【街で見かけた「働く人」劇場】歌うレジのお姉さんの話
スーパーやコンビニなどで、お会計をするとき。商品のバーコードを読み取りながら、レジ係の人が「218円が8点」なんて読み上げてくれますよね。これって、見るからに独り暮らしの女子が食料品を大量に購入した場合など「おいおいお前どんだけ食うんやwww」とまわりの客に思われかねない、ズバリ「羞恥プレイ」そのもの。それがお酒だと、しかも平日の昼間だともっと気まずい感じ。ところで先述の「218円」は私の大好きな「某グリーンの発泡酒500ml」のお値段です。
しかし、私がよく行くスーパーにいるレジ係のお姉さんは、その羞恥プレイを「屈辱」ではなく「悦楽」に変えてくれる、スゴ技の持ち主なのです。
なぜかというと、ごくふつうの「値段の読み上げ」が、「歌」に聞こえてしまうほど素晴らしくリズミカル&メロディアスだから!
たとえば、198円のものを買った際の「歌」は「ひゃーくきゅうじゅうはっちっえーーん♪」となります。「えーーん♪」でオクターブがくいっと上がるのが特徴で、値段を読み上げるたびにリズムが織り上げられていきます。もっと読み上げて! もっと「円」を並べて! って思ってしまうのです。また、ときにスタッカート、ときにビブラートを駆使したなかなか奥深い旋律にも、毎回度肝を抜かれます。
そして、ふとレジの金額表示を見る。彼女の「えーーん♪」が気持ちいいほどたくさん出てきてた、ということは、予想以上に大量に買ってしまっていた、ということです。ふつうスーパーで見かけないでっかい金額に「うっわっ!!」と血の気が引くけれど、ここでまたしても彼女が救ってくれる! 「おぉっかいけーいは♪ 9000えーーんになっりまっす♪」と陽気に伝えてくれるので、「まぁ、いっか♪」とポジティブになれるんです。なんて素晴らしい!
お金を使うことを後悔させない、これこそがプロ……と感動しながら、やたら長いレシートと家計簿を見て「やっぱ1回の買い物で9000円はヤバい」と現実に戻る私でした。

1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行なう。
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