【接客業】正しいクレーム対応法。お客さまの怒りを鎮める対応とは
コンビニ、アパレルショップ、塾講師など、バイトが最前線に立つ職場では、バイトが顧客のクレームを受けることがあります。大きな問題については、社員や店長、上司に対応を依頼しますが、1次対応はクレームを受けた人がせざるを得ません。そう聞くと心が萎えそうですが、大丈夫。クレーム対応には、うまくこなすポイントがあるのです。今回は、バイトのためのクレーム対応のポイントやコツについてお伝えします。
【目次】
正しいクレーム対処の手順
クレームをつけるということは、何かに対して怒っている=感情が高ぶっている状態と言えます。対応の基本は、まずその怒りを鎮めること。ポイントを見ていきましょう。
① まず謝罪。そしてお客様の話をよく聞き、理解する
クレームを受けたら、まずは仕事の手を止めて、不快な思いをさせてしまったことに対してのみ謝ります。そして、お客さまが言うことを反復しながら、話を聞いていきましょう。いわゆる「オウム返し」です。
相手にとっては「きちんと話を聞いてくれている」というプラスの印象につながりますし、自分にとってもクレームの内容が把握しやすくなるというメリットがあります。
クレームを受けているときは、途中で言葉を挟まず、相槌や間をとりながら丁寧に話を聞きます。相手は何かに怒っているので、表情や姿勢にも気をつけ、必要であればメモを取りながら聞くようにしましょう。
□話を聞くときのポイント
(1)あいづち
クレームを受けているときは、あいづちがとても重要になります。適度なあいづちを打つことで、相手は「話を聞いてもらえている」という気持ちになります。ただし、あいづちを入れすぎるのも逆効果です。すべてに返すのではなく、半分以下に止めるようにしておきましょう。
・あいづちの例
─「はい」
─「ええ」
─「ごもっともです」など。
(2)表情・姿勢
クレームを受けているときは表情も大切です。無表情や、ヘラヘラ笑ったり、キョロキョロ目が泳いだりしていると二次クレームにもつながります。眉間にシワをよせたりせず、やわらかく、そして神妙な顔付きで聞くようにしましょう。また、相手の目を見すぎるのも怖い印象を与えてしまいますので、適度に視線を外しながら聞くようにしましょう。
話を聞いているときの姿勢も大切です。うつむいたり猫背にならないよう、きちんと背筋を伸ばして両足に重心をおいて立ちましょう。
・表情
─神妙な表情で
─眉間にシワを寄せない
─キョロキョロ目を泳がせない
─相手の目を見すぎない
・姿勢
─背筋を伸ばして猫背にならないように
─うつむかない
─きちんと両足に重心を乗せて立つ
─後ろ手を組まない
(3)必要に応じてメモを取る
電話の場合も対面の場合も、重要なこと、必要と思われることはメモを取りましょう。特に、お客さまの顔が見えない電話でのメモは、話の内容を整理する上でも役立ちます。もちろん、責任者に報告するときも、メモがあるとあやふやにならず、正確に状況を伝えられます。
メモを取るときは、事実とお客様の心情の部分をそれぞれ整理しておくといいでしょう。
・事実の部分
─食べものに異物が入っていた
─提供した料理が注文と違っていた
─商品が壊れていた など
・お客様の心情の部分
─気分が悪かった
─腹が立った
─イライラした
─使えなくて困った など
② お客様の立場になってみて考え、お詫びする
次に、お客様の心情を理解し、お詫びの言葉を述べます。ただ単に「すみません」「申し訳ありません」だけではなく、お客様の立場になってみて心情を理解し、謝ることが大切です。
□言葉遣いに気をつけ、冷静に対応する
お客さまが怒っているからこそ心情を察し、言葉遣いには気をつけて冷静な対応を心がけましょう。売り言葉に買い言葉ではありませんが、お客さまの言動に感情的に言い返すのは、火に油を注ぐようなものです。
また、早口になったり、ボソボソした話し方になったりしないように気をつけましょう。話が聞き取りにくいと、さらに相手をイライラさせてしまいます。呼吸を整え、落ち着いて向き合いましょう。
□不快な思いをさせたことのみを謝る
クレーム内容を把握し、不快な思いをさせたことに関しては「申し訳ありませんでした」と、お詫びの言葉を伝えましょう。しかし、いわれたことすべてを受け入れて謝る必要はありません。
こちらに非があることとそうでないことを、しっかり分けて対処するためにも、1次対応では不快な思いをさせたことのみ謝罪するようにしましょう。
・飲食店スタッフの場合
「お急ぎのところ、大変お待たせしてしまいまして、申し訳ございませんでした」
・販売スタッフの場合
「商品に破損があり、ご不便をおかけいたしました。大変申し訳ございませんでした」
③ 誠実に対応する。必要ならば、責任者を呼ぶ
□すぐに対応できる場合
お客さまの要望に対して、その場ですぐに対応出来る場合は最優先で対処します。作り直しや取り寄せが必要など、その場ですぐに対応できない場合は、必要な時間を調べ、お客様に伝えるようにしましょう。
