はまさかこんなに本格的にやるなんて思ってませんでした。
――グループを始めたときはどんな気持ちだった?
はじめはグループ内の意識もバラバラだったような気がします。でも私はなんとなくですけど、最初から「PASSPO☆はこの先良くなっていく」って自信がありました。当時はまだAKB48さんが出始めのころで今のように他にアイドルグループは無かったんですけど、私はグループの将来について不安とかは特になくて。それよりも「かわいい服来て歌って踊れるんだ」ってこれからのことにときめいていました。
――グループとしての手ごたえはいつ頃から感じるようになった?
PASSPO☆は落ちる時期とかは特になくて、グループ結成してしばらくしてメジャーデビューもすることもできたし、シングルがオリコンウィークリーチャート1位を獲得できたし、手ごたえばかり感じてました。いつも見ていたTVに自分たちの曲が流れてたりとか、友だちから連絡が来たりして、世界が変わったなって思いました。
体力がついたラーメン屋でのバイト
――バイト経験はある?
高校生になって何かバイトをやりたいと思って、ネットで検索しました。選ぶ基準としてはやっぱり時給が高いことと、接客がしたかったのでホールがやりたかったんです。場所とかも考えて最終的に選んだのが「ニンニクげんこつラーメン」のお店でした。ホール募集の中では時給も良かったし、接客ができていいなって思ったんです。
――女の子だとファミレスとか、そういうバイトに憧れたりしませんでしたか?
かわいい衣装にも憧れてがあったので、やりたいなとは思ったんですけど、やっぱりそういうお店って常に人気で私が探していたときはあんまり募集がなかったんです。
――はじめてのバイトはどうだった?
大変だったけど、楽しい方が大きかったです。仕事に慣れるまでは間違えたらどうしようとか不安があったけど、慣れたら楽しくなりました。普段、自分がお客さんとしてお店に行くときスタッフさんは簡単そうに接客をしているように見えるけど、いざ自分がやってみたら大変だし、緊張もする。間違えちゃったこともあるけど、そこは先輩がフォローしてくれてホッとしましたね。
バイト経験でコミュニケーション力や声量が鍛えられた
――バイトでどんな経験ができました?
私はけっこう人見知りなんですけど、仕事を通して人と関わることが増えて、自分にコミュニケーション能力が備わったなと感じました。そこのお店のメニューはけっこう変わってたり長い商品名が多くて、お客さんに商品を提供するときにそれをちゃんと暗記して全部言えるようにするのは苦労しました。
あと、ものによっては少しキッチンもやりました。『イタめし(炒飯)』を作ってましたね(笑)。
――根岸さんは高校生のときにスカウトされたんですよね、バイトと芸能活動とは両立できた?
ラーメン屋さんでは5ヶ月くらい働きました。バイトし始めてすぐの、高1の頭のときにスカウトされて今の事務所に入ったんです。事務所に入ったからといって最初から仕事が入るわけではないんですけど、たまに芸能の仕事の予定が入ったときにバイトのシフト変更をお願いするのが心苦しかったです。そのときはお店の人が気を利かせてくれて、うまく芸能活動と並行してバイトすることができました。
バイトしてよかったですね。体力もついたし、仕事中声を張らなくちゃいけないから自然と声量が大きくなりました。
――社会に接する機会はそれが初めてだったと思いますが、気持ちに変化はありました?
楽しかったというのが大きくてあんまり苦ではなかったです。でも学校が休みの日にバイトに入ると朝が早いから、タイムカードをちゃんと押せるかハラハラすることもあって、時間はちゃんと守らなくちゃいけないなって思いました。
あとバイトが終わる時間が夜遅くになることもあったので、働いている人っていつもこんなに頑張っているんだって感じる瞬間もありました。
――それまで先生や家族以外の大人と話す機会はあった?
