準々(DOG inTheパラレルワールドオーケストラ)インタビュー『若いからこその行動力は大事にしたほうがいい』【俺達の仕事論vol.38】
個性的なキャラクター、変幻自在な音楽性で、幅広い層からの支持を集めている5人組ヴィジュアル系バンド、DOG inTheパラレルワールドオーケストラ。
ギターの準々に、人生で一番焦ったという蕎麦屋でのプチ事件や、コンビニ仲間と音楽論を話していたというインディーズ時代の胸アツ・エピソードを伺いました。
配達中にバイクがエンストして蕎麦を持って走りました
——初めてのバイトから教えて下さい。
高校生の頃に、音楽をやっていた学校の先輩から「俺、辞めるから代わりに入って」って頼まれて蕎麦屋で配達のバイトをしました。雨が降ると店内がヒマな分、出前は忙しくて、昼時とか夜は結構ひっきりなしでしたね。空いた時間は、包んだうどんをひたすら踏んでいました(笑)。“あっ、こうやって作るんだ!”って。
——楽しそうですね。
最初は楽しかったんですけど、ひたすら踏んでないといけないから、砂漠の中を延々と歩かされているような気になるんですよ。しかも前に進むわけでもなく足踏みっていう(笑)。音楽とか聴ければ違ったと思うんですけど、後半は無心で踏んでいました。
——当時のハプニングなどがあれば。
初めてカブっていうギアのついたバイクに乗れたのが嬉しかったですね。でもバイトを始めたばかりの頃、カブがエンストしちゃって。蕎麦は麺が伸びたらダメじゃないですか! “どうしよう”って考えた結果走って持っていきました。たまたま近くて助かったんですけど。
——もし、配達先が遠かったら?
きっとその重圧に耐え切れずに逃げてましたね。今だったら、ライヴとかでトラブルがおきても対応できますけど、高校生の自分からしたら、もう一大事ですよ! 視野が狭かったのもあると思いますけど、もう“どうしよう”しかなかったですからね。あれは人生で一番焦りました。その後は人生をほとんどノーミスできてるんで(笑)。
高校生の頃は“仕事をしてる”っていうことに醍醐味を感じてた
——初めてのバイト代は覚えていますか?
自分が働いた時間の分だけ、バイト代としてもらえるっていうのは嬉しかったですね。蕎麦屋は給料が手渡しだったから、“稼ぐってこいういうことなんだ!”って。でもお金っていうより、高校生だったから“仕事をしてる”っていうことに醍醐味を感じていたのかもしれないです。
——蕎麦屋はどれくらい続けたのでしょうか?
1年くらいは頑張ったんですけど、そこは家から遠かったんです。なので、家の近くのガソリンスタンドでバイトをするようになりました。給油機はガソリンが満タンになったら自然と止まるようになっているし、そんなに大変なことはなかったかな。そこは2年くらい続けました。
——声出しや接客は大丈夫でしたか?
全然いけました。普通にガソリンスタンドの店員として成立していたと思いますよ(笑)。そういえば、挨拶で思い出したんですけど、ガソリンスタンドで働く前に、家の近くのコンビニに面接に行ったことあるんです。でも、元気がない人と思われたらしくて、「いらっしゃいませって大声で言ってみて」って言われて。面接の狭いバックルームで1人で何回も練習させられたあげく落とされたのを思い出しました。しかも、家の近くのコンビニだったから行きづらくなって(苦笑)。そこで、家に近すぎるところに行っちゃダメなんだなってことを学びましたね。受かったとしても、近所の人とか知り合いもいっぱい来るから少し遠いほうがいいのかなって(笑)。
——ちょっと切ない教訓。
ですよね(笑)。でも、それ以外は理不尽に叱られたこともないし、バイト自体はどこも楽しかったので、人には恵まれたと思っています。
コンビニでは仲間と“バンドのこと・音楽こと”をよく話してた
——ガソリンスタンドの後は?
高校を卒業した頃、友だちに誘ってもらって始めた深夜のコンビニですね。高校時代は軽音楽部でバンドをするくらいでしたけど、本格的にバンドを始めようとしていた時期だったので5年くらい続きました。
——その頃は、もうバンドで食べていこうと思っていたんですか?
