大西亜玖璃インタビュー『バイトは自分の性格を知るきっかけにもなるし、人間関係を学ぶ場にもなる』
2017年から声優として活動を始め、今年3月にはアーティストとしてもデビューした大西亜玖璃さん。高校卒業後、養成所に通いながら夢を追いかけていた時期の、貴重なアルバイト経験についてインタビュー。さらに、8月4日にリリースされる新曲の制作エピソードも聞きました。
今までとは違うテイストの新曲は、挑戦しつつ自分らしく歌えた
――2nd Single「Elder flower/初恋カラーズ」ですが、全くテイストの違う曲が揃いましたね。
「Elder flower」は、今までに挑戦したことのないカッコイイ楽曲なので、最初に聴いた時は“これを歌うんだ!”という驚きがありましたが、新しい事に挑戦する機会をいただけて嬉しいなと思いました。
――レコーディングはいかがでしたか?
最初に聴いた時の印象が強かったので“楽曲のイメージ通りに歌わなきゃ”という思いが強くて悩みました。でも、TVアニメ『精霊幻想紀』のエンディング曲なので、作品を読むことで世界観を理解しやすくなりました。それと、実際に歌ってみるとキーがわりと自分に合っていたので、練習は必要でしたが、自分らしさも大切にしながら歌うことが出来ました。
――まったく声質の違う、掛け合いのようなハモりも印象的でした。
レコーディングも別録りをして色々な声を試しました。ウィスパーな感じで歌うのが初めてだったので、そこはなるべく言葉を潰さないように意識して歌いました。
――一方「初恋カラーズ」は可愛らしい楽曲ですね。
デビュー曲の「本日は晴天なり」の雰囲気にも似ていて、全体的に少女マンガみたいな可愛らしい雰囲気の曲です。想いが色で表現されているので、イメージも膨らませやすかったです。
――今作は2nd Singleとなりますが、デビューの時と向き合い方は変わりましたか?
デビュー時は、初めての経験ばかりだったので不安でした。でも、応援してくれるみなさんから“曲に励まされた”とか“救われた”といった想像を上回る感想をいただけたことで励まされました。2枚目を出せることが嬉しいですし、楽しみながら歌っていけたらと思っています。
歌は何十年経っても存在し続けるものだから、思いを込めて長く歌っていきたい
――歌詞に関して、「Elder flower」で特に共感した部分があれば教えて下さい。
心の強さや、人との心の距離感などが描かれているのですが、《一人じゃないから》《そばにいる》など、自然とファンの方たちの顔が浮かんでくるようなフレーズがたくさん散りばめられていると感じました。ずっと一緒にいられたらという意味合いもありますし、歌は何十年経っても存在し続けるものなので、思いを込めて長く歌っていきたいと思います。
――歌詞には《強がり》という言葉が出てきますが、大西さんご自身に当てはまりますか?
思ったことはストレートに言葉にしてしまうタイプなので、強がりではないと思います。ただ、こういうインタビューや喜怒哀楽を伝えるのは、あまり得意ではないかもしれないです。歌詞のワードでいうと《不器用》が当てはまる気がしますね(笑)。
――感情という点で、気持ちが沈んだり悲しい時はどうしていますか?
発散したい時は、レコーディングするかのような勢いで家で歌っています(笑)。普段から独り言も多いので、隣家の人には“また騒いでるぞ”と思われているかもしれません(笑)。特に「Elder flower」みたいな曲は、友達とカラオケに行ってもチョイスしないようなジャンルなので一人の時に思いっきり歌います(笑)。
――選ばないというのは?
カッコイイ曲はキメないといけないので、さらけ出している感じがちょっと照れてしまうんです。私の成長を見守ってくださっているファンの方たちの前でだけは思い切り歌えるので、いつかステージで披露出来たらいいなと思っています!
養成所の学費を貯めるために、お惣菜店やイタリアンレストランで働きました
――では、ここからはバイト経験について伺いたいと思います。
初めてのバイトは、高校2年の時に兄弟と一緒に年賀状の仕分けをしました。1人で黙々と作業をするのは好きなので、指サックをして淡々とやっていました(笑)。慣れてくると作業も早くなってくるので、頭の中で好きな曲を流しながら“曲が終わるまでに、この番地まで終わらせるぞ!”とか、自分だけのノルマを決めて楽しみながら出来ましたね(笑)。
――バイト代の使い道は憶えていますか?
最初の郵便局のバイト代はお小遣いとして使いました。高校3年生からは、学校を卒業したら、お芝居の勉強をするために東京の養成所に行こうと決めていたので、親に頼らなくてすむように、養成所の学費や、移動の新幹線代のために貯金をしていました。この時はお惣菜の店、高校を卒業した後は約1年間、養成所に通いながら地元のイタリアンレストランで働きました。
――高校生の時に、惣菜店を選んだのは?