また、その場で解決できたとしても、店長や売り場の責任者に必ず報告するようにしましょう。
・飲食店スタッフの場合
「すぐに作り直しますので、10分ほどお待ちいただくことは可能でしょうか?」
・販売スタッフの場合
「すぐに他の商品と交換いたします。今お持ちしますので、お時間いただいてもよろしいでしょうか?」
□責任者を呼ぶ必要がある場合
謝罪してもお客さまが怒っている場合や、すぐに対応ができず時間がかかる場合、解決策がわからない場合は、無理して解決しようとせずに、店長など責任者を呼んできましょう。
店長など、責任者に伝える際には、お客さまが同じ説明を繰り返すことが無いように、要点を絞って事実や経緯と、お客さまの心情の部分を整理して伝えましょう。店長が対応しているときは、少し後ろに下がって、事実に相違ないかを黙って聞きましょう。
問題がこじれる! してはいけないNG対応
頑張って1次対応したものの、つい口から出た言葉で問題がこじれてしまうことがあります。そんな事態を避けるためのNG対応の例を覚えておきましょう。
NGその① : お客さまの怒りを増幅させる不適切な言動をする
どんなクレームであっても、お客さまの怒りを増すような言動は、慎む必要があります。もしかしたら、大切な顧客を失うことになるかもしれません。
では具体的に、どんな言葉に気をつけたら良いのでしょうか。ピックアップしてご紹介します。
お客さまが話をしたいのは、個人ではなく、会社やお店に対してです。担当が誰であるかは会社や店の都合であり、相手には関係のないこと。たとえ担当ではなくても、話をきちんと聞いたり、担当者にすぐつないだりしましょう。
お客さまの不注意を指摘するような言い方もNG。自分たちにとっては当たり前のことを、相手も同じように把握しているとは限りません。たとえ書いてあったとしても、誰だって見落としてしまうことはあるものです。
決まり事は、会社やお店の都合であり、相手には関係のないこと。「客より会社の都合優先なのか」というさらなる怒りにつながりかねません。
ただ、カラオケの利用時間など、お客さまに守っていただきたい決まりやルールがあることも事実です。そういったクレームを受けたら、速やかに社員や店長につなぎ、判断を仰ぐようにしましょう。
この言い方は、クレーム対応ではなくても使わないほうが良いでしょう。「あなたは普通ではない」と言っていることと同じになってしまうからです。もしも自分が普通ではないといわれたら、嫌な気持ちになるのではないでしょうか。
こちら側の非を認めず、相手に責任を押しつけるような逆切れともとれる言動もNGです。もちろん、クレーム内容が悪意のある言いがかりということもあるでしょう。そんなときこそ冷静にお客さまの話を聞き、状況を判断して対処することが大切です。
NGその② : お客さまの間違いを指摘する
お客さまの間違いや勘違いでクレームが発生していたとしても、そのことをストレートに指摘すると、相手はより逆上してしまう場合があります。
間違いや勘違いは誰にでもあることです。「表現がわかりにくくて申し訳ありませんでした」「説明不足で失礼いたしました」など、相手には非がないという姿勢で臨めば、クレームが感謝につながることもあります。
NGその③ : お客さまの話を遮る
話を聞いているうちに「いや、そうではなくて……」と話を遮りたくなることもありますが、そこはぐっと我慢です。誰でも話を遮られると不愉快な気持ちになるもの。言うだけ言えば、お客さまの怒りが収まってくることもあります。
クレームを受ける手順の第一は、お客さまの言い分にしっかり耳を傾けることです。
NGその④ : 「うん」と相づちする
お客さまの話をよく聞く姿勢は大切ですが、「うん」という相づちには、敬意が感じられません。お客さまの心情に寄り添おうとする気持ちが「うん」という相づちとなって出ることもありますが、それを不快に思う人がいることも事実です。
「うん」ではなく「はい」「ええ」と答えることを心がけましょう。
NGその⑤ : たらい回しにする
「こちらの電話番号におかけ直しいただけますか?」など、たらい回しの対応は、お客さまの不快感を増大させます。基本的には受けた自分が対応して、店長など、上司と一緒にその場で解決できるように動いていきましょう。
お客さまが、別の部署や店舗のとのやりとりが必要な場合は、「私から担当者に伝え、すぐにご連絡いたします」と対応すれば、たらい回しにはなりませんし、お客さまも安心感を得られます。
バイトのクレーム対応の実例
最後に、コンビニ、アパレルショップ、塾講師、飲食店のバイトでのクレーム対応の実例をご紹介します。
アパレルショップ店員
<状況>
「買ったばかりの服が、一度の洗濯で色落ちした」と、お客さまが怒って来店。交換ではなく返金してほしいと言う。レシートは持っていない。
お客さま:「捨てちゃったんですけど」
