学生バイトの103万円の壁とは?超えたらどうなる?自分の税金、親の税金、130万の壁も合わせて解説
学生のアルバイトであっても、年間の給与の合計103万円を超えると税金を負担する場合があります。給与が振り込みでも手渡しでも、それは変わりません。この記事では、税金の仕組みや「103万円の壁」、手渡しで給与をもらうときの注意点などを、税金ビギナーでもわかるように解説します。
103万円を超えると自分と親の税金に影響する
ここでは、アルバイトをする高校生や大学生など、学生にとって、税金が課税されはじめる年収の壁について解説します。
学生にとっての年収103万円の壁とは
学生にとっての103万円の壁には、2つの意味があります。
① 所得税が発生する:年収が103万円を超えると自身の収入に所得税がかかる
② 扶養控除から外れ扶養者の税金が増える:親などの税制上の扶養に入っている場合は扶養を外れ、扶養者の税金負担が増える
税金の対象となる年収は、その年の1月から12月までに支払われたバイト代などの収入総額で判断され、複数のバイトを掛け持ちしている人は全ての収入を合算した額で、手渡しでもらった給与も対象になります。
また、100万円(地域によっては93万円~)を超えた額には翌年に住民税もかかります。
尚、勤労学生控除の対象となる学生は年収130万円まで自身の所得税はかかりません。年間で103万円以上稼いでいて、勤労学生控除を受けたいと考えている人はこちらの記事を参考にしてみてください。
▶勤労学生控除とは?税金、親の扶養、申請方法など103万~130万円のバイト学生向け
<参考:国税庁HP>
No.1175 勤労学生控除
自身は103万を超えた額に所得税がかかる
税金というのはもらった給与の全体にかかるわけではありません。給与収入から、税金の対象にしなくてよい金額(控除と呼ぶ)を引き、残った部分に税金がかかるようになっています。
給与収入(源泉徴収される前の年収)-給与所得控除=給与所得
給与所得-所得控除(基礎控除や勤労学生控除など)=課税所得
課税所得×税率=所得税
給与収入から差し引くことのできる給与所得控除の最低額55万円と、すべての人に適用される基礎控除48万円の合計が103万円のため、103万円以下は所得税がかからないということになります。103万円を超えると、超えた分に対して税金がかかります。例えば、年収が195万円以下なら、税率が5%のため、所得控除と給与所得控除の合計額を超えた分に対して1万円あたり500円程度の所得税が課税されます。
<参考:国税庁HP>
No.1400 給与所得
親は扶養控除がなくなり税金負担が増える
親などの扶養者は、子どもの給与収入が103万円以下なら、扶養控除額に対する住民税と所得税が免除されますが、103万円を超えるとこの控除がなくなります。
扶養控除額は、その年の12月31日時点の年齢によって異なり、16歳以上の場合は「住民税の控除:33万円、所得税の控除:38万円」、19歳~22歳は特定扶養控除と呼ばれ、控除額が増え「住民税の控除:45万円、所得税の控除:63万円」となります。扶養者の税負担は、各控除額にそれぞれの税率をかけた分だけ増えます。扶養者の年収や子ども年齢によって税率は変わりますが、年間5万~20万円の税金が増えることになります。
<参考:国税庁HP>
No.2260 所得税の税率
年収103万円を超えないための方法
うっかり年収103万円を超えないために、どんなことを意識すればいいか、具体的な方法をご紹介します。
103万円を超えたくない意思を伝える
あらかじめバイトの責任者に「親の扶養内で働きたいから103万円以下に抑えたい」と意思を伝えておきましょう。バイトによってはシフトを考慮してもらえる場合があります。自分でも働き過ぎないよう管理することも大切です。
1カ月のバイト代は8万円以下を目安にする
「毎月のシフトを調整していたつもりでも、年末近くになって103万円を超えそうだ」という話を聞いたことはありませんか? 急にシフトを減らそうとすると、バイト先や同僚に迷惑をかけてしまうこともあります。
103万円を12ヶ月で割ると8万5,833円ですが、次に当てはまるバイトがある人は注意が必要です。
・年末の繁忙期に人手不足になるバイト
・ボーナスや報奨金が出るバイト
・能力によって時給が上がるバイト
長期休みや繁忙期など、出勤日が増えて一時的に収入が増えるバイトは、通常月の収入を調節しておくと安心です。
成果報酬なら48万円以内を意識する
アンケートモニター、データ入力、ウーバーなどの宅配といった給与ではなく出来高に応じて報酬を得ている場合は、「報酬」の税金の考え方が変わります。報酬のボーダーラインは年間48万円なので、扶養に入るにはこの48万円以内を意識する必要があります。給料をもらうアルバイトとアンケートモニターやデータ入力などの報酬を掛け持ちしている場合は、「報酬を年48万円以内」かつ「バイト代+報酬の合計を103万円以内」に抑えると所得税がかからず、扶養内でいられることになります。
<参考:国税庁HP>
No.1199 基礎控除
No.1410 給与所得控除
会社が従業員に支払う給与は、全てマイナンバーや帳簿で管理され、自治体に報告しているため、手渡しや掛け持ちでも国は自治体からの情報を通して個人の年収が把握できるようになっています。納めるべき税金を納税せずにいると、判明した時点で、過去に遡って無申告加算税・延滞税・重加算税などの追徴課税が課されます。
130万の壁も合わせて注意しよう
学生アルバイトが注意したい年収には、103万の壁のほかにも、健康保険が親の扶養を外れる「130万の壁」があります。年収130万円以上になると親など扶養者の社会保険の扶養を外れて自身で国民健康保険に入るか、バイト先の社会保険に加入する必要があります。年収130万円の場合、国民健康保険料や社会保険料の負担額の目安は年間15万~20万円前後となり、手取りが大きく減ることになるので、稼ぎすぎには注意しましょう。
■学生にとって注意したい年収の壁
学生自身 | 親など扶養者 | ||
---|---|---|---|
学生のバイト年収 | 所得税 | 健康保険 | 扶養控除 |
103万円以下 | かからない | 扶養に入れる | 受けられる |
103万円~130万円以下 | 103万円を超えた額に課税される ※勤労学生控除を受ければかからない |
扶養に入れる ※扶養に入れる年収は130万円未満 |
対象外 ※親の所得税負担が増える |
130万円超 | かかる ※103万円を超えた額に課税される ※勤労学生控除を受けている場合は130万円を超えた額に課税 |
年収130万円以上で扶養から外れて自身で国民健康保険に加入か、バイト先の社会保険に加入する(条件あり) | 対象外 ※親の所得税負担が増える |
※税金の103万円は毎年1月から12月に支払いを受けた給与の額面で判断する
※社会保険の130万円は向こう1年間の収入見込み額で判断する
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
※初回公開:2019年2月19日、更新:2021年9月9日、2022年10月31日、2023年10月1日、2024年7月23日、2024年11月●日