QuizKnock・伊沢拓司&鶴崎修功 Presents「10年後、実現していそうなひみつ道具」
ポケトークのモデルはほんやくコンニャクか!?
■ほぼ実現に近い状態になっているもの
――数あるひみつ道具の中で、これは実現している、もしくは形を変えて実現しているものってありますか?

「ほんやくコンニャク」
これを食べると、どんな言葉でも通じるようになる。
鶴崎 これはかなり実現が近づいていますね。
伊沢 ポケトークだよね。大きさもほんやくコンニャクより小さいし、ぬるぬるしてないから使いやすいだろうし(笑)。

「きこりの泉」
ここにモノを落とすと、女神ロボットがあらわれる。女神に何を落としたか正直に話すと、落としたモノより、もっとよいモノをくれる。
鶴崎 「もっとよいモノをくれる」部分には目をつぶったとして、これは提案サービスですよね。例えば、新しいスマホを買おうとして、ネットで条件を入れて調べると「あなたにはこれがおすすめ」と情報が出てくるので。
伊沢 フリマアプリやネットオークションとして実現しているんじゃない? 自分にとって価値が落ちたものを、自分にとって価値の高いものと交換するシステム。商品について正直に書かないと売れないしね(笑)。
鶴崎 確かに、正直に言うのがポイントですね(笑)。

「ラジコンねんど」
この粘土で作ったものは、ラジコン操作で自由に動かすことができる。
伊沢 これは実現しているんじゃないかな。
鶴崎 大学で実験をしていそうですよね。
伊沢 技術系の大学で実現していそう。3Dプリンターで造形物を出して、それにエンジンとかもろもろ内蔵すれば自由に動かすことができるはず。

「ガリバートンネル」
大きな入り口から入って、小さな出口から出ると、からだが小さくなるトンネル。逆にくぐりぬけると、もとに戻る。
伊沢 自分が大きくなったり小さくなったりするのはVRで実現しているよ。
鶴崎 VR空間ならいくらでも大きくなったり小さくなったりできますから。
数年後は「ドラえもんバイト」が生まれるかも!?
■近い将来、実現しそうなもの
――次はまだ実現はしていないけれど、今後10年の間や近い将来、実現できそうなものはどれだと思いますか? その道具をバイトで使うにはどうすればいいかも、あわせて考えてみてください。

「味見スプーン」
写真の料理をひと口だけ味見できるスプーン。ただし、一枚の写真につき、一本のスプーンでできる味見は一度だけ。
鶴崎 味覚を再現するだけならできそうですよ。小さな板みたいなものを舌にあてて電気を送ると味が再現できるとか。
伊沢 分子ガストロノミーだ! 今の技術だったらできるはず。味見スプーンがあれば行列する飲食店バイトはラクになりますよ。ラーメン屋とかスイーツショップとかメニューの種類が多い店は、並んでいる間に味見させておけばお客さんがスムーズに選べて、バイトの効率化がはかれる。
鶴崎 なかなかオーダーが決まらないお客さんって時間とられますからね。味見は1度だけという設定もいいですよ。味見だけで終わらないでしょうから!

「スーパー手ぶくろ」
手につけると重たいものでも軽々持ち上げられるようになる。
伊沢 身体的負担を減らすアシストスーツが開発されているから、スーパー手袋もイケるんじゃないかな。介護業界とか引っ越しバイトでかなり役立つ。
鶴崎 人や荷物の移動が格段にラクになりますからね。力仕事に自信がない人でもバイトにチャレンジしやすくなるし。
伊沢 引っ越しバイトのスタッフたちは恩恵を受けるけど、経営者側から見ると上層階の引っ越しでもお金をとりづらくなる(※)から、経営的には微妙かもね(笑)。
※一般的にタワーマンションなど高層階の引っ越しは駐車場からエレベーターの距離が遠い、エントランスの養生をする必要があるなどの理由で料金が高くなるケースが多い。

「タケコプター」
からだに取りつけると、自由に空を飛びまわることができる。
伊沢 原理はドローンに近いものがあるから、今後は人間も運べるようになる気がする。
鶴崎 すでに軽い荷物は運べるようになっていますからね。人間が使えるようになるとタケコプターを使ったスポーツとか人気が出そう。
伊沢 レンタルタケコプターを作れば、タケコプターを整備するバイトや貸したり回収したりするバイトが生まれるよ。
鶴崎 レンタルタケコプターショップバイトですね。
伊沢 ビルの窓ふきもできるし、家を建てるときにも使えるし建設系でも重宝されそう。足場を組まなくてもいいから、簡単に着工できる。耐震性に問題がある建物とかタケコプターで人が近くまで行けたら、日本のインフラは相当回復するはず。
鶴崎 タケコプターはいろいろな仕事につながりそうですね。