店員:「かしこまりました。交換や返品は店長の対応となっておりますが、あいにく今日は終日外出しております。明日、店長からご連絡させていただきますので、お電話番号を教えていただけますでしょうか」
コンビニエンスストア店員
<状況>
掃除でモップがけをしていたところにお客さまが駆け込んできて、滑って転倒してしまった。そのときは「大丈夫」と言って帰ったが、翌日「捻挫して治療したので、費用を払ってほしい」と来店した。
お客さま:「領収書は、これ。診断書はないんだけど」
店員:(領収書を確認して)「承知いたしました。すぐに店長に確認してまいりますので、少々お待ちください」
塾講師
<状況>
通い始めて3カ月になる子どもの成績が、さっぱり上がらない。期待して高いお金を払ったのにどういうことかと、保護者からクレームが入った。
保護者:「しています」
講師:「わかりました。復習していれば、結果は少しずつ出てくるはずですので、もう少し様子を見ていただけないでしょうか。私どもの方でも、しばらく○○くんのことを気をつけて指導するようにいたします」
飲食店
<状況その1 対応が遅いケース>
お客さまから「お箸をください」を言われたが、注文が立て続いてしまいすっかり忘れてしまったら、クレームが入った。
店員:「お待たせしてしまい誠に申し訳ございません。すぐに持って参ります」
店員:「(箸を持ってきて)大変お待たせ致しました。遅くなりまして申し訳ございませんでした」
<状況その2 不快な対応を指摘されたケース>
接客してたお客さまから突然、笑顔がないとクレームを入れられた。
店員:「不快な気持ちにさせてしまい誠に申し訳ございません。以後、気を付けます」
<状況その3 サービスに対するクレームが発生したケース>
アイスコーヒーを出したときに手がすべってしまい、お客さまのシャツにかかってしまった
お客さま:「怪我はありません」
店員:「すぐにお拭きしますので、少々お待ちくださいませ。」
お客さま:「お願いします」
合わせて店長に報告・相談し、お客様対応をしましょう。
バイトもクレーム対応しなきゃダメなの?
お客さまにとっては社員もバイトも関係なく、目の前にいる人にクレームをつけるのが一般的。バイトもクレーム対応せざるを得ないときがあります。
1次対応はバイトも行う
接客業、販売業、塾講師、コールセンターなど、直接お客さまと接する仕事では、たとえバイトであっても、1次対応を任されることはよくあります。
お客さまにとっては、バイトも社員も関係ありません。そこにいる人が「お店の人」「会社の人」なのです。
そういわれても、バイトの立場でどう対応したら良いのか、不安になる人もいるでしょう。そんな人は、適切な1次対応のために、次のことを心がけましょう。
◆事前に対処法を確認しておく
社員、店長など職場の責任者に、よくあるクレームの内容、クレームを受けたときの対処法を事前に確認しておきましょう。マニュアルがある場合は、必ず目を通しておくことが大事です。
◆自分ひとりで処理しようとしない
バイトが1次対応することはありますが、自分ひとりですべて対応しなければならないというわけではありません。むしろ、自分で勝手に判断すると問題が大きくなるおそれがあります。1次対応で心がけたいことは、クレームの内容と状況の把握です。把握した上で、自分の手に負えないと感じたら、すぐに社員や店長など、適切な対応ができる人に引き継ぐようにしましょう。
クレームが発生する状況
クレームが発生する状況や原因は、いくつかのパターンに分けられます。1次対応で戸惑わないためにも、次の点を覚えておきましょう。
◆パターンその1. 商品の不備や不良
品質の問題、商品の破損や汚れ、部品の不足、異物の混入など、自分たちが扱っている商品に不備や不具合があった場合です。塾やスポーツクラブの指導など、具体的な形を持たないサービスも含まれます。
◆パターンその2. お客さまへの対応の問題
態度が横柄、無愛想、マナーがなっていない、約束を守らないなど、お客さまへの対応に問題がある場合です。さらに、クレームに対して不誠実な対応をとった結果、2次クレームが発生することもあるので、注意が必要です。
◆パターンその3. お客さまの勘違いや言いがかり
お客さまが勘違いして商品を買ってしまった場合や、会社や店側には落ち度がないのに、「そっちのせいで、ひどいことになった」などと理不尽な不満や要求を突きつけられることもあります。あまりにもしつこかったり、度重なったりするケースが、いわゆる「クレーマー」です。
ポイントをつかめば、クレーム対応は怖くない!
できれば受けたくないクレーム。しかし、バイトの現場では、そうも言っていられないことがあります。会社やお店の一員として、対処していきましょう。
お客さまの話をよく聞き、事実関係を把握した上で、謝るべきことは謝り、迅速な対応をすることがポイントです。逃げようとしたり、感情的に対処しようとせず、誠意を持って対応すれば大丈夫。クレーム対応も経験のうち。社会に出たときに必ず役に立つでしょう。