パート・アルバイトが失業保険をもらうには?雇用保険の加入条件とメリット
雇用保険は国の社会保険制度で、事業所で雇用される人や失業した人の生活を保障するものです。条件を満たせば雇用形態に関わらず被保険者となり、パートやアルバイトでも失業した際に給付が受けられる場合があります。この記事では、雇用保険の加入条件やメリット、失業保険受給の条件、受給までの流れなどについて紹介します。
失業保険とは
失業保険とは、失業中の生活維持のために国から給付される手当を一般的に指し、正しくは「雇用保険の加入者」が失業期間中に受給できる「雇用保険の失業等給付の基本手当(以下「失業給付」)」と言います。
雇用保険の加入期間や退職理由などの条件を満たせば、パートやアルバイト、正社員などの雇用形態に関わらず失業給付を受給することができます。
雇用保険とは
雇用保険とは、失業して仕事を探している人、育児や介護、本人の病気などで働くことが難しい人、再就職先での収入が大きく下がった人、スキルアップを目指している人などに対し、保険料を給付することで、生活や雇用の安定を目的にした国の社会保険制度です。保険料は、雇用主と労働者の双方が負担します。保険料は給料から天引きして払います。
雇用保険の加入メリット
雇用保険は、自己負担分の保険料の割に受けられる保障が厚いのがメリットです。例えば、週20時間勤務で月8万円程度の収入があるパートの保険料はおおよそ月480円(一般事業の場合)です。失業等給付は大きく分けて4種類あり、失業期間中に受け取れる「求職者給付」のほか、失業給付受給中の再就職を促進する「就職促進給付」、資格取得や能力開発を支援する「教育訓練給付」、育児や介護休業の際に支給される「雇用継続給付」があり、条件を満たせばそれぞれ給付が受けられます。
雇用保険の加入条件
雇用保険に加入する(被保険者になる)条件は、「週20時間以上の所定労働時間があり、雇用期間に定めのない人や31日以上の雇用期間が見込める者」と定められています。勤務先との契約期間が、30日以内の短期の人は対象になりません。対象者の雇用保険制度への加入は、事業所(≒勤務先)の義務として法律で定められており、事業主は、雇用形態に関わらず、要件を満たす従業員は、雇用保険に必ず加入させる必要があります。
▼雇用保険の加入条件の詳細
雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか(厚生労働省)
パートアルバイトで週のシフトが変わる人は?
パートやアルバイト(学生除く)のうち、シフト制で毎週の労働時間が20時間を超えたり超えなかったりする場合も、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則などに、通常に労働する週の所定労働時間が週20時間以上とあれば、雇用保険の加入対象になります。シフトが週ごとに常に変動する人は、月の総労働時間が87時間以上がおおよその加入の目安です。
労働法では、雇用の際に労働条件の明示が義務付けられています。働き始める前に提示がない場合は、提示を求めて労働条件の確認をしておきましょう。すでに働いている人は、労働時間の実績を記録し、雇用主に書面作成を求めておくといいでしょう。
▼労働時間が変動する場合の考え方
第4章 被保険者について/3-1:1週間の所定労働時間が20時間未満である者(厚生労働省)
パート・アルバイトの失業給付の受給条件
自己都合による退職、解雇や契約満了、倒産など会社都合で仕事を失った場合、働く意思があり雇用保険を一定期間加入していればパート・アルバイトも失業給付を受けることができます。
①ハローワークで求職の申込みを行い、働こうとする積極的な意思があり、いつでも働ける能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
②離職の日以前2年間に、被保険者期間(※)が通算して12か月以上あること。
ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。
(※)被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月と計算します。
失業給付を受給するには、働く意思があるにも関わらず仕事が見つからないという「離職」している状態である必要があります。給付を受けるには、ハローワークへ定期的に通い、求人情報を確認したり面接に行く「求職活動」をすることが求められます。働ける健康状態であっても家庭に入るつもりなど働く意思がない場合は基本手当の受給はできません。
次に、離職した日から遡った2年の間に、雇用保険の被保険者であった期間が通算12か月以上あることです(※特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上)。通算なので、連続12ヶ月でなくてもよく、飛び飛びでも合計12カ月以上あれば問題ありません。
原則、失業給付を受けるには、別の仕事をしながら失業給付をもらうことはできませんが、一定の条件内であればパートやアルバイトをすることは認められています。
失業給付受給の手続きと流れ
失業給付を受給するためには手続きが必要となり、基本的な流れとなります。
ハローワークで求職の申し込みをする
離職したらハローワークに行き、仕事を探していることを示す求職の申し込みをします。ハローワークで、受給資格の確認、1日あたりの基本手当の額、受給開始可能日、通算で最大何日分もらえるか所定給付日数の決定が行われます。
求職の申し込みを行う際は下記が必要になります。
■求職の申し込みに必要なもの
・「雇用保険被保険者離職票1」「雇用保険被保険者離職票2」…勤めていた会社から交付されます。
・「個人番号確認書類」…マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、個人番号が記載されている住民票のうち、いずれか1種類を用意します。
・「身元(実在)確認書類」…運転免許証、マイナンバーカード、官公署発行の身分証明書、写真付きの資格証明書などのうち、いずれか1種類。この書類が揃わない場合は、公的医療保険の被保険者証、住民票記載事項証明書、児童扶養手当証書など、種類が異なるものを2種類。なお、コピーでの提出は認められていません。
・「証明写真」…正面向き上半身の最近の写真を2枚。サイズは縦3.0cm×横2.5cmです。
・「本人名義の預金通帳あるいはキャッシュカード」…失業給付の振り込み先です。取り扱いのできない金融機関もあるので、不安な場合は事前に問い合わせておきましょう。
待期期間(7日間)
求職の申し込み後、離職理由に関わらず、すべての人に7日間の待期期間があります。手続きをして受給資格が決定した日から通算して7日間は、失業給付を受給できません。
給付制限期間(自己都合などの人は2か月)
自己都合退職などの一般受給資格者については、7日間の待期期間の後、さらに2カ月間の給付制限期間があります(※)。この期間も失業給付を受給することはできません。会社都合による解雇や倒産、契約満了などの特定受給資格者や、その他国で認められた特定理由離職者の場合は給付制限期間がなく、7日間の待期期間の後、すぐに失業給付を受給することができます。
※5年間のうち2回までは給付制限期間が2カ月、3回目以降は給付制限期間が3カ月になります。
雇用保険受給説明会に参加する
求職の申し込みをしたら、指定された日の雇用保険受給説明会に参加する必要があります。雇用保険受給の注意点の説明を受け、失業認定日が指示されます。
失業認定の1週間後に基本手当が振り込まれる
認定が終了すると通常5営業日後に指定した銀行口座に基本手当が振り込まれます。
4週間毎にハローワークで求職活動の報告を行う
その後は、4週間ごとに指定された失業認定日に出頭して求職活動の報告を行います。面接先や面接日時、ハローワークでの求人検索などを記載した報告書類を提出し、失業認定が認められると、約1週間後に基本手当が振り込まれます。
まとめ
パートやアルバイトも一定の要件を満たせば雇用保険の被保険者になり、失業給付などを受けとることができます。自身が加入しているかどうかは勤務先に確認するほかに、勤務先事業所の所在地又は照会者の住居所を管轄するハローワークに確認することもできます。詳しくは下記ページで確認してみてください。
厚生労働省:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか 「その4」参照
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
https://www.pright-si.com/
※初回公開:2014年3月24日、更新履歴:2021年4月1日、2021年5月13日、2022年9月16日、2023年2月9日、2023年6月1日