年収に交通費は含まれる?130万円の壁・178万円の壁と交通費の関係とは【専門家監修】

アルバイトやパートで勤務先から支払われる通勤交通費は、給与所得と同様に、課税対象になったり、税金や社会保険の扶養に影響がでることがあります。月の交通費が課税されない限度額や、税金や社会保険の扶養に影響する年収の壁との関係などを解説します。
- 通勤交通費は原則、所得税・住民税の課税対象にはなりませんが、社会保険の130万円の壁の収入計算には含まれます
- 通勤交通費は、利用する交通機関や距離により非課税枠が設けられています
- 通勤交通費が時給や日給に含まれ給与と区分されていない場合は、課税対象になります。
通勤交通費の扱いは、年収の壁ごとに異なる
交通費が年収に含まれるかは、「年収の壁」によって異なります。税金に関係する「136万円の壁」「178万円の壁」には、非課税限度額以内の通勤交通費を含めません。
社会保険では、いわゆる「106万円の壁」のもととなった月額8万8,000円以上の賃金要件は2026年9月まで適用され、その判定に通勤手当は含まれません。2026年10月以降はこの賃金要件がなくなり、週20時間以上などの要件で加入を判断します。一方、「130万円の壁」の年間収入には、通勤手当を原則として含めます。
なお、ここでいう交通費とは、通勤のために支給される費用を指します。
| 年収の壁と通勤交通費の関係 | |||
|---|---|---|---|
| 分類 | 年収の壁 | 通勤交通費の扱い | 補足 |
| 税金の壁 (所得税・住民税) |
136万円の壁 ※旧「123万円の壁」 |
非課税限度額以内の交通費は含まれない | 扶養控除や配偶者控除の対象となる給与収入の目安 |
| 178万円の壁 ※旧「160万円の壁」 |
非課税限度額以内の交通費は含まれない | 給与収入のみの場合に、本人に所得税がかからない目安 | |
| 社会保険の壁 | 106万円の壁 | 2026年9月までの月額8万8,000円以上という賃金要件には、通勤手当を含めない | 2026年10月に賃金要件は撤廃。以降は週20時間以上などの要件で加入を判断 |
| 130万円の壁 | 原則として交通費は含まれる | 被扶養者認定時点から見込まれる今後1年間の収入で判定。通勤手当や賞与なども原則として含む | |
「136万円の壁」「178万円の壁」には原則、通勤交通費は含まれない
「136万円の壁」は扶養控除や配偶者控除、「178万円の壁」は本人の所得税に関する給与収入の目安です。いずれも、非課税限度額以内の通勤交通費は給与収入に含めません。限度額を超えた分は課税対象となり、扶養控除などの判定にも影響します。非課税限度額は後述します。
「106万円の壁」と通勤交通費の関係は2026年10月を境に変わる
いわゆる「106万円の壁」は、2026年9月まで適用される、短時間労働者が勤務先の社会保険に加入する要件の一つです。所定内賃金が月額8万8,000円以上かを判定する際、通勤手当・残業代・賞与などは含めません。
2026年10月からはこの賃金要件がなくなり、年収約106万円という金額ではなく、週20時間以上などの要件で勤務先の社会保険への加入を判断します。
※社会保険の加入条件は、こちらの記事で詳しく確認できます。
>扶養控除・扶養範囲内に押さえたい年収とは?106万、130万、150万の壁で気をつけること【社労士監修】
「130万円の壁」には通勤交通費は含まれる
「130万円の壁」とは、社会保険の扶養から外れる原則的な年収基準です。年間収入が130万円以上になる見込みがあると、扶養から外れる場合があります。
130万円の壁は、社会保険の扶養に入れるかを年間収入全体で判断する基準のため、税法上は非課税となる通勤手当も原則として収入に含まれます。定期券などの現物支給は金額に換算し、見込まれる賞与なども含めて確認しましょう。
※配偶者を除く19〜22歳は、年間収入150万円未満まで扶養に入れる場合があります。
通勤交通費には非課税枠が設けられている
非課税限度額以内の通勤交通費は、所得税や住民税を計算する際の給与収入に含めません。非課税となる金額は、利用する交通機関や通勤距離によって異なります。
バスや電車など公共交通機関を利用する場合
通勤に電車やバスなどの公共交通機関を利用し、勤務先から交通費を「通勤手当」として支給された場合、月15万円以下であれば非課税となり、超えた金額が課税対象になります。
車やバイクなどを利用する場合
車やバイク、原付通勤の場合は、通勤距離で非課税限度額が決まっており、片道2キロメートル未満は全額課税対象となります。
◾️マイカー・自転車通勤者の距離別非課税限度額(2026年4月1日以後)
| 片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
|---|---|
| 2キロメートル未満 | 全額課税 |
| 2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
| 10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,300円 |
| 15キロメートル以上25キロメートル未満 | 13,500円 |
| 25キロメートル以上35キロメートル未満 | 19,700円 |
| 35キロメートル以上45キロメートル未満 | 25,900円 |
| 45キロメートル以上55キロメートル未満 | 32,300円 |
| 55キロメートル以上65キロメートル未満 | 38,700円 |
| 65キロメートル以上75キロメートル未満 | 45,700円 |
| 75キロメートル以上85キロメートル未満 | 52,700円 |
| 85キロメートル以上95キロメートル未満 | 59,600円 |
| 95キロメートル以上 | 66,400円 |
※一定の条件を満たす駐車場・駐輪場料金は、距離別の非課税限度額に月5,000円を上限として加算できる場合があります。公共交通機関と併用する場合などの非課税限度額は、合計で月15万円です。
>マイカー・自転車通勤者の通勤手当(国税庁)
交通機関別の年収の計算と扶養の関係
年収の壁を意識して働く場合は、非課税限度額を超えた通勤交通費が給与収入や扶養の判定に影響する点に注意が必要です。ここでは、交通手段ごとの計算例を紹介します。
→ 通勤手当は非課税限度額以内のため、税法上の給与収入は135万円です。本人に所得税はかかりません。ほかの要件も満たせば、親などは扶養控除、配偶者は配偶者控除を受けられます。
→ 片道2km未満のマイカー通勤では、通勤手当は全額課税されます。月3,000円の場合は年間3万6,000円が加算され、税法上の給与収入は138万6,000円です。本人に所得税はかかりませんが、親などは原則として扶養控除の対象外となります。ただし、年末時点で19〜22歳なら63万円の特定親族特別控除、配偶者なら所得要件に応じた満額の配偶者特別控除を受けられます。
給与と区分されていない通勤交通費は課税対象になる
通勤交通費が時給や日給に含まれ、給与と区分されていない場合は、その全額が給与として課税対象になります。本人が交通費相当額を独自に分けて確定申告し、非課税通勤手当として扱うことは原則としてできません。給与明細の処理に疑問がある場合は、勤務先の給与担当者に確認しましょう。
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
更新履歴:
2024年12月4日
2025年9月30日
2026年8月31日
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。