思っちゃってましたね(笑)。髪の毛も赤かったんですけど、そのコンビニは大丈夫だったので助かりました。何故か他の時間帯もバンドをやっている人が多かったので、お客さんが少ない時間帯は“バンドとは”“音楽とは”って色々と話しましたね。
——具体的に覚えているお話があれば。
熊本から上京してバンドをやっていた先輩がいて、知り合った頃にはもう期待されている人だったんですけど、その人が“本当にやりたい音楽”と、“売れるための音楽”で悩んでいたんですよ。それを話してくれた時に、20歳になるかならないかの僕が「そんなの自分がやりたい音楽をやり通さないとダメですよ!」って偉そうなことを言ったのをすごく覚えています(笑)。今思えば、先輩に“よう言ったな”と。
——今もその気持ちに変りはないですか?
そうですね。大人になって色んな経験もしてきたので、対応能力はついたと思いますけど、そういうキッズみたいな青クサイ気持ちは忘れちゃダメだなと思います。
——その先輩とは今でも交流があるのでしょうか?
その人は、今は熊本でギター教室をしながらCDも出しているんですけど、去年か一昨年、DOG in ThePWOのライヴで熊本に行った時に観に来てくれて「あのバイトの時に話してたのは無駄じゃなかったよね」みたいな話が出来て胸アツでした。
今思うと……発注の機械を触らせてもらえてなかった!?
——素敵なお話ですね。
ただ、そのライヴのMCでも言ったんですけど、実はその人が「準々って仕事が遅いんだよね」って言っていたことを後から他の人に聞いてすごいショックだったんですよ。その人は、「そんなことなかったよ」って返してくれたんですけど(笑)。
——で、仕事は遅かったんですか?(笑)
いやぁー。けっこうちゃんとやっていたと思うんですけどね。特にパンを並べるのには自信がありました! パンって他の商品に比べると、包装がホワッとしてるから、ちょっと雑に扱っても大丈夫で、それをすごいスピードで並べてたんですけどね。
——準々さんというより、パンの対応能力?
あははは、そうかもしれないです。そういえば、僕より半年後に入ってきた子がいるんですけど、気付いたら発注をしていたんですよ。僕はその発注の機械を触ったこともなくて。最近ふと“なんで触らせてもらってないんだろう?”って(笑)。当時は、何も感じてなかったんですけど、大人になってから発注って在庫にも関わるから“あれ? 僕任されてなかったのかな?”って気付いちゃいました(笑)。
“素早くキレイに”商品の袋詰めには自信あり!
——ちなみにレジはどうでしたか?
いい感じに出来てたと思います。お客さんが買う商品の量を見た瞬間にビニール袋の大きさが分かりますから! 空間処理能力っていうんですかね(笑)。“この量がきたら、あの袋だ”っていう。駅前のコンビニだったから、夜10時くらいがすごく混むんですよ。だから必然的にレジのスピードもあがったし、商品の袋詰めがキレイで早いっていうのは負けないです!
——ほかに記憶に残っているエピソードはありますか?
新しくバイトに入ってきた年配の方に、「私スパイなんですよ」ってカミングアウトされて「まじっすか!」って(笑)。すぐバイト仲間に「やべぇ、あの人スパイだ!」って言いふらしました。いろんな人がいるし、年代の違う人とか、スパイとも接することができたり、そういう何気ないことが楽しかったんですよね。
有線でかかる音楽には負けないっていう“負けん気”は強かった
——ちなみにコンビニだと、有線もかかっていますよね。
聞いていましたね。でも当時は、有線でかかる曲はポップで聴きやすいだけで対したことないって言っていたと思います(笑)。今だと、幅広い層に支持を受ける曲はすごいと思えるんですけど、当時は負けん気が強かったんでしょうね。“俺はいけるぞ!”っていう自信と強い気持ちがないと“いけない”じゃないですか(笑)。今のバンドになって、自分たちの曲が流れた時は嬉しかったですね。当時は、寝る時間を削って気合いでやっていた部分もありますけど、夢を追いかけていれば、みんなそうだったと思うので。
——では、最後にバイトをこれから始める人へのアドバイスを。
高校生の時のバイトって働くクセをつけるための練習だと思うんです。僕は働くこと自体が楽しかったから、経験としてやってみるといいと思います。それと、たとえば今「接客業をして」って言われると尻込みしちゃうから、若さゆえの行動力は大事にするといいんじゃないかな。あとアドバイスとしては……家から遠すぎず、近すぎずかな(笑)。いい感じの距離で探してみてください!
準々(DOG inTheパラレルワールドオーケストラ)
2009年1月1日結成のDOG inTheパラレルワールドオーケストラの上手ギタリスト。主に作曲を担当。歌って踊れる一体感抜群のライヴは必見。
◆DOG inTheパラレルワールドオーケストラOFFICIAL SITE:http://inu-para.com/
◆準々 Official Twitter:@dog_junchan
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:原千夏
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。