宗弥(Blu-BiLLioN)インタビュー 『やりたくないことこそ自分のためになることだと、バイトから学んだ』【俺達の仕事論vol.25】
ツインギターにキーボードという編成、ドラマティックかつ透明感のあるサウンドが魅力の6人組バンド、Blu-BiLLioN。今回は、バンド内のムードメーカーでもある下手ギター・宗弥さんに、スーパーでのバイト経験を中心に話を聞きました。
高校時代からバンドでお金を稼いでいた。
――最初にやったバイトはなんでしたか?
最初は、高1の時、1日で辞めた引っ越しのバイトですね。僕は埼玉出身なんですけど、友達とバイト情報誌を見てたら、地元で“高校生でもOK!”っていう募集があったんでやってみたんです。でも、交通費が出ないところだったから、“1日朝から晩まで働いたのにこれだけしかもらえないの!?”って驚いたり、ベテランのバイトにきつく叱られて“大人怖ぇ~!”ってなって、早々に心が折れちゃいました(笑)。
――そもそも、なんでバイトをしてみようと思ったんですか?
遊ぶお金がほしかったっていうのもあるんですけど、バイトって高校生の特権だと思ったんですよ。バイト先で女の子と出会うとか、バイト仲間と遊ぶとか、いいなって。そういう憧れがあったから、高校に入学して周りがどんどんバイトを始めていく中、出遅れたことが悔しかったですね。
――じゃあ、引っ越しのバイトこそ合わなかったものの、他にもいろいろバイトを……。
いや、高校時代はそのバイトだけでした(笑)。というのも、僕、高校在学中からバンドをやってて、そっちでお金を稼いでたんですよ。
――えっ、すごい!
当時はドラマーだったんですけど、たまたまライブを観に来ていたプロの方に声をかけられて。その方の知り合いのバンドに加入して、正式メンバーとして活動しつつ、その分のバイト代をもらうっていう生活をしていましたね。当時はそれでいっぱいいっぱいで、他にバイトをする余裕はなかったです。でも、高校生の割に結構お金をもらってたし、その状況に慣れていくうちに、“もっとバイト代くれてもいいのに”って横柄になっていくんですよね(笑)。
普通の感覚を取り戻すためにバイトをしたかった。
――そんな状態でまたバイトを始めたら、それこそ打ちのめされそうですけど(笑)。
あははは。ただ、周りの同級生達がバイトの話をしてるのを見て、自分の感覚が狂ってるのも自分でわかってたから、普通の感覚を取り戻すためにも、みんながやっているような王道のバイトをしてみたい気持ちがずっとあって……。高校を卒業してからは、バンドをやりながら自宅近くのスーパーでバイトを始めました。そこを辞めた後は、いくつか違う短期バイトを経験したんですけど、最終的にはまた違うスーパーで4年くらい働いてましたね。
――バンドをやりながらスーパーでバイトをするのはスケジュール調整が大変そうですが、どうしていたんですか?
大学には進学しなかったんですが、バンドを掛け持ちしていたので、夜中のリハがあるから朝勤にしようっていう時もあったし、24時間営業のスーパーだったから夜勤の時もありましたね。同じスーパーでも、朝と夜で作業って変わるんですよ。夜勤は品出しがメインだけど、昼勤は接客とか発注がメインとか。そういうのをオールマイティーでやってたんで、結構重宝されてたような気がします(笑)。実家暮らしだったこともあって、稼いだお金は機材や音楽関係のものに全部注ぎ込んでいました。
ファンの人よりもバイト先のお客さんからの差し入れのほうが多かったかも(笑)。
――とくに好きな作業はなんでした?
袋詰めとか、お客さんとやりとりしてる時間はすごく好きでしたね。レジ打ちは未だにかなり速い自信があります(笑)。
――宗弥さん、主婦ウケ良さそうですよね。
そう! お客さんのおばちゃんからめちゃくちゃモテるんですよ! おばちゃんから、誕生日プレゼントめちゃくちゃもらいましたから(笑)。今のバンド(Blu-BiLLioN)に加入した当初も、近所のスーパーでずっとバイトしてたんですけど、ファンの人よりもバイト先のお客さんからの差し入れのほうが多かったかもしれません。
――逆に、苦手だった作業はなんでしょう?
