【街で見かけた「働く人」劇場】失礼な話題でも見事に切り返す美容師さんの話
毛量がアレな男性に「頭髪の話題」、妙齢の女性に「結婚の話題」など、世の中には様々な「触れちゃいけない話題」があります。
筆者(私)はアラサーなので、結婚の話はもちろん、見た目年齢の話にも触れられたくありません。それなのに先日、「あなた(=筆者)の、その何ヵ月も切っていないボサボサな髪、更に老けて見えるよ元から老け顔なのに」と友人に言われ頭にきたので、半年ぶりに美容室に行きました。
担当してくれたのは女性の美容師さん。筆者は先ほど、“髪を切ってくれるお店”を「美容室」と表記しましたし、お店でも最初の相談のときに「美容室にきたのは半年ぶりで」と言ったのですが、美容師さんは「なるほど! うちのサロンでは~」と、美容室(美容院?)をサロンと表現。
もうこの時点で「サロン!? オシャレな語感! 私は場違い!!」と卑屈モードに突入。
もともと人と話すのが苦手なのに、卑屈モードに入ってしまったがゆえ、色々と話かけてくれる美容師さんにも「はい」「いいえ」「そうなんですかね」しか言葉が出ず……。
「もっと自分から話を膨らませないとツラい。どうしよう」と悩んでいたところ、ふと鏡を見ると美容師さんの薬指に銀色に光るリングが。
ちょうど一人暮らしかどうかの話題になったので、「しめた!」と思い、「私は一人暮らしです! 美容師さんは結婚してらっしゃるんですよね!」と言った筆者。
「えっ、してませんよ」と美容師さん。
“触れちゃいけない話題”に触れてしまい、固まる筆者。……すると、すかさず「あ! これですね!」とハサミを見せてくれる美容師さん。
「これ、美容師あるあるなんですけど、右手にハサミを持っていると鏡に映った場合、お客さんからは左手に銀色の指輪をしているように見えるんですよ! だから、独身だけど既婚者だと思われちゃってモテないんです。どうしたらいいでしょう?」と、筆者の失礼な筆問にも、彼女は見事な切り返し!
ほかにも、調子に乗った筆者が「えー、でも美容師さんは美人ですし、彼氏はいるんじゃないですか?」と、また余計なこと言ったら「いませんよ! あ、でも仕事が彼氏ですかね! そういう意味では彼氏いますね!」と、またもや見事な切り返し!
筆者だったら即座に不機嫌になるであろう「触れちゃいけない話題」にも笑顔で付き合ってくれた美容師さん。
お客さんと話をする時間が長いがゆえ、会話スキルを高くしないといけないのでしょう。それはきっと、日々の努力の成果であり、プロ根性が成し得たもの。美容師さん、めっちゃカッコよかったです。
筆者もいちおう「フリーライター」という、人と接する機会が(意外と)多い仕事をしているので、見習わないといけないなぁと心の底から思わざるを得ない一件でした。
……ところで、「既婚者に間違われる」は、本当に美容師あるあるなんでしょうか? 全国の美容師さん、もしよろしければ教えてください。

1988年生まれ。フリーライター。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。