11月20日はピザの日。ピザ職人になるには? 青山の超人気店・ピッツェリア・ナプレの職人に聞いてみた
11月20日はピザの日。なんでも「ピッツァ・マルゲリータ」の名前の由来となった、マルゲリータ王妃の誕生日にちなんで設立されたそう。今回は日本を代表するピッツェリア・トラットリア・ナプレ 南青山店で、ピザ職人にお仕事事情を直撃取材。手に職をつけて将来の役に立てたい、人に喜んでもらう仕事がしたい、そんな人はぜひ参考にしてください。
ナプレ 南青山店
統括ピッツァイオーロ
本場イタリアの味が楽しめるとあって、日本人はもちろんイタリア人も数多く訪れる名店。瀧山さんは、南青山店でピザ職人を統括するピッツァイオーロ(ピザ職人)
幅広い年代に愛されているピザの職人なら、一生食いっぱぐれない!
――イタリアンを代表するメニューの「ピザ」「ピッツァ」ですが、単なる料理人ではなく、より専門的なピザ職人=ピッツァイオーロになろうと思ったのはなぜですか?
早い話が「食いっぱぐれないな」と思ったから(笑)。ピッツァって子どもからお年寄りまで、日本でも幅広い世代に受け入れられているじゃないですか。そんな食べ物ってあまりないから、一生食べていけるな、と思ったんです。
――確かに、みんな大好きですもんね、ピザ。嫌いな人を見たことがないかも。
それに薪窯で焼いたピッツァって自宅じゃつくれない。パスタだと自宅でもある程度、再現できちゃうけど、薪窯で焼いたピッツァの味はマネできないからお店に来てもらえる、そんな理由からです。
――じゃあ、はじめからピザ職人になろうと思って、働きはじめたのですか?
いえ、もともとは神戸のイタリア料理店でオープニングスタッフとして働いていたんです。そこで急きょピッツァ担当者がいなくなってしまって(笑)、自分がピッツァを任されているようになったんです。
――めちゃくちゃピンチじゃないですか、それで担当に?
その店では生地を買って焼いてたんですけど、自分でもおもしろいとアレコレ勉強してのめり込むようになって、ピッツェリアに転職。そこで2年半ほど働いてから、ナポリに行きました。
――ピザの本場・イタリアのナポリですね!
そもそも、日本で食べられているピッツァとイタリアのものって、まったく別物なんですよ。ナポリだとピッツァの価格が3〜5ユーロ、安いところだと2.5ユーロで売られているんです。それこそ屋台で買えるお手軽フードというか。行く前から知識として知っていたんですが、実際に体験すると大違いでした。
――イタリアで思い出に残っていることはありますか?
わからないと思ってイタリア語で悪口を言われたり(笑)、落ち込むことも多かったですが、ていねいに教えてもらったりするなど今振り返ると、楽しいことばかりがよみがえります。このイタリア1年の滞在経験があって、ピッツァイオーロとして一人前になった感じがします。
――ピザの焼き方などで勉強になったな、ということはありますか?
生地の仕込みや伸ばす、焼く、釜の適温を維持するなどの技術的なことは同じでした。でも、現地で暮らして経験を積み、空気や雰囲気を知ることができたのが大きいですね。
1日に焼くのは150〜160枚! それでも「もっと焼きたい」と思うほど、奥の深い仕事
――ピザ職人としてのやりがい、仕事の面白さをおしえてください。
季節や店舗によっても異なりますが、今はおよそ1日に150〜160枚を焼いています。それでも「もっと焼きたいな」と思うほど、おもしろい仕事です。はたから見たら毎日同じ作業をしているように見えると思いますが、納得行くように仕上げるには、日々、観察して考えなくてはいけない。シンプルですがとても奥が深いです。
――ピザって、材料も調理法もとってもシンプルですよね?
ピッツァの材料は水、粉、塩、酵母のみ。だからこそ奥深い。しかも生地を仕込んで24時間寝かせるので、結果が出るのは翌日。だから失敗しても、リカバリーにまた時間がかかる。その試行錯誤が楽しいのかもしれません。
――瀧山さんの食事は毎食、ピザなのでしょうか? 食べ飽きることはないんですか?
焼いたピッツァは、毎日必ず試食していますが、ホールまるごと食べることはないし、なので飽きることもないです(笑)試食では仕上がりを確かめていて「いいできだな」と思う日もあれば「アレ?」ということもあります。
――お客さまにも喜んでもらえる、直接、声が聞けるお仕事ですよね?
そうですね、お客さまの反応もダイレクトに聞けるので、「今日は美味しかったよ」「少し変えた?」などの声は参考にしていますね。独りよがりになりたくないし、喜んでもらえるのもこの仕事のおもしろさです。
仕事がきついのはなんといっても夏! 汗だくになってピザを焼く
――かっこよく見えるピザづくりの仕事ですが、きついなあ、見た目よりも大変だよ、などのギャップはありますか?
きついのは夏! ピッツァを焼く薪窯の内部はおよそ450度で、夏は窯の前がすごく暑い。逆に冬は暖かくていいですが。ただ、冬は生地の発酵に25度〜30度前後が必要になるので、「生地様」には専用のお部屋で温まってもらっています(笑)
――ピッツァ職人って、世界中で働く場所がありそうですよね?
そうですね、僕の知り合いでは、オーストラリアやシンガポールでピッツァを焼いている職人も。世界中で愛されているピッツァだから、美味しいピッツァが焼ける職人って、世界のあちこちで需要がある。ピッツァを焼く道具といっても、パーラー(ピッツァ生地を窯に入れる棒)で、あとは自分の手と経験が武器です。
――ピザ職人って、いろんな働き方ができるんですね。瀧山さんの夢を教えてください。
キャリアを考えるなら、飲食店で働いてもいいし、自分のように飲食店のなかで複数、店舗を見る立場になってもいい。もちろん、独立して店舗を構えるという夢もあると思います。手に職があって夢が持てる、すばらしい仕事だなと思います。自分の夢ですか…、まずはもうちょっとピッツァザが焼きたいかな(笑)
まとめ
瀧山さんの自慢は、マルゲリータ(税込2000円)。生地をさっと伸ばしてあっという間にかたちにしていく手さばきは、見ていてほれぼれするほど。やっぱりひとつの道を極めるのってかっこいいですよね。ピザ職人だけでなく、職人の仕事に興味ももったのなら、まずはアルバイトからはじめてみるのはいかがでしょうか。将来につながる「素敵な出会い」があるかもしれません。
取材・文:嘉屋恭子 撮影:西岡さちこ
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。