【街で見かけた「働く人」劇場】パントマイムばりのジェスチャーで外国人に案内をする駅員さんの話
冬の観光シーズンを迎えて、東京では外国人の姿を目にすることも多くなってきました。と同時に、道に迷っている彼らも多く見かけます。外国語で道をたずねては答えを得られず困る彼らに対して、「ココは日本なんだから日本語をしゃべってよ」と思ったりもしますが、私たち日本人だって海外旅行先で現地の言葉が分からず途方にくれる場合もあるわけで、お互いさまかも。
しかしまぁ、今の世の中だと、語学が堪能であることは確実に利点だと言えましょう。
ところが先日、外国語ができなくても「ジェスチャー」で外国の人とわたりあう仕事人を見つけたので、ご紹介したいと思います。
東京は新宿駅でのこと。「メッチャ外国人いる……東京ってすごいな」と、もう上京して7年目なのに改めて感激していたところ、近くを歩いていた外国人さんが駅員さんに話しかけました。
「I need to get to Tokyo government office from here but there’re too many exits here and there so I’m completely done for.(ここから東京都庁に行きたいんだけど、出口がいっぱいありすぎてもうどうすればいいのか分からないわ)」
こんな感じで、相談を受けた駅員さんですが、10秒くらい直立不動。英語が分からないのだろうか、と思いきや、なんと! パントマイムばりの完璧なジェスチャーで――
「ココを(下を指さす)まっすぐ行って(前ならえのように両手を前に)最初のつきあたりを(左手で壁、右手をぶつける)右に行くと大きな改札(大きな壁をくぐりぬける動作)があって、そこから地下道をぬけて(左手でトンネル、右手でつきぬける動作)地上に出れば(目の前がひらけるしぐさ)左側にあるのが(左をさしてああ! と発見)東京都庁(ぐーんと縦に伸びるしぐさ)です」
――を表してしまった!! (カッコ内がジェスチャー。もっと細かい動作もありましたが説明し出すと2万文字を超えそうなので端折ります)
「You are so great! I could make out all! Thanks!(あなたスゴイわね!理解できたわありがとう!)」とメッチャ感動している外国人さん。あまりにも完璧なジェスチャー能力に、筆者も感激。
その後も、外国人に話しかけられたらパントマイムばりのジェスチャーで案内をする駅員さん。
この駅員さんの一件で、「外国語を喋ることができなくても大丈夫。言葉が通じなくても、別の方法でコミュニケーションはとれる。大事なのはスキルより“役に立ちたい気持ち”だ」という勇気をもらいました。
で、その数時間後、筆者も外国人に「スミマセン、道ヲ教エテクダサイ」と話しかけられたのですがジェスチャーで道案内を完璧にこなせる自信などないためカタコトの英語で道案内を始めたところ「ア、日本語ワカリマス」と言われ、なんだか猛烈に恥ずかしい思いをしました。

1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。