1人で飛び込む勇気がなかったので、友達の働いていたバイト先を紹介してもらいました。週に2日くらい行って、調理場で仕込み用の野菜を切ったり、レジ対応、掃除まで基本的には一人でやっていました。最初の頃は、野菜を切るのが遅くて掃除まで間に合わないとか時間配分が大変でしたけど徐々に慣れていきました。
接客を通して、言われる前に自分で考えて行動することを学べた
――高校卒業後に、イタリアンレストランにバイト先を変えたのは理由があったのでしょうか?
お金を貯めることが目的だったので時給を優先して選びました(笑)。名古屋駅にあったお店で、本格的なレストランだったので指導も厳しかったですね。
――ホール担当ですか?
はい。昼はコース料理のみだったんですけど、お客さんの食事のスピードを見ながら料理を提供するのがメインの仕事でした。1つ前の料理がなくなったら、すぐに次の料理が出せるように、調理場に料理を作るタイミングを伝える役割もあったので、覚えないとけないことがたくさんありました。
たとえば、数名で来たお客さんが、違うパスタを頼んだ場合、麺の種類によっても茹で時間が違うので、それを憶えて時間のかかるものは早めに調理場にオーダーを出したりするんです。
――細かい対応が求められると。
お客さんによっても、子ども連れの方は、子どもが泣いてしまうと途中でお帰りになる方も多いので、最後までお食事できるようになるべく早めに料理を出すとか、女性同士で来店されるお客様は会話に夢中になることが多いので、少しゆっくり料理を提供しようとか。そういった細かな気遣いは、先輩に教えてもらいつつ働きながら気づくことも多かったです。
――視野が広くなりそうですね。
そうかもしれないです。テーブルごとに担当が決まっていて、他のセクションの人が大変そうだったら手助けをすることもありました。接客も、オーダー時の会話を聞いて料理のシェアをしそうだったら、先に「お取り分けしましょうか?」と声がけをしたりするなど、言われる前に自分で考えて動くように意識するようになりました。
バイトで大変な時も“夢を叶えるため”という思いがあるから頑張れた
――一緒に働いていたスタッフさんたちとのエピソードがあれば教えて下さい。
女性の先輩がめちゃめちゃ厳しくて。“そんなに怒るっ!?”っていうくらい強く言われることも多かったです(苦笑)。なかなか認めてもらえなくて、理不尽なことを言われて悔しい思いをしたこともあります。
――それでもバイト先を変えようと思わなかったのは?
養成所に行くために必要なバイトだったので、続けていたほうが時給が上がることを考えると“絶対に辞めない!”って(笑)。
――あくまで“夢のため”という目標がブレなかったら続けられたんですね。
そうですね。4〜5ヵ月は先輩もめちゃくちゃ怖くて仕事を覚えるのも大変でした。でも、コツコツと経験を重ねることで仕事が出来るようになっていって、最終的にはその先輩とも仲良くなりました。1年後に上京する時は、寂しいと言ってもらえたので良かったですね。
今思うと、私は人に頼らずなんでも1人でやってしまいがちなので、それが可愛くなかったのかもしれないです(笑)。自分から仕事のやり方を聞きに行くとか、コミュニケーションをとっていれば違ったのかなと。バイトは人間関係を学ぶ場にもなりました。
バイトはお金の大切さだけでなく、人へ感謝する気持ちも育める
――上京後もバイトはされていますか?
上京してすぐは仕事もなかったですし、オーディションのタイミングも全然分からないような状態だったので、すぐに働ける牛丼チェーン店でバイトしました。作業量の多さは大変でしたけど、接客の経験は身についていたので役に立ちました。
――では、改めてバイトを通して感じたことがあれば教えて下さい。
色々な経験をしたことで、その分得られたことも多いと思います。それと、お金を稼ぐ大変さを知れたことも、親にも感謝が出来るようになったので良かったなと思っています。
大西亜玖璃(おおにし・あぐり)
1997年5月2日生まれ。愛知県出身。2017年に声優デビュー。 「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」で上原歩夢役としてメインキャラクター、TVアニメ「まえせつ!」で主人公を担当するなど声優として活躍中。2021年3月には「本日は晴天なり」でソロアーティストデビューを果たす。2nd Single「Elder flower/初恋カラーズ」は8月4日にリリース。「Elder flower」はTVアニメ『精霊幻想記』のエンディングテーマ曲になっている。
◆大西亜玖璃 音楽情報サイト:https://columbia.jp/onishiaguri/
◆大西亜玖璃 Official Twitter:@aguri_onishi
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影・山内洋枝(PROGRESS-M) 取材・文:原 千夏