あんまりなかったですね。中学時代はソフトテニス部で部長もやってたんですけど、顧問の先生と話すくらいでした。
苦手なことも個性として強みにできる
――今もPASSPO☆のリーダーをやられていますが、中学時代からみんなをまとめる役目だったんですね。
自分自身ではリーダーとかってあんまり向いているとは思わないんです。見た目とかイメージもあんまりリーダータイプじゃないよねって言われるし、自分でもそう思うんですけど、まとめたりするのは好きなのかも。
テニス部のときも、副部長でもなかった自分がまさか部長になるとは思ってなくて。所属していた部活は大人数だったからまとまらなくて辛かったんですけど、そのときの経験があるからこそ今もPASSPO☆でリーダーがやれているのかもしれません。
――みんなをまとめるコツは?
注意することは必要だと思うんですけど、そのときの言い方が大事だなって思います。ただズバッと言うだけだと伝わらないこともあるので、「こうした方がもっと楽しくなるよ」みたいに相手への伝え方を考えるようになりました。
今のグループのメンバーはみんな個性が強いから、気づいたことはどんどん言ってくれますね。もう7年間もグループとしてやっているから、それぞれ言い方とか受け取り方もちゃんと考えられるようになりました。
――根岸さん自身はどんな個性を出していきたいですか?
個性ってそれまで自分がなにをしてきたかが全部大切で、得意なものだけじゃなくて苦手なものだって個性だし、弱みも強みに変えられるのがアイドルだと思っています。
私もゲームが好きな普通の女の子だった経験から、ゲームが好きな人の気持ちに共感したり、共感してくれたりする人もいます。無理に新しいものを作ろうとするんじゃなくて、もともと自分が持っている些細なものを伸ばしていくのが大切だと思います。
全員が信じて勝ち取ったオリコン1位
――リーダーとして日々、意識していることは?
客観的に見ることですね。グループにいるとみんなの意見に寄ってしまいがちなんですけど、そればかり受け入れていると自分の色ってなくなっちゃうと思うんで、外の意見もちゃんとくみ取れるようになっていかないとだめだなって思います。
最初は全然まとまってなかったですね。それぞれ何が得意なのかも見つけられてなかったです。でもそれって自分よりも客観的に見られる他人の方が分かったりするじゃないですか。だからみんなで日々言い合っていくなかで見つけていきました。
――グループがよりまとまったのは?
1回目のTIF(東京アイドルフェスティバル)ですね。全員が絶対に成功させるという、ひとつの目標に向かって頑張れました。こんなに頑張ったら結果はついてくるんだなって実感もしたし、PASSPO☆のなかでの分岐点のひとつではありましたね。
他にも『少女飛行』をリリースしたときも「メジャーデビューするタイミングだから1位を取りたい!」という気持ちがすごく強かったんですが、その気持ちがパッセンジャー(PASSPO☆のファンの総称)にも伝わって1位を獲ることができて、強く想うとそれはちゃんと伝わるんだなって感じました。今思い出しても感動しちゃうくらいですね。
――いままでに危機はありました?
メジャーデビューまではずっと上り調子だったけど、その後うまくいかなくて挫折で心が折れそうになった時期もありました。今は音楽の方向性を『アメリカンガールズロック』にちゃんと決めてから徐々に上がってきて安定してきました。これまで失敗してきたことはムダではなくて、今に活かされてるからよかったなって思います。
――最後に、7年間第一線でアイドル活動をされている根岸さん流の、夢を掴むコツを教えてください。
何が急にブームになるかわからない時代だし、昔良いなって思われていたものと今良いなって思われるものも変化していると思います。その中で、「今はコレが流行りだからコレをしよう」みたいなことをやっていたらいつまでたっても流れに乗れないと思うので、自分たちに一番向いているアメリカンガールズロックっていうジャンルを、それがブームになるまでずっとやり続けようと思っています。
「PASSPO☆ってなにやってるの?」って聞かれたら「アメリカンガールズロックだよ」ってすぐわかってもらえるぐらいまでの個性を持たないと、これだけ多くのアイドルがいる中では色が出せないなと思います。同じことをやり続けるのって、大変だけど大事だなって思いますね。
――歌とダンスに加えて自らバンド演奏にまでチャレンジするPASSPO☆の活動がこれからも楽しみですね。ありがとうございました。
企画・編集:SADD 取材・文:永山あるみ(@ayutama_xoxo)
撮影:八木虎造