【街で見かけた「働く人」劇場】洞察力がすごすぎるスマホ販売員さんの話
たいていの家電量販店には、スマホ売り場のすぐそばにスマホ用のアクセサリーを販売しているスペースがありますよね。
機械類に疎い筆者(私)は、「ははーん、こういうのもあるのか。なるほどね」と、全然分からないのに分かったふりをして「機械類への劣等感」を一時的に払拭するためだけに、よくガジェットエリアをウロウロします。ただ、何も買わずに帰るのは気が引けるので、毎回必ず安いストラップとかを購入しています。
先日も、「機械よりも人間の方が偉いんだから! 人間に使われなかったら機械なんてただのゴミよ! 現に今、持ってくるのを忘れられ部屋にある私のスマホは何の役割も果たさないただのゴミ同然!」と思いながらスマホ売り場辺りをウロウロしていたところ、「なにかお探しですか?」と男性店員さんに声をかけられた筆者。
おもわず「(普段お世話になっている機械さまに悪態ついて)すみません」と声に出してしまった若干不審者っぽい筆者にも、店員さんは温かい笑顔で対応してくれました。
そして、その直後に「アクセサリー類をお求めですか?」と聞いてくれた店員さん。「なんで分かったんだ」と思いながら「はい、えっと、スマホカバーを探していて……」と、ちょうど目の前に様々なスマホカバーが陳列されていたので答えた筆者。すると――
店員さん「これなんかどうですか?」
と、なぜか筆者のストライクゾーンど真ん中な可愛いスマホカバーを持ってきてくださるではありませんか!
えーなんで? なんで分かったの!? もしかしてエスパーなの!!?? と驚くとともに興奮し、おもわず「なんで私の好みが分かったんですか?」と店員さんに聞いたところ――
店員さん「お客さん(筆者のこと)はたぶん、今日の服装からして派手なモノは好まないけれど女性らしいものは好きなんだろうなと。でも、商品を見ている目を見て、男性的なロマンチックさを秘めていると確信し、絶対に気に入ってもらえるだろうと思いコチラの商品をお持ちしました」
――多少よく分からない理屈ですけれど、でも彼は「女性ならみんなこれがイイだろう」などの安易な理由ではなく、個人の雰囲気や特徴(キャラクター)を瞬時に感じとり、最適なモノを選んでくれたわけです。
別のお店の話になりますが、筆者が好感を持ちよく行くようになったアパレルショップの店員さんも、この男性店員さんと同じタイプです。そのアパレルショップの店員さんは、お客さんそれぞれのニーズや、似合う・似合わないなどで、キッパリと「絶対こっち! そっちよりこっちの方が絶対に合います」と、言ってくれるのです。つまり、値段ではなく「本当に似合うかどうか」で自社の商品であってもきちんと優劣をつけ紹介してくれるので、まるで信頼感の塊のよう。
お客さんのことを無視し「これを売りたいから」という理由だけで商品を激推ししてきたり「似合う! 似合うよー!」とやたら言ってくるタイプの店員さんと、「お客さんのニーズに合わないし、そもそも似合っていない」と判断したものを「ダメ」と一刀両断してくれるタイプの店員さん。この二者でしたら、後者の店員さんの方が信頼も安心もできますし「またアドバイスをもらいたい!と思いますよね。
要は、お客さんに「あなたのために商品を選びました」といった接客をするのって、難しいけどけっこう大事だ、ということです。自分勝手な筆者には、到底ムリな所業。心から尊敬しますし、憧れます。
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イイ話(と自分でいうのもアレですけれど)をしたあとに水を差すようなことをいいますが、家電量販店の店員さんが選んでくださった筆者のストライクゾーンど真ん中のスマホカバー、iPhone用の物だったので、Galaxyユーザーの筆者は未だにそのスマホカバーを使用できずにいます。「スマホ家に置いてきたから機種とか分かんないんでこれ下さい!」と言った筆者が悪いんです。そう、機械類に疎い筆者がすべて悪いんです……。

1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。