アルバイトは契約期間内でも辞められる? 退職できる条件やケースを解説
「忙しい年末年始の時期だけ」「注文が増える6カ月間限定」など、期間限定のアルバイト契約で働いている人も多いことでしょう。では、こうした期間限定のスタッフとして働いているとき、期間満了前に自己都合で仕事を辞めることはできるのでしょうか。今回は契約限定バイトをやめたいときの正しい対処法を紹介します。
【目次】
契約期間を守るのが原則。だが事情によって辞められる場合も
雇用形態に限らず、契約期間が定められている場合、原則は契約期間中の退職はできません。ですが、例外的に契約期間内であっても「やむを得ない事由」によりお互いに合意できたり、1年以上働いている場合は、期間中に退職することが可能です。
「やむを得ない事由」があれば契約期間内でも辞められる
民法第628条によると、契約期間内であっても「やむを得ない事由」など一部例外があれば雇用契約を解除することができるとされています。
▼民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
▼「やむを得ない事由」に該当することの一例
①自身や家族にトラブルが起きたケース
・自身の健康状態が悪化し、働けない
・近親者の世話や病気、介護などで働けなくなった
②職場に問題があるケース
・賃金を支払ってもらえない
・雇用前に聞いていた労働内容とまったく異なる
・違法行為の強要
・職場の環境が劣悪
ただ、どのような事由があるにしても「突然出勤しなくなる」などの行為は避けましょう。まずは、上司に報告・相談してみるのが賢明です。
1年を超えて働き続けると、1年経過後は辞められる
期間満了前に辞めるための例外はもう一つあります。労働基準法第137条によると、契約期間が1年を超える有期労働契約を締結している場合は、労働契約期間の初日から1年を過ぎれば期間満了でなくとも雇用者に申し出ることで契約期間満了前でも退職できると定められています。また、上のような「やむを得ない事由」も必要ありません。
たとえば、契約期間が3年の人が働き始めて1年が経過したり、半年契約の人が更新を続けて1年を超えて働き続けると、バイト先に辞める意思を伝えて退職することができます。一方、雇う側・会社側は、客観的に合理的な理由であり、社会通念上相当と認められる理由である場合を除き、契約期間満了まで簡単に解雇することはできません。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
「やむを得ない事由」や「1年を超える契約」がない場合はどうなのか?
契約期間中の退職は、やむを得ない事由や1年を超える労働の実績が原則は必要ですが、どちらも無い場合は、会社と労働者との間で話し合いをして、お互い合意がとれれば雇用契約の合意解約ということで退職できます。また、会社の就業規則で別途、契約期間の定めのある社員の退職申出方法が定められている場合は、その方法に則って退職することもできます。
会社が退職に合意しない場合や、就業規則に定めがなく、合意解約に至らない場合でも、退職をすることはできます。ただし、契約期間中の退職は雇用契約違反になります。したがって、退職によって会社に明らかな損害を与える場合は、ケースとしては少ないものの、損害賠償を請求されることはあるようです。
いずれにしても会社と無用なトラブルを避けるために、よく話し合うことが重要になります。
学業を理由に、契約期間内に辞められる?
学業が理由でバイトを辞めたいという場合は、バイト先との合意がとれていれば契約期間内でも辞めることができます。尚、学業が「やむを得ない事由」にあたるかどうかは法律上の明記がなく、判断が分かれるところです。ばっくれたり無理やり辞めるのではなく、きちんと就業規則にある期日までに退職を申し出て、バイト先の合意を得るようにしましょう。
求人広告で見かける「最低勤務期間」とは
アルバイトの募集広告で、「最低勤務期間:〇カ月以上」などの文言を見かけたことがある人もいることでしょう。アルバイトをはじめてから〇カ月以内に辞めることはできないのかな」と思いますが、結論からいうと、「最低勤務期間」は、雇う側・会社側の「希望」であって法的な拘束力はありません。
ただ、場合によっては「最低勤務期間」の合意が有効と判断されるケースもあります。それは、働きはじめるときに契約期間が定まっていない「無期労働契約」を結んだうえで、「最低勤務期間」が設定されているようなケースです。この場合、契約当初の最低勤務期間は「有期雇用契約」として扱い、その後の期間は「無期雇用契約」に転換する旨を労働者側に明示していれば最低勤務期間に退職するためには「やむを得ない事由」が必要と判断されます。
しかし、これはあくまでも例外なので、基本的には「最低勤務期間」は無効と判断されることが多いようです。
アルバイトを辞めたい時は早めに相談を
ただ、法律上、契約期間内でも辞めるのは問題ないとはいえ、バイトを辞めるときにはそれ相応のマナーがあります。「いきなり今日を最後の日として、明日、から来ない」「ばっくれて連絡がつかなくなる」というのは、あきらかにマナー違反ですし、今までお世話になった周囲のアルバイト仲間に迷惑がかかることになります。
基本的には、期間限定バイトであっても、民法にある通り2週間前、可能であれば1カ月前には退職の意思を告げるのが「働くうえでのマナー」です。退職を伝える時は対面で、できるだけていねいに感謝の気持ちを添えながら伝えられるといいですね。
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
※公開:2016年8月30日、更新履歴:2020年11月5日、2023年9月12日、2024年5月20日