カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」花火大会スタッフバイト編
我が地元は西端と東端に若干人が住む地域があり、その間に無人の荒野が広がっていることでおなじみだが、無人と思われていた秘境にも人知れず暮らす民がいるように、私はその荒野で生まれ、今も荒野に住んでいる。
先日、その荒野で何を思ったのか、某人気男性アイドルグループの花火イベントが敢行された。
それを聞いた民の者は軒並み「大変なことになる」と慄き、一心不乱に天に祈りを捧げたりしていたのだが、やはり大量の帰宅難民が発生して駅が大変なことになったらしい。
だが幸い事件や怪我人などは発生しなかったようなので、天への祈りも無駄ではなかった。
このニュースはSNSではちょっとした炎上案件となり、トレンドに我が最寄り駅名が挙がるという、それこそ事件が起こっていたのだが、私よりさらにイベント会場に近い荒野に住む親は「いい花火が見れた」と言っていたので、結局現地にとっては良いイベントだったのだろう。
親曰く「1万人はきていた」らしく、この時点で町の全人口を越えてしまっているのだが、人が大量に来たことにより現地の店などは売上が上がったのではないかと思われる。
しかし私の記憶するかぎり、あの周辺には「店」というものが存在しなかったような気がする、むしろ自分が出向いて凍らせたペットボトルでも売れば良かったのだ、またしてもビジネスチャンスを逃した。
だが、このイベントにより現地に 大量の「雇用」が発生したのは確かだろう。
むしろ周辺に店がないことにより、イベント会場内で飲食物などの物販が行われ、そのための人員もかなり必要だっただろうし、何より人口越えの人間が来るのだから、交通整理や誘導のための人間も相当数用意されたはずだ。
このイベントだけでなく、大体のイベントにはスポットの雇用が発生する。
そんなわけで今回は「花火大会スタッフアルバイト」だ。
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平素イベント事には無縁の田舎でも「花火大会」だけは行われることが多く、私の地元にも花火大会があり、その日だけは荒野に潜伏していた人間が現れるので、それを誘導する人間も現れる。
また、花火会場には露店が並び、設置されたステージではイベントが行われ、さらに何らかの課金をした人間だけが座れる特別席などが置かれている。
それらの花火会場の設営と撤去を行うのが花火スタッフアルバイトだ。
また、会場で飲食販売やうちわを配布したり、有料席のもぎりをしたりもするようだ、ついでに課金席に無課金者が入り込まないよう注意もしなければならない。
しかし、有料席担当になれば、いい場所で花火が鑑賞できるかもしれない、というメリットがある。
仕事中だが視界に花火が入ってしまうのはノーカンだろう、むしろ花火の間ずっと目を閉じている方が仕事放棄だ。
何せ短期間のバイトなので、業務内容はどれも単純であり、特に経験やスキルがなくても問題はない。
ただ、イベントで一番大事なのは「ノー事故」である、交通誘導に関しては事前研修が行われることもあるらしい。
だが、高度な誘導をしなければいけないというわけでもない。
私が先日行ったイベントの駐車場には、老誘導員が立っており、一瞬大丈夫かと思ったが、すぐにトランシーバーを巧みに操りながら、別駐車場の老と連携をとって迅速正確に車を誘導しはじめたのだがこれは明らかに「今日がはじめての動き」ではない。
1日のみのスポットバイトに、このようなスタイリッシュ誘導アクションを求めたりはしない。
高度な誘導はスキル持ちがやることであり、道中や会場内に立ち「押さないでください」や「止まらないでおすすみください」など、歩行者に「声掛け」をするのが主な仕事だそうだ。
人間がそこに立っていて、声をかけてくるだけで、人間の動きは大きく変わる、もしそれが三角コーンを置いているだけだったら、花火会場は無法地帯と化し、花火以外の炎に包まれるだろう、非常に重要な仕事である。
だが、とにかく声を出しておけばよいというわけではない、明らかに車が来ているのに「止まらずにお進みください」と元気な声で言ってしまったら、自我がない人間は本当に止まらずお進みしてしまうと思う。
状況を見て声掛けをすることが大事であり、また例え1日だけのバイトでもお客はスタッフを詳しい人と思って質問してくることもあるので、イベント会場の配置などは把握しておく必要がある。
花火スタッフバイトの利点だが、「マンスリー耐久花火大会」など、特殊なイベントでなければ、最短1日だけで終了する、という点ではないかと思う。
長期的に働いてまとまったバイト代が欲しい、という人にはお勧めできないが、そういう人でも空いた日に花火バイトを入れることもできる。
アルバイトを選ぶ時、自分に務まる仕事なのか、職場の人間と上手くやっていけるのか、という心配は常にあると思うし、心配し過ぎて応募できないまま悠久の時を経たという人もいるだろう。
その点、花火大会スタッフであれば、そこで何が起こっても、その場限りのことなので、長期バイトよりも気軽に申し込めるのではないだろうか。
ただし、田舎の場合、その場限りと思っていても、普通に地元のイオソで再会することもある。
気軽に応募するのは良いが、どうせ1日だけと思って適当に仕事をしてはいけない、田舎は悪評も広がりやすいのだ。
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