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2022年04月14日

大学に行く意味って?やりたいことがなくても大学に行く価値

大学に行く意味 タウンワークマガジン townworkやりたいこと、勉強したいことも特にない…という人や、コロナ禍でオンライン授業がメインになり、なんとなくモチベーションが上がらない。大学に入ったものの、やりたいことや学びたいことが特にない。そんなとき「大学に行く意味ってなんだろう…」と考えたことはありませんか? 東京大学大学院・慶應義塾大学教授の鈴木寛さんに大学に行く意味を聞いてみました。

大学に行く意味は「未来を生き抜く知恵」を身につけること

――鈴木さんは大学に行く意味をどう考えていますか?

大学に行く意味は、これからの人生で未知なるものに遭遇した際、動じずに乗り越える方法を学べることだと考えています。コロナを始め、天災や国家間における争い、大企業の破綻など、これまで予想もしていなかったことが次々と起こっています。専門家の見解では、この先100年は、より想定外な出来事が起こるであろうと言われています。そのときに、未知のものと向き合い、真相に迫れる知恵をつけておけば、想定外な出来事にも動じず、リスクをチャンスに変えられます。その未知なるものとの向き合い方や真相の究め(きわめ)方を大学では学べるのです。

――真相の究め方を大学でどう学ぶのでしょうか?

学問には「研究対象」と「研究方法」の2つがあり、私が大学で学んでほしいのは「研究方法」。本質を知るために過去の研究を教科書で読んだり、実践したりして、真相を究める方法です。この方法論を学べば、生き抜く知恵として今後、様々なシーンで応用ができます。「学びとは学び方を学ぶこと」です。大学は学び方を学ぶ力を養える場所なのです。

 

勉強したいことが曖昧な人はつまみ食い感覚で学ぶのもいい

――そもそも、やりたいことや勉強したいことがないという人でも、大学には行く意味があると思いますか?

私も学生からそのような相談を受けることは多々あります。でも、そんな学生こそ大学に行って、 “つまみ食い”をしてほしい。
少しでも興味のある講義に顔を出したり、サークルのホームぺージをのぞいてみたり、大学の図書館をぶらぶらしたり。つまり、自分の世界から半歩出て、これまで知らなかったことを知ってほしいのです。人は食わず嫌いをして視野を狭めてしまい、やりたいこと・勉強したいことが見つかりません。すべて食べきらなくもいいから、つまみ食い程度の感覚で行動してみてください。私自身も大学時代に軽い気持ちで観劇をしたら、それまで苦手だった演劇にどっぷりハマった経験があるので。つまみ食いで視野を広げれば、そこからやりたいことや興味のあることが見つかるかもしれません。そのように、大学は、やりたいこと・勉強したいことを見つける時間でもあるのです。

 

大学は純粋な仲間を見つける最後のチャンス

――視野を広げる以外に大学で得られることはなんでしょうか。

大学はこの先の人生でつながれる仲間と出会う場所です。人と人とのつながりは人間を幸福にすると言われていますが、私の経験から言うと大学が利害関係のない友人や仲間をつくる最後のチャンスかもしれません。社会人になると、上下関係や利害関係が発生してしまい純粋な仲間を作りにくくなる可能性があります。単位を取るための苦しみ、そして進級できた喜びなど共苦共楽を体験した仲間は一生の財産になります。

 

コロナ禍でオンライン化した大学では、より広い価値観を知る機会になる

――コロナ禍でオンライン講義が中心となり、なかなか友達もできにくく、行く意味があるのかと考えている学生も多いと思います。オンライン化している大学に行くメリットはあると思いますか?

そのように考えている学生も多いでしょう。
でも、大学は高校時代には知ることができなかった多様性を学べる場でもあります。
まず、大学のシラバス(講義概要)を見てください。世の中にはこんなに学問があるのかと驚くはずです。そして、自分がまったく興味のない学問に、興味を持ち学ぶ他の学生がいることを知ってください。これが多様性です。「この世は自分の世界だけではない」と知り、視野が広がるのは、大学へ行く大きな意味だと考えています。
また、オンライン授業のメリットもあります。オンライン講義は全員が教室の一番前に座っている状態です。大教室の場合、後ろの席だと集中力が切れることもあるでしょう。また、数百人がいる講義だと、なかなか質問がしにくいもの。しかし、オンラインだと手軽にチャットができるため、疑問をすぐに質問できます。
日本全国はもとより、世界各国からゲストスピーカーを呼び、貴重な話を聞くこともできます。私が教えている中には、地方の農家でインターンシップをしながら東京の大学でオンライン講義を受けている学生がいたりと、オンライン化が進んだことで学ぶ側の自由度が高くなったと感じます。
とはいえ、オンライン化により友達をつくりにくい環境であることも事実。私からのアドバイスとしては、オンラインでもサークルやイベントなどには積極的に顔を出してみてください。実際に足を運ぶよりも、オンラインのほうが気軽に参加できるという所もあると思いますよ。

 

大学でより多くの「未知との遭遇」を体験してください

――現在、大学に進学するか迷っている高校生や、大学に進学したけれど、行く意味が見いだせない大学生に鈴木さんが伝えたいことがあれば教えてください。

まず、大学に進学するか悩んでいる高校生は、できるのであればぜひ、大学に進学してほしいです。高校だと基本的に通学時間1時間前後の範囲に住む人たちの集まりかと思います。しかし、大学だと日本全国から様々なバックグラウンドを持つ人たちが集まり、あなたの視野を広げてくれる仲間と出会うことができるでしょう。大学にはさまざまな専門家が集まり小世界が広がっています。その多様性を知ることが何よりも大切です。知らないことは0であり、知っていることは1です。0と1では無限大に違います。ぜひ、大学で1を知ってください。

そして、現在、大学に行く意味を見出せない大学生は、感染予防をしながら可能な範囲でイベントやサークルに顔を出して、小さな縁を見逃さず仲間を作ってほしいです。仲間だけでなく、少しでも気になった講義があればとってみたり、先生と話したり、ゲストスピーカーの特別授業を受けたりと食わず嫌いをせずに積極的に学びの場に参加してください。そこでより多くの未知との遭遇をして学び方を学んでほしいのです。

 

■プロフィール
鈴木寛
(すずき・かん)東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。勤務の傍ら、大学生などを中心とした私塾「すずかんゼミ」を主宰。文部科学副大臣、文部科学大臣補佐官を務めた後も大学入学制度改革に尽力するなど、教育の現場で学生たちと関わっている。東京大学大学院教授、慶應義塾大学教授。

取材・文:中屋麻依子

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