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2024年01月22日

扶養控除・扶養範囲内に押さえたい年収とは?106万、130万、150万の壁で気をつけること【社労士監修】

パートで働く主婦・主夫の中には、配偶者の会社の社会保険や税金の扶養控除を受けられる扶養範囲内で働きたいと考える人も多いと思います。どちらも年収が一定の額を超えると扶養から外れてしまいます。特に、2022年10月から「社会保険の106万円の壁」の対象が拡大し対象になる人が増えました。ここでは、年収いくらまでに抑えると扶養内でいられるかを詳しく解説します。

◆106万円の年収の壁は、2024年10月に改正されます。9月までは現行制度となります。

※ここでは、表現を簡略化するため、便宜上、扶養する人を夫、扶養に入る人を妻として解説します。

扶養内・扶養範囲内とは

パートで働く主婦(夫)に関係する扶養には、会社員などで働く配偶者の健康保険や年金などの「社会保険上の扶養」と、配偶者控除・配偶者特別控除の「税制上の扶養」の2つがあります。パートで扶養内に収めるには、それぞれパート年収の上限基準が設けられています。その年収上限のことを、通称〇〇万円の壁と呼んでいます。

社会保険の扶養とは

社会保険の扶養とは、パート主婦の場合は夫の会社の社会保険の扶養に入ることを指します。扶養に入ることで、夫の負担も変わらず、妻の国民年金や健康保険の保険料負担がなくなります。一方、学生やフリーターで親などの会社の社会保険の扶養に入っている人は健康保険のみが対象のため、20歳以上なら国民年金保険料の支払いは必要です。
社会保険の加入判定に使うパート年収の対象は、交通費手当なども含まれます。妻がパート先の社会保険へ加入すると夫の扶養から外れることになります。また、年間の収入が130万円を安定的に超えそうと判断されると、パート先の社会保険に加入条件を満たさなくても、夫の扶養から外れます。細かい判定基準は協会けんぽや各健康保険組合によって異なるので、気になる人は確認するとよいでしょう。

税制上の扶養とは

パート主婦に関係する税制上の扶養には、配偶者控除・配偶者特別控除があります。こちらは、配偶者の夫が会社員でも自営業でも条件があえば適用され、夫の所得税と住民税が控除されます。控除額は、パート年収150万円以下を満額に徐々に減り、年収201万円まで控除額があります。一方、学生やフリーターで親などの扶養に入っている場合は、バイト年収103万円以下までが扶養内となります。
税制上で使う年収は、その年の1月から12月の合計で、掛け持ちや途中で退職したパート代も足します。交通費手当は原則対象から外すことができます。税制上の扶養は1円でも超えると適用されないため、扶養内におさめたい人は収入をコントロールする必要があります。

 

パート主婦が関係する年収の壁一覧

パートで働く主婦にとって、扶養に影響する年収の壁にはいくつかの段階があります。一般的に、扶養内で気にする人が多い社会保険の扶養は、会社の規模によりますが、給与年収106万円と130万円がボーダーとなります。税制上の扶養内は、配偶者特別控除を満額受ける上限の年収150万円を意識すると良いでしょう。

パート主婦(夫)が意識したい年収の壁

(※)
配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには夫の年収に制限があり、満額受けられるのは年収1,095万円以下、それ以上になると段階的に控除額が減っていき年収1,195万円を超えると対象外となります。
(※1)
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金月額が88,000円以上
・雇用期間が2ヵ月を超える(見込みも含む)
・101人以上(厚生年金の被保険者数)の従業員のいる企業
・学業を主とする学生(昼間学校に通う学生)でないこと

 

103万円の壁:妻自身の所得税がかかる

103万円の壁は、夫の扶養ではなく、妻自身のパート代に所得税がかかり始める年収を指します。103万円を超えると、超えた分に対して所得税がかかります。また、住民税は地域によって違いますが、およそ100万円前後からかかり、年収103万円の場合は、年数千円程度です。住民税も所得税も払いたくない場合は、住む地域の住民税の課税基準額がいくらになるのかを確認し、それ以下に収めましょう。

2018年以前は、夫の配偶者控除を満額受けられる妻の年収上限が103万円だったため、税制上の扶養内で働きたいパート主婦にとって103万円は大きな壁でした。現在は、103万円を超える人のために配偶者特別控除が設けられ、妻の年収150万円まで満額で受けられるようになりました。そのため、103万円は、実質、自身の所得税を意識する壁の意味合いが強くなっています。

 

