【街で見かけた「働く人」劇場】栄養士みたいなハンバーガー屋店員さんの話
ジャンクフードと聞いて、一番初めに何を思い浮かべますか? スナック菓子など色々あると思いますが、筆者(私)の中のジャンクフードの代名詞はハンバーガーです。
最近は、六本木や表参道などで超高級かつオシャレなハンバーガーを提供するお店も増えているみたいですけれど、そういうお店は別です。私が「ジャンクフードだ」といっているのは、いわゆる“ファストフード”と呼ばれるハンバーガーのことです。後者を差別しているわけじゃありません。ただ単に、前者のような高級でオシャレなハンバーガーを食べたことがないから、そもそも比べることができないってだけです。
実は筆者、ジャンクフード界の金剛夜叉明王(※)であるファストフードのハンバーガーが大の苦手でして。
※……金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)とは、「何者にも劣ることのない強い信念と力をもって、あらゆる悪、煩悩をことごとく破壊し、呑み尽くす力を持つ」とされる、とにかくなんかスゲー強い仏教の神様のこと。ファストフードのハンバーガー店には「ハンバーガーを食べないのは悪! ハンバーガーを食べないという一種の煩悩など破壊してやるわ!」みたいなイメージが筆者にはあります。それくらい苦手です。
それなのに、付き合いでどうしてもハンバーガーを食べなければならないことになった筆者。
嬉々としてサクサクと注文していく同席者とはガラリと変わって、「どの商品も食べたくないなぁ」みたいな雰囲気を丸出しにしつつ無言でメニューを見ている筆者を見かねたのか、対応してくれる店員さんがベテランっぽい人に変わりました。
そのベテランっぽい店員さんが、すごかったんです。
ベテランっぽい店員さん「お客さま、お悩みですか? でしたら、従来のハンバーガーよりもソースに野菜がたっぷり使われている、こちらの商品はいかがでしょう?
お肉は他の商品と比べると決して多いとは言えない量ですが、だからこそ、こちらの商品はタンパク質、脂質、糖質のバランスが当店のメニューの中では一番いいんです! もし糖質制限をなさっているのであれば、バンズ無しにもできますよ!」
ジャンクなハンバーガーが苦手なのにはいくつか理由があるのですが、「野菜が少ない(ような気がする)」ことと「バンズ(パン)を半ば強制的に食べさせられるシステム(のような気がする)」の二点が挙げられます。
さすが、ベテランっぽい店員さん。筆者のようなメンドクサイお客さんと多く接してきたのでしょう。「野菜が多い」「(糖質制限中のお客さんのために)バンズなしもできる」「栄養バランスがいい」といった、「そのお客さんに合わせた利点」を掴んでいるわけです。
どんな商品かを一生懸命説明しても仕方がない。お客さんにどんなイイことがあるか、をプレゼンする(伝える)ことが、接客や営業には大事なんだなと気づかされた一件でした。
そのベテランっぽい店員さんは、筆者が「とにかくカロリー摂取したい!」と言ったのであれば最適なメニューとカスタマイズを提案してくれたことでしょう。本当に、頭が下がります。
そして今、筆者は「メンドクサイお客ですみません」と、ベテラン店員さんを思い浮かべながら頭を下げています。
1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。