カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」カフェ・喫茶店バイト編
私は都会に行くと「砂場」というような名前のカフェに大体寄るようにしており、ない場合は「怒涛琉」みたいなカフェに行く。
何故そんなどこにでもあるカフェチェーンに行くのかと思うかもしれないが、これらのカフェを「どこにでもある」と言う神経の方に問題がある。
これらのカフェチェーンは正直地方には「どこにでもない」のだ。
ないことはないが、店舗数が都会に比べ圧倒的に少ないので「俺の近くのショッピングモールには砂場が入っている」と言うだけでマウントが取れてしまうのである。
ちなみに、それらのカフェでパソコンを開いて仕事をする、という文化も我が村には未入荷である。
何せ人口が少ないため、そんなことをしたらコーヒー一杯で3時間粘る客としてすぐに身元が割れてしまい、親族含めて地元にいづらくなってしまう。
さらにやっている仕事が「漫画」とあれば、もう「おしまい」と言っても過言ではない。
よって、東京などに行くとついそれらのカフェに入り、コーヒーと言うよりもはや「かき氷」みたいな商品をすすりつつ、おもむろにノーパソ(ウインドウズ)を開き「と、都会や…」と感じ入るのが定番になってしまっているのだ。
今回紹介するのは、そんな人間の悲喜こもごもが交差する「カフェ・喫茶店」でのアルバイトだ。
「カフェ・喫茶店」と言っても範囲はかなり広い。まず個人経営の店とチェーン店があるし、チェーン店に入るとしても「今日はこのマックブックが映える店にしてえ」という時もあれば「座れて色のついた豆汁を飲めれば何でも良い」という時で選択肢が変わってくるだろう。
店によって雰囲気や仕事の内容が変わってくるため、バイトをするなら自分にあった、カフェや喫茶店を選ぶことが重要である。
まず、カフェ・喫茶店の形態を大きく分けると「カウンターで注文を受ける店」と「席に案内してから注文を受ける店」がある。
前者はチェーン店に多く、カウンターで注文、会計、商品受け渡しまで行い、商品を受け取ったお客さんは自分で好きな席に座ると言う形式だ。
お客として行くと、商品を受け取ったは良いが座る席がねえ、という現象がたまに起こる一人客泣かせスタイルだが、そういったかき氷を持って棒立ち客が発生しないよう、混み具合を見て「席を取ってからご注文ください」とお声がけするのもスタッフの仕事だ。
お客さんのセルフサービス要素が多く、席に案内する、席まで注文を取りに行く、商品を運ぶ、という業務がないため、比較的接客要素が少ないのがこの手のカフェの特徴である。
ただ、この手のカフェは場所によっては昼時など激混みすることが多いため、注文やレジをやりながら飲み物を作ったり、というマルチタスク力や手際の良さを求められる。
そしてチェーン店でも店によっては「お勧めの商品を勧める」などの接客業務がある店もある。
服屋でも、やたら店員が声をかけて来る店があると思うが、それは店が「お客様には必ずお声がけしましょう」という方針だからである。
店員としても明らかにコミュニケーションを拒絶したハリネズミのようなお客が来たらお互いのためにお声がけはしたくないと思うが、しないと職務怠慢になってしまうのだ。
よって、チェーン店でもどの程度接客に力を入れているか、事前リサーチしておいた方が良い。
店によってはファミレスのようにホールとキッチンが分かれている場合もあるので、カフェで働きたいが接客はあまりしたくない、という場合はキッチン募集の求人を探して見るのも良いかも知れない。
次に、お客さんを席に案内してから注文を取るタイプの喫茶店だが、これもチェーン店から個人経営の小規模店まで色々ある。
席への案内、席に注文を聞きに行き、商品を運ぶ、という仕事があるためカウンタータイプよりは接客要素が多くなる。
これも店によって回転率重視のシステマチックな店もあれば、「席でカップに飲み物を注ぐ」などのこだわりを売りにしている店もあるので、接客レベルの調査はチェーン店よりも重要だ。
中には「地域の憩いの場」として、常連が多く、店員とお客さんが雑談するのが普通になっているような喫茶店も存在する。
コンビニの店員に「いつもありがとうございます、今日もからあげさんですか?」と言われただけでもうそのコンビニには二度と行かない、というタイプにその手の喫茶店のバイトは厳しいと思うので、「客が少なくて楽そう」などという動機では店を選ばない方が良い。
「客が少ない分絡みが濃厚」な可能性もあるのだ。
「客が少なくて絡みも薄い」というのであれば、コミュニケーション能力に難ありとしては好条件であるが、そういう店は「閉店」の恐れもあるので、長期的に働くつもりなら注意が必要である。
私にとっては、チェーン店のカフェ自体がオシャレな存在なので、そこで働くというのもオシャレな感じがしていい。
それとカウンターからたまにのぞき見られる業務用の「生クリーム」を一度使ってみたい。
ちなみに、昔読んだグルメ漫画によると「個人経営の喫茶店は店主がイっちゃっている場合がある」らしい。
不穏な表現になってしまったが、端的に言えば「コーヒーなどへのこだわりがクレイジーなことがある」ということだ。
もし、コーヒーなどが好きで学びが欲しいと言う場合は、そういう「イッている店」を探して応募すると言うのも手である。
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