冷蔵庫の整理ですね。賞味期限が早いものをすぐ手に取れるように手前に移動していって、賞味期限が先のものを奥にしまっていくっていう作業なんですけど、あれが結構面倒くさかったです(笑)。でもね、仕事って、面倒くさいこと、人がやりたがらないことから順番に値段が高いって思うんです。それを僕もバイトから学んで、“面倒くさいなぁ”とか“やりたくないなぁ”って思うことこそ、自分のやるべきこと、自分のためになることなんだと思って、一生懸命取り組むようになりました。
学生バンドとバイトを両立する日々。
――ちなみに、スーパー以外でのバイトはどんなことをしていたんですか?
基本はスーパーだったんですけど、ウチは親父が出版社で働いていたんで、その関係でたまに文字の校正を手伝ったりとか。コンビニ弁当を詰めていくバイトも、短期でやってました。レーンに器が流れてきて、それに鮭を詰める……みたいな。
――急にライブが入ったり、スケジュールがすぐに変わるバンドマンにとって、短期や単発のバイトはありがたいですよね。
でも僕の場合、当時組んでたバンドメンバーが大学生ばっかりだったんで、スケジュールが結構キッチリしてて。僕も、“絶対にここからここはバイトだから無理!”って言ってたんですよ(笑)。それに、2010年にBlu-BiLLioNに入る前は4年くらいバンドをやっていなくて、サポートとか曲作りをしていたので、単発のバイトじゃなくても問題なく働けてました。
なりたい自分になって、楽しんで働いてほしい。
――とはいえ、Blu-BiLLioNに加入してからは、さすがにバンドを優先しなきゃいけなかったのでは?
そうなんですけど……バイトをしていた頃は、バンドのほうを迷惑だと思ってましたね。“急にレコーディングって言われても!”って(笑)。でも、どうしてもバンドを優先しなきゃいけない時は、持ち前のキャラクターで代わりを探してました。前もって各時間帯に仲の良い人を作っておいて、ある程度自分が作業に慣れてきたら、その人達に楽をさせてあげる。そうすると相手も借りができたなって思うじゃないですか?
――弱みを握る作戦ですか(笑)。
そうそう。で、“いつも代わりにやってあげてるんだから、今日はいいよね?”っていう空気を出して、代わってもらってました(笑)。
――さすがですね。
あははは。そういう言い方をすると悪い印象を与えるかもしれないですけど、そうやって、いろんな世代の人・いろんな環境の人と仲良くなれるっていうのもバイトの魅力だと思うんですよ。スーパーだと、朝は主婦、夕方は高校生、夜勤はちょっとアウトローな生活をしてるフリーターが多かったんですけど(笑)。みんなの話を聞くのが好きでしたね。
――では最後に、これからバイトを探そう、頑張ろうという人にメッセージをお願いします。
普段の自分を知っている人がいない環境で働けるっていうのが、バイトのメリットだと思うんですよね。だから、めちゃくちゃ仕事のできる人になりきるでもいいし、チャラいやつを装うでもいいし(笑)。なりたい自分になって、楽しんで働いてほしいなと思います。
宗弥
2010年に始動した6人組バンド、Blu-BiLLioNの下手ギタリスト(2011年加入)。ボーカル・ツインギター・キーボード・ベース・ドラムという編成と、そこから生み出されるメロディアスかつキャッチーな楽曲が魅力。昨年、3rd FULL ALBUM『EDEN』を引っ提げた『Blu-BiLLioN TOUR17-18-19「Strive for EDEN」』をスタートし、2018年4月3日にはNEW SINGLEのリリースを予定している。
◆Blu-BiLLioN Official Website:http://blu-billion.jp/
◆宗弥Official Twitter:@soya_stg
企画・編集:ぽっくんワールド企画 取材・文:斉藤碧 撮影:河井彩美