【街で見かけた「働く人」劇場】太陽がごとく熱い接客で心まで温まるスープがウリのカフェ店員さんの話
冬になると、温かいものが食べたくなりますよね。
筆者(私)は狭い部屋でのひとり暮らし生活なので、暖房をつけてひとり鍋なんかすれば体は温まります。しかし、食べている最中、もしくは食べ終わった後に「今、私は“ひとり”なんだよな。側に誰もいないんだよな」と、自分が孤独であることを、体が温まるからこそ思い知らされて、心は体と反比例するかのように冷たくなります。
つまり冬は、ひとり身にとっては体だけでなく心も寒くさせる季節なわけで、それを誤魔化すために温かい食べ物をいただく部分もあるんです。
ということで、赤の他人だけど周りには人がいて、おひとり様ハードルの低い「スープがウリのカフェ」におもむいた筆者。
カフェでスープがウリとなると、筆者は“オシャレ”で“ロハス”で“オーガニック”みたいな、女子受けするフンワリまろやかな店内および接客をイメージしていました。
しかし、先日お伺いしたお店は、フンワリまろやかじゃなく、ガッツリびんびんしていたのです。いや、お店の雰囲気はフンワリ~なのですけれど、接客がガッツリ~なのです。
注文を済ませ、ひとりでスープをモグモグしていると、ホール担当の店員さん(女性)が「スープ熱くないですか!? 大丈夫ですか!?」とか「量、足りましたか!?」とか「おかわり要りますか!?」とか、ちょいちょい訊いてくる。
「おかわり要りませんか!?」に対し、筆者が「え? おかわりできるんですか?」と尋ねたら「ああ……っ! 有料ですスミマセン!!」と、店員さんは猛烈に謝る。
この店員さんのガッツリびんびん感を的確に表すとしたら、松岡修造さんです。ただ、松岡さんが100℃だとしたら、店員さんは65℃くらいで、スープと同じくちょうどいい熱さ。
筆者が帰る際、その店員さんは店内で「ありがとうございました!」を言いそびれたようで、わざわざ店外まで出て手を振りながら「ありがとうございました! ありがとうございました! 本当にありがとうございました!」と、深々とお辞儀をしたあと手を振り見送ってくださりました。
温かいスープで体が温まったのはもちろん、この店員さんの体育会系な熱い接客で、心も温まりました。筆者みたいな「寒い季節になって心がさらに冷たくなってしまった人」がいることを知っていて、お客さんの雰囲気で接客を変えているのだとしたら本当にすごいです。
今回は、筆者に周りを見るほど心に余裕がなかったため、ほかのお客さんへの接客と同じなのか違うのかが分かりませんでした。近いうちに再訪したいと思います。……が、冷えきった心に熱い接客をされ感極まって相手は同性なのに淡い恋心を抱き悶々とする未来も有り得なくはないので、なんというか、あたたかき春よ来い。

1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。