バイトを無断欠勤してばっくれたらどうなる?給料や損害賠償について詳しく解説
アルバイトが入っていたのに無断欠勤し、そのまま辞めてしまう、通称「ばっくれ・バックレ」。黙っていなくなることは、会社やお店、一緒に働いてきた従業員にも迷惑がかかります。万一、“ばっくれ”をすると、何が起こるのか。その後の流れと、正しい対処法を解説します。
バイト先から確認の連絡が来る
まず、無断欠勤後、アルバイト先は、出勤しない理由などを確かめるため、本人に電話やメールなどで連絡がきます。無視し続けると、親などの緊急連絡先に連絡が行くことがあります。バイト先が連絡をする理由は、無事を確かめるだけでなく、バイトを続けるのか辞めるのかの確認、辞める場合は、制服などの返却、未払いの給与振り込みなどの手続きを確認したいためです。そもそも、ばっくれること自身を避けたいですが、してしまったら、バイト先からの連絡には答えるようにしましょう。
ばっくれ退職は、損害賠償の対象になることも
法律上、アルバイトが無断欠勤して、退職することは民法709条の「不法行為」にあたる可能性があり、損害賠償を請求される可能性があります。また、制服など貸与物を返却しないと実費請求されることや、「業務上横領罪」を問われる可能性があります。
ただ、訴訟には「アルバイトが急にいなくなったことでの、会社の損害度合い」を具体的に証明する必要があり、請求に至るケースはあまりないようですが、いずれにしろ請求対象になりうる行為であることには変わりありません。
ばっくれる前までの給料はどうなる?
ばっくれても働いた分の給料はもらえる
労働基準法第24条は雇用主の賃金の支払い義務を定めており、既に働いた分の給料は当然に支払われます。アルバイトを数日で辞めたり、無断欠勤でバックレた後に辞めた場合でも、辞める前までのバイト代はもらえます。ただし、就業規則等に無断欠勤や無断退職に対する罰則(懲戒処分)がある場合は、それに従わなければならないケースがあります。
バイト先によっては、就業規則等の中で、反則金のルール(懲戒処分の種類の一つである減給)を設けているところもあります。
規定内で減給されることがある
無断欠勤によるバイト代の減額には、就業規則等に罰則(懲戒処分)の規定があっても、法律上の上限があります。労働基準法91条「制裁規定の制限」では減給について「1回の額が平均賃金1日分の半額を超えない」「総額が一賃金支払期で支払う給与額の1/10を超えない」ことが求められています。そのため、限度を超えて減給された際は、お店や会社に伝えるか、労働基準監督署に相談することもできます。
手渡しで取りに行くこともある
給料支払いは銀行振込や手渡しなど、企業によって方法が異なります。法令では現金で渡すのが原則で、本人の同意があれば、銀行振込も可能となっています。つまり、銀行振込への同意をせずに退職すると、会社は手渡しするしかないのです。その場合には、「給料は直接受け取りにくるように」と言われるため、指示に従いましょう。もしくは、銀行口座がわかる書面、銀行口座振込に同意する書類を会社・お店に送付して、銀行口座に振り込んでもらいます。
給料が振り込まれていない場合は連絡してよい
アルバイトを辞めた月の翌月の給料日になっても振り込みがない場合は、気まずくても元のバイト先に電話やメールで問い合わせてみましょう。会社側が給料の支払いに応じてくれない場合は、働いた日数から未払い分の給料を計算し、未払いの請求をすることができます。シフト表やスケジュール帳などにシフトの履歴があれば証拠として残しておいてください。それでも対応してもらえない場合は労働基準監督署に相談することをおすすめします。
>バイトの給料が未払いの時に自分でできる対処法|未払いの証明方法・請求方法など
制服など貸与物を返却しよう
バイト先によっては制服やカードキーなどの貸与物を返却しないままにしておくと、実費請求されることがあります。就業規則等に返却に関する規定が書かれている場合もあるので、確認しましょう。
また、法的には、貸与されている制服や備品を返却しないと「業務上横領罪」になる可能性があります。横領による損害が発生すれば、損害額によっては会社は損害賠償請求をすることもできます。
返却する際には、制服など洗えるものはきちんと洗ってから、謝罪も兼ねてバイト先に返しに行くのが望ましいですが、それができない場合は宅急便・郵送などで送付してもいいでしょう。送付するときには、謝罪の気持ちを手紙で添えるようにしましょう。
退職届の提出を求められることもある
退職届は、法律上提出が義務付けられているものではないため、バイトであれば提出しなくても辞められるケースがほとんどですが、企業によっては社内手続き上、退職届が必要な会社もあります。バックレた後に会社からメールや電話で退職届の提出を求める連絡が来た場合は、必要書類を作成し、ひと言謝罪の言葉を添えて提出するようにしましょう。
誠意ある辞め方をしよう
アルバイトだけでなく、どんな仕事でも、無期契約であれば民法上は14日前に退職を申し出れば辞めることができますが、バイト先によっては1カ月前までに伝えるなどのルールがある場合はそれに従う必要があります。まずは就業規則や雇用契約書を確認し、退職したい場合はそのルールに従って伝え、それまでのシフトはこなしましょう。退職意思の申し出、引き継ぎ、退職の諸手続きを踏んで、スムーズに辞めるまでが「アルバイト経験」です。退職先に迷惑をかけないような辞め方を心がけましょう。
バイトの辞め方の詳細はこちらの記事を参考にしてみてください。
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
※公開:2017年4月8日、更新履歴:2022年9月2日、2023年5月10日、2024年7月9日