106万円の壁:パート先の社会保険へ加入

夫の社会保険上の扶養内であるために意識したい年収は2段階あり、約106万円と130万円です。年収106万円や130万円はあくまで目安であり、厳密に年間でこの額を超えるかではなく、毎月の働き方が常時この状態を保つ見込みがあると判断された時点で加入することになります。
106万円の壁は、2022年10月以降、会社の人数上限が引き下げられて101人以上の会社から対象になり、年収が約106万円以上あると勤務先の社会保険への加入義務が発生します。保険料は年収106万円で年間15万円前後です。保険料が天引きされる分の手取りは減りますが、健康保険や厚生年金に自ら加入することで、病気やケガで仕事に就くことができなくなってしまった時の手当が貰えたり、将来もらえる年金が増えるなどのメリットもあります。

2022年10月~社会保険の加入条件

1.所定労働時間が週20時間以上である
2.1カ月の賃金が8.8万円(※3)(年収約106万円)以上である
3.勤務期間が2ヵ月を超える見込みがある
4.勤務先の従業員が101人以上(厚生年金の被保険者数)の企業である(※4)
5.学生は対象外である(夜間や定時制など、加入対象となる学生もある)(※3)以下は1ヶ月の賃金から除外できる。
・臨時に支払われる賃金や1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
・時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
・最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
(※4) 厚生年金の被保険者数が100人以下の企業でも、「労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主が社会保険に加入することに合意すること)に基づき申し出している」又「地方公共団体に属する事業所」であれば、101人以上の要件を満たす。

2024年10月~加入条件はさらに拡大

2024年10月以降は、従業員数が101人以上から51人以上へ変更されます。それにより従業員数の少ない企業も対象となります。現行の制度で100人以下の企業ゆえに、106万円の対象でなかった人は、2024年9月までに扶養を外れる働き方を続けるか、扶養内の働き方に変えるかを雇用されている企業と確認することが必要です。

なお、厚生労働省は、106万円や130万円での扶養を外れることに対し、手取りを減らさない「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表しています。
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」

 

130万円の壁:すべての人が社会保険の扶養を外れる

106万円の壁に該当しなかった人でも、年収が130万円を超えると、夫の社会保険の扶養が外れます。こちらは掛け持ちも含めた収入で判断され、毎月の収入が常時年間130万円以上に相当するかで判断されます。
扶養から外れると、健康保険は、住んでいる市区町村の国民健康保険かパート先の健康保険(労働時間・勤務日数が正社員の4分の3以上に該当する場合)に加入し、自ら保険料の支払いを求められます。年金も、自ら国民年金保険料を支払うか、パート先の厚生年金への加入をすることになります。保険料は年収130万円程度で20万円前後になります。

社会保険の扶養チェックチャート

夫の社会保険の扶養に入れるかどうかは、以下のフローチャートで確認してみましょう。
社会保険の扶養チェックチャート

(参照)日本年金機構HP

(※5)以下は1ヶ月の賃金から除外できる。
・臨時に支払われる賃金や1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
・時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
・最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
(※6)厚生年金の被保険者数が100人以下の企業でも、「労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主が社会保険に加入することに合意すること)に基づき申し出している」又「地方公共団体に属する事業所」であれば、101人以上の要件を満たす。(※7)60歳以上又は障害者の場合は、年間収入(※8)180万円かつ、
・同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
(※8)年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。

 

150万円の壁:配偶者特別控除の満額上限

配偶者がいる人への税制上の扶養控除には、配偶者控除と配偶者特別控除があります。
パートなど給与収入のある妻の配偶者は、年収103万円以下までは配偶者控除、103万円を超えると配偶者特別控除を受けられます。配偶者控除も配偶者特別控除も、妻の年収150万円までは、夫の控除額は変わらず税金控除を満額受けられます。150万円を超えると段階的に夫の控除額が減り、201.6万円を超えると夫の控除額が0になります。
配偶者控除・配偶者特別控除には、夫の年収にも上限があり、1220万円を超えると控除対象外となります。

配偶者控除・配偶者特別控除の控除額一覧

配偶者控除 控除額表組 タウンワークマガジン townwork

配偶者控除の対象チェックチャート

配偶者控除・配偶者特別控除の対象となるかどうかは、控除を受ける夫と自分自身の年収で確認することができます。

<配偶者控除・配偶者特別控除の確認フローチャート>
所得税や配偶者控除・配偶者特別控除など税金の仕組みについて、詳しくはこちらのページも参考にしてみてください。

バイトと税金(所得税・住民税)

 

扶養内で働きたいなら、106万・130万を意識しよう

手取り年収を重視するなら、社会保険の負担は年間15~20万円前後と大きいため、106万円・130万円の壁を意識すると良いでしょう。その範囲内なら、配偶者特別控除も満額受けられるため、世帯の手取り年収は維持しやすくなります。自分で収入を把握しながら、パート先に扶養内でいたいことを伝えておくのも大切です。一方、例えば170万円を超えるような働き方ができる人は、扶養を気にせず、世帯年収を伸ばせるように働くのがおすすめです。

■監修
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/

※初回公開:2020年4月3日、更新履歴:2022年2月8日、2022年10月1日、2022年11月14日、2024年1月22日

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