「お医者さんカバン」
センサーを患者に当てるだけで、どんな病気か診断してくれるカバン。病気を治す薬も出てくる。
鶴崎 医者が専門的な知識と経験でやっていたことをAIや機械がやる日が近づきつつあると思うんですよその分、医者はより専門的なことができるようになれば医療技術はもっと進むと思いますから。
伊沢 確かに。そうなると「お医者さんカバン」を扱う専門のバイトが生まれるね。医療補助のような役割として。どのひみつ道具も使いこなせる人が必要だから、それをバイトにすれば雇用を生むんじゃない。
鶴崎 そうですね。ひみつ道具だけじゃ使い方がわからなくて効果が半減することもあるだろうし。そんなんときに使う方法や効果的な使い方を教えるバイトは必要なはず。
伊沢 ドラえもん自身も本人がすごい能力を持っているわけではなく、道具をよく理解していて必要なときに道具を選んで出してくれる紹介者的な存在だからね。そう思うと、ひみつ道具コンサルタントみたいなバイトも生まれるんじゃない。
鶴崎 そもそもドラえもんのバイトですか!
伊沢 そうそう! 大学生がドラえもんになる、なんて日がくるかもよ。
アンキパンはクイズプレイヤーを大食いプレイヤーに変える恐ろしい道具
■実現が難しそうなもの
――反対にこれは実現が難しいだろうという道具はありますか?

「バイバイン」
このクスリを一滴たらすと、どんなものでも5分ごとに2倍の数に増える。
伊沢 これは宇宙の法則が乱れる!
鶴崎 5分ごとに2倍ですからね、宇宙に飛ばしても栗まんじゅうは増え続けるし。(※漫画の中でのび太が栗まんじゅうにバイバインをたらしたことでどんどん増え続けて、最終的に増えた栗まんじゅうをロケットで宇宙へ飛ばすという話)
伊沢 宇宙の果てにある栗まんじゅうは5分ごとに増えていき、分子単位の2倍でなくなり、宇宙空間の中では2倍という概念がなくなる可能性がある。そうなると宇宙の成立問題にもかかわってくるから……。まさに法則を超える栗まんじゅう。
鶴崎 法則的に一番ヤバいのはバイバインですね(笑)。

「タイムマシン」
過去や未来に自由に行くことができる乗りもの。のび太のつくえの引きだしの中にある。
鶴崎 タイムマシンはなかなか難しいでしょうね。技術的にもですが、みんなが使い始めたら貨幣経済が崩壊しそう。バブルの時代に戻って荒稼ぎして現在に戻ってくるとか。
伊沢 未来に行って新しい技術を現在に持ってきてしまうとか。経済が混乱するのが目に見えている。
鶴崎 自分だけタイムマシンを持っていたらいいですけど。
伊沢 そうなんだよ。ひみつ道具ってのび太だけが使えるから成立しているんだよね。みんなが持ち始めるとバランスが崩れるものもある。50年経った今、実現が見えているものがこんなにあるなんてすごいよね。技術革新のめざましさは本当にすごい。

「アンキパン」
この食パンに暗記したいものを写して食べると、かんたんに覚えることができる。
伊沢 技術的に難しいのはもちろんだけど、もし、アンキパンが実用化されたら商売あがったりだよ……。
鶴崎 クイズプレイヤーは大食いプレイヤーになるしかないですね(笑)。
伊沢 知識をつけるためにどれだけ食べればいいんだって話。そうなるとクイズプレイヤーは問題を推測する思考力で戦うしかない。
鶴崎 思考力と大食いで戦うしかない。
伊沢 アンキパンだけは開発してほしくないよね(笑)。
■Profile
1994年生まれ、東京大学経済学部卒。高校時代に『全国高等学校クイズ選手権』を個人として初の連覇。クイズ番組『東大王』でも優勝を果たす。2016年に知識集団「QuizKnock」を創設しWEBメディアを運営、現在は株式会社QuizKnockCEO。書籍執筆やYouTuberなどの活動も行っている。
1995年生まれ、現在東京大学大学院数理科学研究科に在籍。東京大学クイズ研究会に在籍し「QuizKnock」でも活躍中。2016年にクイズ番組『東大王』にて優勝を遂げ初代東大王に輝く。現在も東大王チームとしてレギュラー出演中。
取材・文:中屋麻依子 撮影:八木虎造
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