ばっくれ退職は、損害賠償の対象になることも
法律上、アルバイトが無断欠勤して、退職することは民法709条の「不法行為」にあたる可能性があり、損害賠償を請求される可能性があります。また、制服など貸与物を返却しないと実費請求されることや、「業務上横領罪」を問われる可能性があります。
ただ、訴訟には「アルバイトが急にいなくなったことでの、会社の損害度合い」を具体的に証明する必要があり、請求に至るケースはあまりないようですが、いずれにしろ請求対象になりうる行為であることには変わりありません。
ばっくれる前までの給料はもらえる?
働いた分はもらえるが、罰則があるケースも
アルバイトに限らず、無断欠勤後に辞めたとしても、法律上、働いた分の給料はもらえます。未払い分に対しても請求することはできます。ただし、就業規則等に無断欠勤や無断退職に対する罰則(懲戒処分)が書かれている場合は、それに従わなければならないケースがあります。バイト先によっては、就業規則等の中で、反則金のルール(懲戒処分の種類の一つである減給)を設けているところもあります。
振り込まれた給料が減給されていたら?
無断欠勤によるバイト代の減額には、就業規則等に罰則(懲戒処分)の規定があっても、法律上の記載があります。労働基準法91条「制裁規定の制限」では減給について「1回の額が平均賃金1日分の半額を超えない」「総額が一賃金支払期で支払う給与額の1/10を超えない」ことが求められています。そのため、限度を超えて減給された際は、お店や会社に伝えるか、労働基準監督署に相談することもできます。
手渡しで取りに行くこともある
給料支払いは銀行振込や手渡しなど、企業によって方法が異なります。法令では現金で渡すのが原則で、本人の同意があれば、銀行振込も可能となっています。つまり、銀行振込への同意をせずに退職すると、会社は手渡しするしかないのです。その場合には、「給料は直接受け取りにくるように」と言われるため、指示に従いましょう。もしくは、銀行口座がわかる書面、銀行口座振込に同意する書類を会社・お店に送付して、銀行口座に振り込んでもらいます。
制服など貸与物を返却しよう
バイト先によっては制服やカードキーなどの貸与物を返却しないままにしておくと、実費請求されることがあります。就業規則等に返却に関する規定が書かれている場合もあるので、確認しましょう。
また、法的には、貸与されている制服や備品を返却しないと「業務上横領罪」になる可能性があります。備品を盗難されたとして会社側が警察に被害届を提出すれば、警察が動くこともあるので注意しましょう。
返却する際には、制服など洗えるものはきちんと洗ってから、謝罪も兼ねてバイト先に返しに行くのが望ましいですが、それができない場合は宅急便・郵送などで送付してもいいでしょう。送付するときには、謝罪の気持ちを手紙で添えるようにしましょう。
誠意ある辞め方をしよう
アルバイトだけでなく、どんな仕事でも、無期契約であれば法律上は14日前に退職を申し出れば辞めることができますが、バイト先によっては1カ月前までに伝えるなどのルールがある場合があります。まずは就業規則や雇用契約書を確認し、退職したい場合はそのルールに従って伝え、それまでのシフトはこなしましょう。退職意思の申し出、引き継ぎ、退職の諸手続きを踏んで、スムーズに辞めるまでが「アルバイト経験」です。退職先に迷惑をかけないような辞め方を心がけましょう。
バイトの辞め方の詳細はこちらの記事を参考にしてみてください。
バイトの退職・辞め方
監修:冨塚祥子(トミヅカ社会保険労務士事務所)
※2017年4月8日公開の内容を更新しています