フリーターは、会社の社会保険と国の保険どちらに入るべき?入りたくない場合は?
フリーターとして働く人の場合、会社の社会保険に加入して厚生年金保険料と健康保険料を支払うか、自身で国民年金保険料と国民健康保険料を支払うかのどちらかになるのが基本です。この記事では、社会保険と国民健康保険や国民年金の違いや、それぞれの加入条件のほか、社会保険に入りたくない場合についてなどを解説します。
※この記事では社会保険とは、会社で加入する厚生年金保険と健康保険のことを指します
社会保険、国の保険に加入する人の違いとは
日本は皆保険制度をとっているため、日本国内に在住している人は、何かしらの公的な健康保険と、20歳以上60歳未満の人は国民年金への加入が義務付けられています。会社に雇用されて働く人は、フリーターや正社員など雇用形態に限らず、条件を満たせば会社の社会保険に加入します。会社の社会保険加入の条件に当てはまらない人で配偶者や親などの被扶養者にもならない人は、自身で国民健康保険に入ることになります。
会社で加入する社会保険は、健康保険と厚生年金保険となり、社会保険に加入できない人は国民健康保険と国民年金となります。主に、年収などの条件により、どちらに加入するかが決まります。
社会保険に加入する人
勤務先の従業員数51人以上(厚生年金の被保険者数)で、月収8.8万円以上(年収換算で105.6万円以上)の人は、会社の社会保険に加入となります。これにあたらない場合でも、週の所定労働時間と日数が正社員の3/4以上となる場合は、会社の社会保険に加入となります。
国の保険に加入する人
上記の社会保険加入の要件にあたらない人で配偶者や親の扶養にも入らない人は、自身で国民健康保険に加入することになります。年収130万円以上となり親など家族の健康保険の扶養を外れ、会社の社会保険に加入できなければ国民健康保険に加入します。
また、国民年金には扶養制度がないため、社会保険加入の要件にあたらない20歳以上60歳未満の国内在住者は国民年金の第三号被保険者とならない限り自身で国民年金保険料を支払う必要があります。
年金制度の違い
会社の年金制度(厚生年金保険)と、国民年金保険の違いについて解説します。
厚生年金保険
厚生年金保険は、国民年金と厚生年金の2階建て構造になっており、受給する際に国民年金に厚生年金分が上乗せされます。厚生年金の保険料は給与額に応じて決定され、毎月の給与から天引きされますが、会社との折半となるため、少ない負担でより多くの年金を受給する仕組みです。
国民年金保険
国民年金の保険料は月16,520円(令和5年度)となり、個人で国に支払います。20歳から60歳まで保険料をすべて納めた場合の満額の年金支給額は、令和5年11月現在、79万5千円です。経済状況により国民年金保険料の支払いが困難な場合、状況に応じて保険料納付の猶予や免除の制度がありますが、未納期間によっては、将来受け取る年金額に影響がある場合もあります。
健康保険制度の違い
健康保険は、年収130万円未満であれば親など家族の扶養に入ることができますが、年収130万円以上になると、会社の社会保険に加入して健康保険料を支払うか、自身で国民健康保険料を払うかのどちらかになります。
健康保険(社会保険)
会社で加入する健康保険の保険料は、会社の給与額に応じて保険料が決定され、給与から毎月天引きされます。医療機関を3割負担で受診できるほか、けがや病気で仕事を休んだ際の傷病手当金や出産一時金などが受け取れます。そのほか、人間ドッグの費用補助が受けられる場合もあります。
国民健康保険
国民健康保険は前年の所得により保険料が確定し、6月から翌3月までの10回で1年分の保険料を支払います。社会保険の健康保険と同様、医療機関を3割で受診できますが、傷病手当金や出産一時金の支給がないなど、受けられる保障内容に違いがあります。
保険料の違い
保険料は、会社の社会保険に加入した場合と自身で国に保険料を支払う場合とでは、年間で10万円以上の差があります。これは、社会保険の保険料は会社と従業員で50%ずつ負担する労使折半がとられているため、社会保険に加入した方が自己負担は少なく済みます。
■年収別・社会保険料と国の保険料
年収 | 社会保険料(概算) | 国保・年金保険料 |
106万円 | 150,000円 | 265,240円 |
150万円 | 212,300円 | 308,240円 |
200万円 | 283,000円 | 343,240円 |
※いずれのケースも基礎控除と社会保険料控除のみ、被保険者は40歳未満(介護保険加入なし)
※社会保険料率は、東京都のけんぽ協会のものを使用(10%+18.3%)÷2=14.15%
※国民年金保険料は16,520円(令和5年度)を使用
フリーターは国の保険と社会保険どちらに加入すべき?
社会保険料は会社との折半になるため、社会保険に加入した方が国民健康保険と国民年金を自己負担するよりも保険料は安くなる可能性があります。その上、将来受け取れる年金に厚生年金分が上乗せされたり、国民健康保険にはない出産一時金や傷病手当金の支給など、保障にも違いがあり、会社の社会保険の方が手厚くなる傾向にあります。
フリーターで会社の社会保険に入りたくない場合は、従業員数(厚生年金の被保険者数)51人以上の会社の人は月収8.8万円未満に、それ以下の規模の会社の人は年収130万円未満に抑え、親など家族の健康保険の扶養に入れば健康保険料の負担はなくせます。ただし、国民年金は20歳以上の国内在住者は加入義務があるため、月16,520円(令和5年度)支払う必要があります。
保険料を支払わないとどうなる?
国民年金は支払った月数によって年金の受給額が決まるため、未納のままにしておくと、将来受け取れる年金が少なくなったり、受給できなくなる場合があります。国民健康保険料の滞納が一定期間続くと、医療機関の受診料が全額自己負担になるほか、銀行口座や生命保険などの財産が差し押さえとなる場合もあります。
国民年金と国民健康保険には、所得の減少や失業などにより納付が困難な場合は、申請によって保険料を免除または猶予となる制度があります。支払いが難しい場合は、国民健康保険は自治体に、国民年金は日本年金機構の窓口に相談してみるといいでしょう。
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
記事公開日:2023年12月8日
更新日:2024年8月27日、2024年10月1日