【街で見かけた「働く人」劇場】超人的読解力のコンビニ店員さんの話
買い物に出かけたはいいものの、「アレが欲しいんだけど、どこにあるのか分かんない! アレ(=商品)の名前もド忘れしちゃった! どうしようどうしようぅうわーー!!」という、脳みそが大混乱になっちゃった経験、ありませんか?
筆者(私)は、よくあります。それが起こった場合、だいたい以下のような悲劇となります。
店員さんをつかまえ「あーいうアレはどこですか?」的な、まったく詳細の分からない説明で売り場を教えてもらおうとするけれど、もちろん店員さんは「え?」といった反応なので「いやあの、なんかスマホにくっつけるやつ……」と、思いつく限り詳細に説明するが、「ちょっと(なに言ってるのか)分かんないです」って言われて泣く泣く店を後にする、という悲劇。(ちなみに、「なんかスマホにくっつけるやつ」とは充電器のことです)
スーパーや家電量販店、雑貨店などで筆者は上記のような悲劇を何度も何度も何度も経験しています。……が、なんと! 唯一その悲劇が起こらないお店があるのです! しかし、どこなのかは教えられません。筆者の家から徒歩圏内にある某コンビニだからです。
「某コンビニのアルバイト教育は店員さんを全員『高級ホテルの社員』並みにするレベル!」とかではなく、そこで働いているひとりの「特殊」な男性店員さんの話なのですが、初めて彼と会ったときの筆者はハンコを押すためにスタンプ台(※)が欲しかったのです。
※これ。
でもスタンプ台の名前なんて知らない! ということで、「あのー、押して使う、スポンジに色ついてるやつって……」と、その店員さんに一言尋ねたところ、「印鑑を押すのに必要なヤツですね! あちらの棚にあります!」と即座にご回答!!
「な、なんで今ので分かったの!? この人すごい! 超能力者じゃないの!?」瞬時に彼の虜(とりこ)になってしまった筆者。
彼がシフトに入っている日にコンビニへ行けば、「なんか固い魚介類の……」「アタリメですね! あちらのおつまみコーナーです!」など、商品を抽象的な言葉で説明しても確実に当ててくれる。しかも、トイレットペーパーが欲しかったのだけど、少し恥ずかしかったので意図的に「クルクルする紙……」と説明したところ「はい!」とだけ言い、なんとわざわざ商品を店員さん自ら持ってきてくださり大きな袋に入れて見えないようにしてくれる、という気の使いよう!
「俺の(コンビニバイトの)辞書に不可能という文字はない」みたいで最高にカッコいい店員さん。彼を目当てに来店する女性客は私だけではなかったはず。そのくらい、客の要望に完璧に応えてくださる(そのうえイケメン)店員さんです。
……が、最近はまったくお姿を拝見できずにおります。「どこかに就職したのかな。だとしたら、おめでとうございます」と心の中でお祝いの言葉を述べながら、失恋したときと同様の心に穴があいたような切なさを感じる自分がいます。
1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。