バイトやパート先の社会保険に入りたくない。年収はいくらまでに抑えればいい?
夫や親の扶養に入っている人の場合、バイトやパートの年収や勤務時間があるボーダーを超えてしまうと、自身で勤務先の健康保険や厚生年金保険を加入することとなり、保険料の支払いが発生します。勤め先の社会保険に入らずに働きたい場合、年収はいくらまでに抑えればよいのかを、ここできちんと確認しておきましょう。
(参照)厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
社会保険に加入したくないなら年収やシフトを調整する
パート先の社会保険に加入したくない人は、年収106万円未満の月収約8.8万円未満にし、週の労働時間を20時間未満に収まるようにします。
他にも会社の規模など細かい加入条件があり、下のいずれかに該当すると、加入条件を満たします。詳しく見ていきましょう。
月収8.8万円(年収106万円)未満にする
パートやフリーターで、以下5つの条件を満たす人は、社会保険への加入が必須になります。一つでも外れれば加入対象にならないため、社会保険に加入したくない人はパートやバイト先と相談して週の所定労働時間を20時間未満にするか、月の給与が8.8万円未満になるようにしておくといいでしょう。なお、繁忙期などで一時的にシフトが週20時間や月8.8万円を超えただけでは加入対象になりません。一定期間連続で超える場合は注意が必要です。
◆勤務先の社会保険の適用条件
1.所定労働時間が週20時間以上である
2.1ヵ月の賃金が8.8万円(*)(年収約106万円)以上である
3.雇用期間が2ヵ月を超える見込みがある
4.勤務先の従業員が51人以上(厚生年金の被保険者数)の企業であるか、50人以下の企業で労使協定により社会保険加入が合意されている場合
5.学生は対象外である(夜間や定時制など、加入対象となる学生もある)
・臨時に支払われる賃金や1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
・時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
・最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
労働時間・日数を正社員の3/4未満にする
上の5条件に当てはまらない人でも、正社員の3/4(75%)以上シフトが入っている人は、学生であるないに限らず、勤務先の社会保険への加入義務が出てきます。
正確には、一定以上の雇用期間(*)があり、「1日または1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が正社員の3/4を超えている場合です。例えば、勤務先の正社員の1週間の所定労働時間が40時間で週休2日の会社の場合は、1週間の勤務を30時間未満、月16日未満にするということになります。ただし、労働時間および労働日数のどちらかだけ超えた場合には、加入義務はありません。
(*)最初の雇用契約が2ヶ月以内の期間を定めている場合には、その他の条件に該当しても加入できません。ただし、2ヶ月を超えるか、2ヶ月を超えることがわかった時点で可能となります。
社会保険の扶養は年収130万円の壁も意識する
親や配偶者など扶養者の社会保険上の扶養でいるためには、年収を130万円未満に抑える必要があります。一般的に「130万円の壁」と呼ばれていますが、これは勤務先の社会保険加入の条件ではなく、「親や配偶者などの社会保険の扶養から外れる年収」なので、こちらも合わせて意識しておく必要があります。
【ケース1】
130万円未満/週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の3/4以上
自身で社会保険に加入しなくてはならないので、結果として親や配偶者の社会保険の扶養を外れます。
【ケース2】
130万円以上/週の所定労働時間および月の所定労働日数は正社員の3/4未満
自身は勤務先の社会保険に加入できませんが、親や配偶者の扶養を外れるので、自身で国民健康保険と国民年金を支払う必要があります。
【ケース3】
130万円未満/週の所定労働時間および月の所定労働日数も正社員の3/4未満
夫(妻)や親などの社会保険の扶養に入れますが、20歳以上60歳未満の人は、国民年金は自分で加入手続きし、保険料を支払う必要があります。ただし、配偶者の勤務先の社会保険の扶養になっている場合は、国民年金第3号被保険者となり、保険料を自分で支払う必要はありません。手続きも勤務先が行ってくれます。
130万円の壁は、掛け持ち年収でカウントされる
106万円の壁は、1つの勤務先での社会保険加入の話ですが、130万円の壁は、掛け持ちしている分も含めた合計年収で判断されます。掛け持ちのパート代が130万円以上の場合は扶養を外れ、社会保険料を自分で払うことになるので、収入の合計が130万円未満になるように気をつけましょう。掛け持ちで扶養内に収めたいと思っている場合は、あらかじめ勤務先に伝えておくことで、勤務時間や社会保険(健康保険、厚生年金保険や雇用保険)の加入に関して、相談に乗ってくれる場合もあるので、トラブル防止のためにも先に相談しておくといいでしょう。
学生は、親の扶養を外れない103万円の壁を意識
社会保険の扶養の他にも、親や配偶者の税金が安くなる税制上の扶養があります。学生の場合、年収103万円以内なら、親や保護者の扶養により、親の税金を安く抑えることができます。これも合計年収でカウントされるため、掛け持ちバイトをする際は注意が必要です。
主婦の配偶者控除は、150万円以下まで満額
主婦・主夫の場合は、夫(または妻)の年収にもよりますが、配偶者控除・配偶者特別控除として年収150万円以下なら満額の控除を受けられます。こちらも合計年収なので、掛け持ちパートをしている人は毎月の収入を計算することが必要です。
▼詳しくは下記を参照
バイトの税金はいくらからかかる? 各種控除もまとめて解説
まとめ
保険や税金の仕組みは、なかなか理解するのが難しいものですが、家計に影響のある扶養と年収の関係はきちんと理解して、自分に合った働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
監修:菅田 芳恵(社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント 等)
※初回公開:2016年9月11日、更新:2020年9月16日、2022年2月1日、2022年6月22日、2022年10月1日、2024年8月27日、2024年10月1日
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