有給休暇が残ったまま退職するとどうなる?退職時に有給消化する方法
退職前になって残りの有給休暇を使いきっていいものか迷う人もいますよね。ここでは、有給休暇を残したまま退職するとどうなるか、退職前に有給消化する際に気を付けることなどを紹介します。
【目次】
有給休暇は退職すると消滅する
有給休暇が残ったまま退職すると、その時点で残っている有給休暇は消滅してしまいます。有給の権利は、パートやアルバイトなど雇用形態に関わらず一定期間雇用されている従業員であれば付与されるので、有給を有効に利用するには在職中に計画的に取得していくことが必要です。
急な退職でも残った有給休暇を使う権利はある
雇用主は、労働基準法に則り、原則は従業員からの有給申請を拒否することはできません。急な退職でも、業務に支障のない取得の相談をされることもありますが、基本は退職日までに残った有給休暇の取得を求められたら応じる必要があります。
退職時にスムーズに有給消化する方法
有給を取得できる条件は、「半年以上継続して勤務している」「所定労働日の8割以上勤務している」の2つです。週1日のパートやアルバイトも権利がありますが、一方的な権利の主張はもめる原因になります。退職前にまとめて有給消化する場合は特に、早めに上司に伝え、引継ぎや挨拶をしっかり済ませておく配慮が必要です。
有給消化する前に、残日数を確認する
有給の付与日数は、勤務日数や入社以降の期間によって異なります。フルタイムでない人も多いパートやアルバイトは、人によって勤務日数(所定労働日数)が異なります。有給消化をする前に、自分に残っている有給日数と、有給の有効期限を確認しましょう。その上で、引継ぎ期間や新しい転職先の入社日などを考慮して退職希望日を申し出るとスムーズです。
>アルバイト・パートも有給休暇は取れる。発生条件、日数、手当の計算方法を解説
有給消化したい1か月前に意思を伝える
退職後の後任のスタッフなどの調整や引継ぎを考慮すると、退職前に有給を使い始めたい1か月前を目途に退職の意思を伝えるのが良いでしょう。そこで、退職日前にまとめて有給消化をするのか、最終出社日前に少しずつ消化していくのか、退職までのスケジュールを相談していくと円満に有給も使えて退職もしやすくなります。
退職前の有給消化を上司に願い出る時の言い方は、「〇日から○日まで有給休暇を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」等、意志を伝えつつ上司の判断を仰ぐ聞き方にするといいでしょう。
引継ぎスケジュールを確認・共有しておく
退職日や最終出社日が確定したら、上司と業務の引継ぎのスケジュールも確認しておきます。必要であればマニュアルを作成しておき、後任スタッフにも事前に声を掛け、引継ぎに必要な日程をおさえておきましょう。
また、使用したロッカーやデスクの荷物は有給消化に入る前に片付けておき、会社から借りていた物も最終出社日に返却するようにしましょう。
退職時に有給消化できないと言われた時の対処法
有給休暇は労働者に与えられた権利ですが、急な退職などでも会社に迷惑をかけずに、かつ退職前に有給休暇を取得する権利を行使したいという場合には、以下の方法で会社に相談してみるといいでしょう。
退職日を後ろにできるかを相談する
会社は従業員の有給の取得に対し、例外的に会社の運営に影響が出る繁忙期などについては、取得時期をずらす時季変更権があります。ですが、退職直前の有給取得は、退職日までの期間が短く取得をずらす日にちが残されていないため、会社側が時季変更権を行使できないケースがあります。有給消化も時季変更権の行使も難しい場合、お互いに合意できるなら退職日を後ろに倒し、繁忙期を過ぎてから有給を使って退職するのもひとつの方法です。
有給の買い取りを相談する
有給休暇は、法律上あくまでも働いている人の休む権利であるため、退職時の有給休暇の買い取り義務は企業や店舗にはありません。ただ、就業規則に退職前の有給休暇に関して規定を設けている企業や、労使協定で合意された場合に買い取りに応じてもらえることもあるので、相談してみる価値はあるでしょう。
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
※記事公開:2022年11月21日、更新履歴:2024年2月9日、2024年8月9日