【街で見かけた「働く人」劇場】女性の扱いが上手いトルコ料理屋のトルコ人店員さんの話
トルコ料理は、中華料理とフランス料理と一緒に「世界三大料理」と括り称されるくらい、美味しい料理が多いとされています。
しかし、われわれ日本人には中華料理やフランス料理に比べるとトルコ料理は、あまり馴染みがないかもしれません。
筆者(私)は、世界各国の“現地の人”が“現地の人向け”にやっているとしか思えないほど“本格的”なエスニック料理を提供するお店がなぜか多い新宿区界隈(とくに高田馬場)をウロチョロしているので、トルコ料理屋さんにもたまに行きます。
……が、食べるのはテイクアウト可能なケバブくらいでして。
要は、トルコ料理に興味はあってもお店に入る勇気もないビビリがゆえ、テイクアウトでケバブを食べて何となく「トルコ食ってやった感」を味わっていたのです。
もちろん、ケバブを食べただけで「やっぱトルコ料理は世界三大料理といわれるだけあるわ♪」とのたまう気はさらさらありません。
外国の方が寿司食べただけで日本食を絶賛してくださっても「嬉しいけど他にも美味しいものあるよ。味噌汁とか」と日本人が思うのと同様に、トルコの人も「美味しいのはケバブだけじゃないよ!」と思っていることでしょう。
その“美味しい”もののひとつが「メゼ」という前菜です。
「いつもケバブ買ってくれてありがとう。よかったら『メゼ』も食べてみない? トルコの伝統食で、すごく美味しいんだよ。……ただ、テイクアウトはできないけど」
よく行くトルコ料理屋さんのトルコ人店員さんに言われ、もともと「メゼ」に興味のあった筆者は意を決し、初めて店内へ。
頼んだのは、トルコのビールと、ヨーグルトで和えたキュウリとニンニクのメゼ。
ヨーグルトに生の細かく切ったキュウリが入っている「青臭そう感」がハンパないところに生ニンニクとか美味しそうな気がしないんだけど……と思いつつ口に入れたところ―――
キュウリのみずみずしさがヨーグルトの酸味を中和し、かつシャキシャキとした食感も楽しめ、ニンニクは香りで深みを演出し、前菜としての立場をわきまえつつも、ひとくち食べたら箸を止めさせないほど絶品で絶品な絶品!
このメゼの、あまりの美味しさ(とお酒)によって上機嫌になった筆者は、トルコ人の店員さんに向かって「トルコすごい!」的なマシンガントークを開始。
しかし、5分くらい一方的にしゃべってから、ある問題に気づいてしまいました。私が「すごい!」と熱く語っていた話題は、トルコじゃなくてチェコの話題だったんです。
「コ」しか合ってないわけで、「いや、別の国の話をされても……」と、店員さんは思っていたはず。なのに、彼は終始ニコニコしながら私のマシンガントークに相槌を入れながら付き合ってくれていたのです!
その後、間違いに気付いた筆者が店員さんに謝ると―――
「大丈夫ですよ。楽しそうに話しているアナタがとても可愛かった」
こんなん言われたらドキドキするだろ普通。
店員さんは、ほかにも「ダイエットしてるの? そんな必要ないよ!」「仕事は大変だけどキミみたいな女の子が来てくれるから頑張れるよ」などの言葉がポンポン出てくるくらい、とにかく女性の扱いが上手い。
「女性の扱いが上手い」は「女性好き」と同等に捉えられることが多く、一般的にあんまり良いイメージはないかもしれません。しかし、こんなふうにお客さんの気分を良くするような接客に応用されるのならアリですよね!
……と思い再訪を誓ったのですが、帰り際に電話番号を渡されたので冷めました。お客さん目線から申し上げます。せめて営業中は「女好き」が分かるような接客は止めてください! 公私混同ダメ、ゼッタイ!
1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。