再就職手当をパートやバイトでもらうには? 受給条件、受給額、いつもらえるかなど解説
雇用保険に加入していて、一定の条件を満たすと受け取ることができる「再就職手当」は、受給条件が該当すれば、パートやアルバイトで働いていた人ももらえます。この記事では、再就職手当を受給するための条件や申請方法と、よくある疑問について解説します。
再就職手当とは
再就職手当とは、雇用保険の給付の1つで、仕事を辞めた後に再就職先が決まると支給されるものです。
雇用保険の給付には、離職後に支給される失業給付(通称)と呼ばれる基本手当(以降、失業手当)がありますが、失業手当の給付期間が3分の1以上残っている間に次の就職先が決まると、失業手当の代わりに再就職手当がもらえます。
再就職手当の受給条件とは
再就職手当の受給者は、離職前も再就職後も雇用保険の被保険者であることが前提となります。その上で、雇用期間の長さなどの条件に該当する必要があります。なお、雇用形態に関わらず、パート、アルバイト、派遣社員など非正規雇用も対象になります。
失業手当の受給に必要な認定を受けていること
雇用保険の被保険者期間が、原則離職前2年間で12か月以上(会社都合など特定受給資格者は離職前1年間に6か月以上)で、積極的に就職する意思があるが完全に失業している状態にある人が対象で、ハローワークで手続きをする必要があります。
失業手当の支給期間が3分の1以上残っていること
失業手当の支給期間(所定給付日数)が3分の1以上残っていることが必要です。例えば、所定給付期間が90日の人は、給付開始後60日以内に再就職した人が対象になります。
失業手当の待機期間(7日間)が過ぎた後に再就職すること
失業手当の受給資格の決定日以降の待機期間(7日間)中の再就職は、失業状態にあるかを確認する期間で、手当の対象になりません。
会社都合退職など失業手当の給付開始までの制限(給付制限)が特別に無い人は、待機期間が終わった後の再就職が対象となります。
失業手当の給付制限がある人は、再就職経路の条件を満たすこと
自己都合退職などにより、失業手当の給付制限がある人は、待機期間満了後1か月以内の再就職は、ハローワークか職業紹介事業者の紹介である必要があります。2か月目以降は、就職経路による制限はありません。
再就職先の雇用期間が1年を超える見込みがあること
労働契約書などに記載される雇用期間が1年を超えているかが重要です。再就職先の雇用条件が、1年以下の期間の定めのある雇用の場合であっても、その雇用契約が1年を超えて更新されることが確実であると認められる場合には問題ありませんが、雇用期間を更新できない場合や、契約更新に一定の条件が設けられていて継続した就労が不確実である場合は、再就職手当受給の対象外となります。
再就職先でも雇用保険の加入対象となること
雇用期間のみでなく、所定労働時間も一定以上働くことが前提となります。こちらも労働契約書で確認することが大切です。
再就職先が離職前の会社と密接な関係にないこと
例えば、離職前の会社と同資本の会社、離職前の会社からの紹介など、何らか近い関係にある事業者への再就職は対象にはなりません。
再就職前3年以内に、再就職手当や常用就職手当の支給を受けていないこと
失業手当には、3年という制限はありませんが、再就職手当には3年以内の再受給はできない制限があります。
再就職手当の受給額と計算方法
再就職手当の受給額は、失業手当の支給期間(所定給付日数)の残日数によって変わります。
1/3以上2/3未満は、失業手当の日額60%に残日数を掛けた額、2/3以上あれば70%に残日数を掛けた額が支給されます。
<例>
月8.5万円(年102万円)/パート期間3年/自己都合退職
⇒給付制限:2か月
⇒所定給付日数:90日
⇒失業手当日額:2,266円
■失業手当の給付制限期間中に再就職
失業手当の支給開始前のため残日数90日(2/3以上)
再就職手当:
2,266円×0.7×90日=142,758円
※失業手当は支給前のため0円
■失業手当(35日分)を受け取ったケース
残日数(90-35=55日→1/3以上2/3未満)
再就職手当:
2,266円×0.6×55日=74,778円
失業手当:
2,266円×35日=79,310円
再就職手当+失業手当=154,088円
再就職手当の申請の流れ・もらえる時期
再就職手当は、以下のような流れでの受給となります。
失業手当の受給申請と就職活動
失業手当の受給申請を行い(詳しい解説はこちら)、「雇用保険説明会」に参加後、7日間の待機期間を過ごし初回認定日を迎えた後に就職活動を行います。この待機期間に就職活動をすることは可能ですが、もしこの期間に就職が決まると、失業手当や再就職手当は受給できません。
再就職先の決定
再就職先が決まったら、ハローワークへ報告し、再就職先の会社に「採用証明書」を記入してもらいます。採用証明書は、失業保険の受給申請時にもらう「受給資格者のしおり」と一緒にもらえることが多いです。
就職日前日にハローワークで失業認定
就職日前日にハローワークへ行き、最後の失業認定をもらいます。採用証明書、失業認定申告書、雇用保険受給資格者証などを提出します。
ここで再就職手当を受給するための「再就職手当支給申請書」「再就職手当支給申請に係る調査書」をもらいます。
再就職手当支給申請書を提出する
最後の失業認定でもらった、「再就職手当支給申請書」「再就職手当支給申請に係る調査書」を記入してハローワークへ提出します。事業主欄を会社に書いてもらい、申請者欄は自身で記入ます。郵送でもできます。
入社後1か月程度で指定口座へ振り込まれる
入社後約1か月ほどで、会社に勤務状況の調査が入ります。勤務継続の確認ができれば、そこから1週間~10日程度で指定の口座へ再就職手当が振り込まれます。この調査前に退職した場合は受給することができません。
その他よくあるQ&A
そのほかにも、再就職手当の受給に関する疑問にお答えします。
再就職手当受給後すぐに仕事を辞めたら返還必要?
再就職手当を受け取った後、すぐに退職した場合も、再就職手当を返還する必要はありません。
再就職先の退職日の翌日が、受給期間満了前で失業手当の支給日数が残っている場合は、再就職手当でもらった日数を引いた残りの日数分を失業手当として受給できます。再就職手当の申請中に退職した場合も同様です。
なお、残りの失業手当を受給するには、再就職先の退職を証明する離職票などの書類が必要ですが、提出は後日でもよいとされています。失業手当の再開は、再求職の申し込みをした日からとなるので、なるべく早くハローワークへ申し込みを行った方がよいです。
再就職手当の申請を忘れてしまった場合はどうなる?
再就職手当の申請期限は勤務開始の翌日から1か月以内が原則ですが、申請期限を過ぎた場合でも、時効が完成するまでの期間(勤務開始の翌日から2年以内)は申請が可能です。申請を忘れていた場合は、速やかにハローワークに申請するようにしましょう。
再就職先で試用期間がある場合はどうなる?
試用期間中であっても、条件を満たせば事業主は労働者を雇用保険に加入させる義務があります。再就職先で試用期間のありなしにかかわらず、1年を超える雇用が見込まれ、雇用保険の被保険者となる労働条件であれば、再就職手当を受給することができます。
再就職先での労働条件について、再度確認してみるといいでしょう。
監修:冨塚祥子(トミヅカ社会保険労務士事務所)